空いた一階・名簿の差
正午、丸の内の現場写真が会議室へ届いた。丸の内のオフィスビル一階から、勤務中だった社員全員が消える。警察特別班の真壁修司たちが、机も端末も残る無人フロアへ入る。 労務担当の白石理沙が出勤簿と契約書を照合し、消えた者と残った者の違いを一項目ずつ外していく。
家族への連絡は死亡通知ではなく行方不明として行われた。遺体も移動記録もない以上、警察がそれ以上を断言することはできない。
フロアには携帯電話、財布、上着が残り、飲みかけの茶からまだ湯気が上がっていた。人だけが失われ、持ち物の位置は動いていない。
真壁は映像に映らない瞬間を想像で補わない。消失した者の視点も、無人になった後にどこへ行ったかも、班が確認できる範囲の外だった。
「何を数えているのか」三上が書いた問いには、まだ一文字も答えがない。規則らしきものさえ、次の事例で崩れるかもしれなかった。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
(本文実測:716字)




