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ケモノビト  作者: 夜舞崎 結季
5/5

case4 食う側、食われる側

今日は2月22日で猫の日!という事でこんな話を書いてみました。

「今年も来ましたね~2月22日」

 とある木造アパート一階に住むHT研究員ナンバー062の砂田は時計の短針と長針が12で重なり、更に秒針が12を通り過ぎたのを確認する。

「今日は僕にとっては最高の日だ。今年は誰が餌食となるのかな~楽しみ」

 不気味な笑いをしながら砂田は電気を消す。





「ここだ!」

 夜が明けて午後に差し掛かった時、カップルの男があるビルを指す。

「かわいい小動物達と触れ合いながら食事が楽しめるお店」

 自宅の郵便受けに入っていた一枚のチラシ。普段捨てるのだが動物好きな彼、武川 大介はそのチラシ手が止まる。

「今日は2(にゃー)22(にゃーにゃー)日で猫の日!という事で本日このチラシを持って来店されたお客様限定通常お一人様一時間1000円のところ、本日お一人様一時間500円。更にカップルでお越し頂いたお客様は一時間無料!」

 動物が好きな大介にとって、これはいいと早速彼女に電話した。




 彼女も動物が大好きという事で話を戻す。中に入り、店がある地下へ続く階段を下りていき、扉を開けると廊下の両端に扉があり、動物達の鳴き声やカップル達の声が薄々聞こえる。

