空いた一階・反証
丸の内の照明が消えるころ、班の照合はまだ続いていた。丸の内のオフィスビル一階から、勤務中だった社員全員が消える。警察特別班の真壁修司たちが、机も端末も残る無人フロアへ入る。 班は有力な仮説ほど先に反証する。階数、業種、建物年齢、勤続年数のどれも、次の事例で例外が出た。
隊員は対象フロアへ長く滞在しない運用を守った。理由は分からなくても、同じ場所へ繰り返し入る危険を数えずにはいられない。
防犯映像に異常な影はない。社員たちは電話を取り、資料を運び、互いに話していた。次の記録では机と椅子だけになっていた。
別の階では通常業務が続き、ビル全体が止まったわけではない。対象階の扉を一枚越えただけで、人の気配が完全に途切れている。
「何を数えているのか」三上が書いた問いには、まだ一文字も答えがない。規則らしきものさえ、次の事例で崩れるかもしれなかった。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
(本文実測:723字)




