別棟の二階・聞き取り
雨の残る丸の内で、真壁は入館記録を受け取った。六日後、新宿の別会社が使う二階で同じ消失が起きる。一階は営業中で、上下階の誰も瞬間を目撃していない。 刑事の久世晃が上下階の勤務者へ同じ順番で質問する。音、光、振動、臭いの証言はどれも一致しない。
別の階では通常業務が続き、ビル全体が止まったわけではない。対象階の扉を一枚越えただけで、人の気配が完全に途切れている。
隊員は対象フロアへ長く滞在しない運用を守った。理由は分からなくても、同じ場所へ繰り返し入る危険を数えずにはいられない。
防犯映像に異常な影はない。社員たちは電話を取り、資料を運び、互いに話していた。次の記録では机と椅子だけになっていた。
廊下の時計が日付を越えても、通報は止まらなかった。班員は現場滞在と担当作業を互いに確認し、同じ役割へ固定されない交代を続ける。
「何を数えているのか」三上が書いた問いには、まだ一文字も答えがない。規則らしきものさえ、次の事例で崩れるかもしれなかった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
(本文実測:712字)