「いらっしゃいませ」

「あの~、これを見て」

 大介はチラシを見せる。

「はい、本日一時間無料でございます。更にお食事一品も無料となります」

「食事も一品無料なんですか!?」

「はい」

「丁度いいじゃん。あたしまだご飯食べてないし」

「そうだな」

「ではこちらの中からお好きな動物をお選び下さい」

 メニューボードを見せられると色んな動物の名前が載っていた。

「これでいいんじゃない?」

 彼女が指したのは猫だった。猫ならいっかと納得した大介は、猫でと言った。

「はい。それでは24と書かれている部屋へとお入りください」

 そう言われ奥へと進み、24と書かれたドアを開ける。中は絨毯で敷かれた6帖程の長方形部屋で真ん中に机と二つの椅子がある。




 数分後、檻の中に入っている二匹の猫を店員が運んできた。

「うわー、かわいい!」

 店員がドアを閉めた直後、彼女は檻の中に入っている猫を見て言った。鍵を解除し、開けると二匹の猫は飛び出した。

「子供か」

 小さくてかわいい黒猫と灰色と黒の縞模様の猫。二匹は甘えん坊なのかすぐ座っている二人の膝に体をくっ付ける。

「かわいいじゃないこの子達」

「そうだな」




 暫く猫達とじゃれ合っていると次第にお腹が空いてきた。

「ねぇ何か食べない?」

「そうだな。あそこにメニューボードがあるから見てみるわ」

 大介は立ち上がると、貼ってあるメニューボードを見る。

「何がいい?カレーとかスパゲッティとかあるけど」

「カレーで!」

「んじゃあ俺もそうするか」

 隣にある受話器を取り出し、カレー二つと注文した。





 厨房ではカレーを作っていた。

 お皿にご飯を盛り、カレーを注ぐ。これで完成だが、店員は引き出しから細長い紙袋を二つ取り出し、カレーの中に粉末を入れ、掻き混ぜる。





「お待たせ致しました」

「ありがとうございます」

 店員が運んできたカレー二つを受け取り、二人は椅子に座り、カレーを食べる。

「うん、おいひぃ!」

「そうだな」

 アツアツのカレーとご飯をあっという間に食べた二人は再び猫と遊ぶ。





 暫くして、二人はあれ程猫と遊んでいたのにも関わらず、今は壁に寄り掛かり、ハァハァと息を荒くしていた。

「ねぇ大介~」

「何だ…」

「あのカレー食べてからおかしくない?」

「あぁ…もの凄く怠い」

 力を入れようとしても全く入らない。時間だけが過ぎていく中、猫達は二人の体を登り、肩の上でペロペロと顔を舐める。

「かわいい奴だなコイツ」

 怠さが思わず吹き飛びそうな愛くるしい猫達を見て思わず笑みを見せる大介。撫でたいが力が入らず撫でれない手に苛立つ。そんな中、突如彼女が問う。

「ねぇ大介?」

「なんだ…!?」

 顔を反対側に向け彼女を見た瞬間、大介は驚いた。

「おまえ……」

「なにあたしを見て驚いてるのよー」

「だっておまえ…そ、その…」

「男ならちゃんと言いにゃさいよ!」

「おまえ…その耳は何だよ…」

「耳?」

 彼女は自分の手で耳を触る。すると大介が驚いた理由が分かった。「あたしの耳こんな形してったっけ?」と思いながら両手で触る。「あたしの耳、こんなんだっけ?」

 徐々に彼女の顔が恐怖の表情へと変わる。

「ひぃ!!!」

 急に叫んだ彼女は服の中に手を突っ込む。

「どうした?」

「け、毛が生えてる…」

「毛!?」

 彼女は彼に見せる為、お腹部分を見せると肌色の皮膚から灰色の毛が生え、あっという間に全身に生えた。

「あたし…どうなるの…」

 震えながら喋る彼女。変化は次々と起こる。五本指から三本指、掌には肉球。そして、

「あっ……」

 お尻を押さえる彼女。それは尻尾が生える合図だった。排泄物を出すように力を入れるとヌルヌルとした肌色の尻尾が出て、先から灰色の毛が生える。

 顔も変化し始める。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 叫びながら一気に顔つきが変わる。顔を振る度落ちる髪の毛、牙が生える歯、先程よりも頭に移動した耳、鼻が前へと伸びた頃には

「ニャアアア!!」

 一匹の猫へとなってしまった。

「おい…猫になっちまったよ」

 恐怖に怯える大介は必死で力を込めると動けるようになり、ドアを開けようとするが開かない。

「おい!開けろ!ここから出せ!」

 ドアを何度も叩いても開く事は無かった。何故なら外鍵が施錠されているのだから。そんな事知らない大介にも変化が訪れる。

「やめろ!やめろ!俺は猫なんかになりたくは無い!」

 茶色と黒の毛が生え始めると、大介は貪るが生える時間の方が早く、全身に毛が覆うと、急激に体が小さくなっていく。

「やめてくれ!俺はまだなり…」

 その言葉を最後に口が大きく突き出し、丸い耳、とがった鼻先、長い尻尾、くりっとした大きな目になり、服から脱出すると大介は鼠になった。クンクンと鼻を動かしながら見る先には先程人間だった彼女、そして他の二匹がこっちを見る。

(待て!俺は人間だ!おまえらの食い物なんかじゃねぇ!待て!)

 必死で言い聞かせようとしても猫達には伝わらず徐々に近づく。

 後ろに下がっていく大介は遂に壁に当たってしまい逃げ場を失った。

(やめろって…俺を食べたって美味しくない。食あたりになるだけだぞ…)

 危機を感じているせいか全身に汗を掻く。その間に猫の影が次第に大介に近づく。

(お願いだから…お願いだから食うのだけはやめてくれ…お願いだか…)

ガブッ






「また新たになりましたね~。今年は特別に鼠にもなって貰いましたがいいですね~」

 部屋の隅にある監視カメラで確認していた砂田は今回の計画に大満足だった。

「今回は素晴らしかった。他の部屋でも同様に食う側、食われる側の立場になって頂きましたがどれも素晴らしい。皆様には感謝いたします」

 砂田は部屋をそう言って部屋を出て行った。モニターには無残にも服と絨毯に染みている赤い血が各部屋に映っていた。

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