役割の輪・名簿の差
正午、池袋の現場写真が会議室へ届いた。派遣フロアでは外部業者も業務を成立させる役割に組み込まれていた。契約上の雇用主より、実際の役割が優先される。 労務担当の白石理沙が出勤簿と契約書を照合し、消えた者と残った者の違いを一項目ずつ外していく。
企業は派遣や委託で責任を分けていたが、現象は契約書の線を認めない。実際に続けた作業だけが、別の帳面で数えられているようだった。
派遣業務フロアでは、受付も清掃も設備管理も業務工程へ組み込まれていた。通常階なら残る役割まで、この事例では同時に消えている。
警備会社の社員は入口を守るだけなら残ったが、本人確認工程を請け負った日は対象へ加わった。同じ人物でも役割によって数え方が変わる。
窓の外には、夜勤の明かりを残すビルが無数に並んでいた。その一つ一つに、誰にも数え切れない出勤日が積もっている。
会議室の壁には、消えた人の写真ではなく確認済みの条件だけが貼られた。家族へ返せる答えがないことを、真壁は毎晩思い知らされる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
(本文実測:725字)




