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宰相の都市伝説

前話の最後を少し削ってこちらに入れてあります。

今回は短かい話です。

そのまま追い立てられるように部屋に案内されて、説明も無く全員が集まった夕食会を終えた後、私達はお茶を頂きながらモエに避難めいた目を送っている。


「人が悪いと思いますの。」


「それに関しては同意する。」


「僕としては、国内の貴族が知らないことを知ってしまっていいのか、気になるけどね。」


「ほーらー、セルゲイ殿下はわかって下さってますわ。」


「いや僕も、人を無駄に驚かすのはどうかと思うよ。」


「うぅ、味方がいない・・・」


そう言ってモエはうなだれた。


話は遡ると夕食どきの話である。夕食の場に案内されると一昨日公爵邸で見た顔がそこで私達を待っていたのだ。


「サンリへようこそ、長旅で大変でしたでしょう。実はモエが友人を領地に招待したのは初めてでして、お会い出来るのを楽しみにしておりました。」


まるで初めて会ったかのように話かけてくる、公爵が居たのである。型通りの挨拶をを交わした後、私達はお互い目配せし合いながら誰がこの違和感を指摘するのか牽制しあっていた。


「それにしても、モエさんって兄弟がいらっしゃったのね。向こうではお会いしたことがなかったから。」


モエの兄弟は大変多く、弟が2人の妹が3人いて、さらにカナデのお腹の中にも居てもうすぐ産まれるそうである。


困惑の中心はカナデの存在だった。貴族の中には領地にも妻がいると聞いているが、公爵は愛妻家だと聞いていたので、向こうであった公爵夫人とはあきらかに違う彼女とその彼女を愛おしいいように労わっている公爵の姿にアナスタシアは違和感とともに裏切られたような気分を感じていた。


そんな中、口火をきったのはユートであった。


「失礼を承知で伺いますが、公爵とは何度もお話させて頂いているが、まるで初対面のように話されるのはなぜでしょう。」


その言葉をきいた公爵はモエの方を見て、驚いた顔をした。


「モエ、話してなかったのか。まったくノブシゲにそういうところが似てきて・・・皆様、本当に申し訳ない。私は、宰相の任を賜っている公爵の双子の兄ノブタカと申します。殿下への非礼なんと申し上げればよいか。」


「いや、謝罪によい。ユート殿が知らないと言うことは公にしていないのだろう。モエ殿もその面をおもんばかって話さなかったのだと理解している。」


「寛大なお心に感謝致します。モエ、後ほどすべて話して差しあげなさい。」


そう言ってこの話は終わり、その後の夕食会はモエと兄弟の話で笑いの絶えない楽しいものだった。


で、冒頭の話に戻るのである。


「だってね、ジハネ国の都市伝説を体感してもらおうと思ったのよ。種明かししたら面白くてないでしょ。」


「都市伝説?ですか?」


「そうそう、ユート様もご存知でしょう?」


「あぁ、知っている。しかし、私はそのような話は眉唾物だと思っている。実際、今この目で真実を知ったわけだしな。」


「で、どのような都市伝説なのか僕は知りたいな。」


「宰相に瞬間移動できる能力があるとか、影武者がいてどれが本当の宰相か分からないとかだった気がするが、神出鬼没であることは確かだしな。まさか双子とは思わなかったが。」


「そうなのよね。義父は突然いるのよ。びっくりするでしょ。父はここからはめったなことでは出ないわよ。それに、よく見ると性格も違うしわかると思ったのよ。」


「そうですわね。一昨日は出発するのも大変でしたものね。まぁ、我が家でも似たような感じですけど。」


「そうなのよね、義父の愛が重いのよ。」


モエがサンリへ向かう馬車に乗り込むまで、宰相のけがに気を付けるようにやユートへの牽制やありとあらゆる旅行への注意を延々と話し続けていたのだ。その姿をみているからこそ、ノブタカの落ち着いた姿に違和感を覚えたわけなのだが。


「私は、叔父の養女になってるの。お母様は体が弱くて子供が出来ないから元々誰かが養子に入る予定だったんだけど、ユージンの婚約者候補としても都合がいいからって私に白羽の矢がたったのよね。」


「そんな事が・・・お二人の溺愛ぶりは凄いですものね、気付きませんでしたわ。」


モエは公爵の奇行を思い出したのか、顔を真っ赤にしている。お茶をひと口飲んで気を取り直し続きを話し始めた。


「こちらの父の方が第1子だけど、農業が好きで領地から出たくないってことで領地の管理を引き受けいるんですの。あちらの父は公爵として販路拡大兼公爵兼宰相をするという約割分担しているのよ。もちろん国王もご存知よ、というかタケダ公爵の伝統らしいわよ。父達が双子なせいで都市伝説なんてなってるみだいだけど。」


「国王もご存知とは知らなかった。まだ精進が必要ということだな。」


「はぁ、マエダ家って国王至上主義すぎない?」


「褒め言葉だと受け取ろう。マエダ家は国が出来るまえから侍従だからな。」


ユートの言葉にモエはやや顔を引きつらせながら、この話はひと段落ついたのだった。


「で、明日は天気が良ければ領地を案内しようかと思うのよ。ここでしか出来ないこともあるでしょ。果物の収穫とか楽しいわよ。」


「初めての体験ですわ、面白そう!」


「それに、数日して落ち着いたら別邸に行きましょう。そこには温泉があるのよ。」


「温泉ですか。話には聞いたことありますわ、薬効の高い湯が地より湧き出ているとか。」


「えぇ、それにサンリの湯は美肌の湯ですのよ。」


「お嬢様、早々と参りましょう。」


「あらターニャ、戻ってきたのね。」


「失礼致しました。そろそろお休みになられるほうが良いかと思いましてお声がけを。」


「ターニャさんも美肌の湯に興味があるんですのね。」


「お嬢様には更に美しくなっていただこうと思いまして。」


「ここにも主人至上主義が居たわね。」


「「主人の為に動くのはメイド(侍従)の喜び(だ)ですので。」」


ターニャとユートの言葉がみごとに重なって、ターニャとユートはなぜかお互い良いこと言ったというようにうなづきあっていた。


pcのOSが新しくなったら色々不具合が出てきて遅くなりました・・・。

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