止まらない暦・反証
渋谷の照明が消えるころ、班の照合はまだ続いていた。休職期間も退職期間も日数を消さない。数えているのは連続勤務ではなく、同じ業務へ参加した日の累積だった。 班は有力な仮説ほど先に反証する。階数、業種、建物年齢、勤続年数のどれも、次の事例で例外が出た。
真壁は時間が規則を薄めるという期待を記録から外した。一年で消えないなら、さらに長い空白も安全とは断言できない。
二十日で退職した女性は、復帰後の五日目まで通常に働いた。翌朝に席が空き、長い空白が安全策にならないと分かる。
別の仕事を一年続けていた期間は加算されなかった。同じ人物の人生ではなく、同じ業務へ関わった日が残っている。
窓の外には、夜勤の明かりを残すビルが無数に並んでいた。その一つ一つに、誰にも数え切れない出勤日が積もっている。
会議室の壁には、消えた人の写真ではなく確認済みの条件だけが貼られた。家族へ返せる答えがないことを、真壁は毎晩思い知らされる。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
(本文実測:704字)




