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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第四章『呪禍』

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21話「理解の代償」

「ヘルソニア」

「かしこまりました」


特に何を指示したわけではなく、名前だけ呼ばれてヘルソニアは承知したらしい。返答を返すと同じように牢に向き直り、暴れていない方の男の口枷のみ魔法を解いた。

「……偽りの…均衡め…!」

「ほう、呪いを受けてなお妾に舐めた口をきくか小僧。いい度胸じゃ」

畏れ多くも女王に楯突くような物言いをする男に、他人事ながらガーネはヒヤヒヤしながら成り行きを見守る。しかし、その男も『呪い』が進行しているらしく片目が真っ黒に侵食していた。

「殺せ」

「承知いたしました」

ディアマントの冷ややかな命令が静かに響き、あまりにも淡々としたヘルソニアの返答にガーネは状況についていけずに声を上げる。

「は、…っちょ、ちょっと!お待ち下さい!」

「待たぬ、殺せ。手遅れじゃ」

「殺すってなんでですかって聞いてるんですよ!」

女王に感情的に食ってかかるガーネを、女が慌てて止める。肩を掴んで引き寄せながら、しかし声はどこか落ち着いた様子で静かにガーネの目を見据えて告げた。

「君、落ち着きなよ。…あれはかなり古い種類の呪いだ。解呪するまでの間に他に感染する。…殺す以外無いと、私も思う」


女の声の調子から、白を黒と女王が言ったからと同意している訳ではないことや、男達に同情したわけでもなく、あくまでも中立な立場としての物言いだと理解する。この場で喚き散らしているのが自分だけという自覚もありようやく少しだけ気持ちを落ち着けた。


ガーネが改めて口を開こうとした刹那、バタバタと騒々しく兵士の一人が駆け下りてきた。

「ディアマント様!ヘルソニア様!至急のご報告です!今朝緊急搬送された男から呪いが発現!手当を担当した女性看護師二名と男性医師一名にも感染した模様です!」

「…ちっ、面倒な事になりおった。妾の手を煩わせるとは……異端者共め」

忌々しそうにディアマントが舌打ちを漏らす。


────感染する、『呪い』?

ガーネは何か引っかかるものを覚え、それを必死に紐解こうと思考の中の記憶を掻き回す。


「病院の『感染者』と『接触者』は至急隔離し処分せよ。ヘルソニア、処分はお前に任せる」

「はい」


感情が着いていかないガーネを置いてけぼりにしてディアマントは淡々と『殺処分』を命じヘルソニアがそれを無感情に了承する。


──── 呪いが、感染するのは理解出来た。ただ、やり方に納得がいかない。


「女王陛下」

「……なんじゃガーネ」

「この『呪い』、解呪の方法は」

「無くはない。しかし、ヘルソニアでも妾でも相当な時間がかかる。その間に感染者が広がる──── …妾が時間をかけて一人救う間に、百人は堕ちよう。それは妾とて、この国の主である以上本意ではない。感情で人を殺す程…それこそお前が思っている程、妾は愚かではない。ガーネよ、あとは言わずともお前ならわかるな」

「…………出過ぎた真似を、大変失礼致しました」


納得は出来ない。だが、理解は出来た。

ガーネは苦虫を噛み潰したような顔で牢の中を睨み付け、どうにか自分の中で腹落ち出来る何かを探す。

そして、ふと思い出したことを口にする。


「陛下、無礼ついでに一つよろしいでしょうか」

「……お前の無礼は今に始まった事ではなかろう、なんじゃ」

「『呪い』の解呪が現実的では無いことはわかりました。『感染者』が出ていることも理解しています。現状の感染者を……処分、したところで、この連鎖は止まるのですか」

ディアマントはガーネの質問を受けて目を細めた。

扇を広げて口元を隠すと、視線を少しだけ伏せて真っ直ぐに目を向け直す。

「わからぬ。食い止めることが出来たとて、一過性の措置の可能性もあろう。そも、これは明確に妾に向けられた相当に古い呪いじゃ。呪いを解呪するか、呪いを術者に返すか────返したところで、その術者が生きているかも知れぬ。……まあ、呪いを仕向けた相手に見当はついているがな」

「わからないけどわかりました」

「……は?」

ガーネのあまりにも馬鹿らしい返答に思わずディアマントも声を上げる。


「陛下、俺はある程度…好きに動いていいとのご命令でしたね」

「ガーネ、待ちなさい」

慌ててヘルソニアが止めに口を挟むも、ディアマントはぱちんと音を立てて閉じた扇を、ヘルソニアの前に出して続く言葉を強制的に封じた。

「…先日お前に命じた通りじゃ。ある程度は許容する。しかし、妾とてこの国の王。無用な混乱は避けたい、それに反することは許さぬ。よいな」

「承知いたしました、では失礼します。おい行くぞ付き合え」


恭しく敬礼をして踵を返すと、それまで傍観を決め込んでいた女の腕を掴んで地下牢の出口へ向かう。

「はぁ?ちょっと君!私を巻き込まないでよ!」

「うるせー黙って従え」


「……ディアマント様、よろしいのですか」

「よい、あの男はこの程度の呪いでは死なぬ」

「そうではなく、……いえ、かしこまりました」

「ヘルソニア、異端なる均衡の呪いを受けた人間を早急に始末しろ。そちらの方が先決じゃ。──── 塵一つ、魂の残滓も残すな。抹消しろ」

「仰せのままに、陛下」

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