559話「お姉さんは物知り」
結婚指輪のデザインを決め、ドレスのおおよその希望を伝え、新居となる前国王と王妃の部屋の改装案の打ち合わせをし、新調する調度品の確認をし、結婚式に招待する貴族や来賓の確認と調整をしてようやくその日は終わった。
楽しそうににこにこと機嫌よく喋るディアマントを腕に抱いて腕枕をしてやり、疲れ果てたガーネは曖昧な相槌を返しながら瞼を伏せている。それが気に入らなそうにディアマントは頬を膨らませ、ガーネに抱きついて『最近の定番』となった訴えをした。
「ガーネ、妾さみしい」
「…今は勘弁して、悪い、疲れた。明日の朝にしてくれ。朝なら勝手にそうなるから」
「そうなるとはなんじゃ!さみしい!」
「一応俺は20歳の若くて健康な男だから朝は性的にどうこう関係なく多分そうなってると思うから明日の朝勝手に抱くから今は寝てくれ」
「妾わからぬ!さみしい!」
「おやすみ」
「おやすまない!さみしい!」
「肌荒れするぞ、寝ろ。命令だ」
「わらわが!!女王なのじゃ!!!妾に命令をするな!!妾の方が偉いのじゃ!!」
「俺、カカァ天下じゃなくて亭主関白派だからそこんとこよろしく。記者会見でも言ったろ、『俺が尻に敷かれるように見えるのか』って。報道陣みんな俺がお前の尻に敷かれそうに無いって顔してたろうが寝ろ小娘」
「ガーネッ!!ばかーっ!!」
そんな話をして先に寝息を立てたガーネを見て不貞腐れながら眠った翌朝、まだ日が昇る前にディアマントはふと何か違和感を覚えた気がして目が覚めた。
隣へ視線をやると、まだ目を閉ざして相変わらず生きているのか死んでいるのか分からないほどに静かすぎる寝息を立てて眠る恋人もとい婚約者であるガーネの寝顔を確認し、水でも飲もうかと身を捩ると無意識なのかなんなのか、首元にいつものように敷かれた腕と身体に添えられた腕に力が入り抱き締められる。
「……ほんと、眠っているときは子供のようじゃ」
小さく呆れたように呟きながら仕方がなしにガーネの身体に抱きつき直すと、違和感の原因に気付いた様子でディアマントは手を伸ばした。
ガーネの下半身に手を触れ、眠っている『はず』のガーネのそこがなぜそうなっているのかわからずに若干の困惑と興味本位で指先でそっと撫でてみる。
そうしてディアマントは気が付いた。『これは本で読んだことがあるやつじゃ』と、なぜかそこである種の感動を覚えたのである。
再度ちらりとガーネの顔を盗み見ると、未だに目を閉ざしたままである為に『眠っている』と確認をし、少し緩んだ腕の隙間から抜け出して身体を起こすと興味津々といった様子で寝巻きの上からガーネの下半身を撫で回した。
衣服越しに何度か感じたことのある熱や感覚に目を輝かせ、先日は初めて目の当たりにしたために驚いて怯えてしまい、その翌日は『勉強』の成果を発揮するために『恋人や夫婦はそういうことをするもの』としてぎこちないながらも口付けて舌を這わせてみたが、じっくりと『観察』することはそんな余裕が伴わずに出来ず終いであった。ディアマントは『今が好機』と、ガーネの寝巻きのズボンに手を掛けたところで別の違和感を覚えてふと顔を上げ、ぎくりと肩を揺らした。
「どうした、続けろよ」
「なん、い、いつ、いつからっ」
「お前が起きて寝返り打って抱きつく前から。ほら、次何するつもりだったんだ。別に止めねーから早く何しようとしてたのか俺に教えてくれよ」
「な、な、な、…なんでッ、なん…なぜ、『こんなこと』になっておるのか妾、気になって、それで、あの、そのっ」
「お前は朝勃ちも知らんのか。一体普段なにを『勉強』してんだか」
「あ、あさだち!わッ、妾知ってるもん!」
いつもの『知ったかぶり』をしたときの目の泳ぎ方をし、あからさまに動揺して挙動不審にもじもじと指先を弄り始めた。
「ほー。さすがお姉さんは物知りだな」
「おねえさん…ものしり…」
ガーネの煽り文句にぴくりと反応してなぜか嬉しそうににんまりと笑みを浮かべると、途端に得意になってガーネの顔を見つめた。
「お姉さん、コレ治して。あ、でもさすがにお姉さんでも治し方までは知らねぇか。そうだよなぁ」
「妾知ってるもん!わかるもん!治せるもん!!」
「フーン?へぇ?……まぁでも、夜じゃねぇからチンタラしてたらまた邪魔が来るからな。治してもらうのは夜でいいや。ディアおいで、昨日の夜『さみしかった』んだろ。約束通り構ってやるよ」
「あれっ?えっ?わ、わわっ」
あっという間にひっくり返されて組み敷かれたディアマントが困惑した顔でガーネを見上げているうちに、薄手のネグリジェを捲り上げられて剥かれていってしまった。
「ガーネっ、きょ、妾、んんッ」
「あーあ、朝からどっかのお姉さんが人の下半身まさぐるモンだからなぁ」
「ちが、さいしょから『そう』だったもんっ」
「聞こえない。……なぁ、『こう』なった責任は取ってくれるんだろ?」
ガーネはディアマントの太腿に自分の下半身を押し付けながら、寝起きで若干甘えたような声を上げて『オネダリ』した。ディアマントはそれだけで簡単に絆されてしまい、少しだけ情欲に潤んだ目でガーネを見上げながら小さくこくりと頷いて見せた。




