別棟の二階・映像の間
丸の内の現場は、机上の端末だけが動いていた。六日後、新宿の別会社が使う二階で同じ消失が起きる。一階は営業中で、上下階の誰も瞬間を目撃していない。 三上は映像を一コマずつ確認し、停電、通信切断、編集痕を調べる。何も起きていない部分も時刻ごと保存した。
真壁は映像に映らない瞬間を想像で補わない。消失した者の視点も、無人になった後にどこへ行ったかも、班が確認できる範囲の外だった。
家族への連絡は死亡通知ではなく行方不明として行われた。遺体も移動記録もない以上、警察がそれ以上を断言することはできない。
フロアには携帯電話、財布、上着が残り、飲みかけの茶からまだ湯気が上がっていた。人だけが失われ、持ち物の位置は動いていない。
廊下の時計が日付を越えても、通報は止まらなかった。班員は現場滞在と担当作業を互いに確認し、同じ役割へ固定されない交代を続ける。
会議室の壁には、消えた人の写真ではなく確認済みの条件だけが貼られた。家族へ返せる答えがないことを、真壁は毎晩思い知らされる。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
(本文実測:734字)




