96、バナバナ星 〜テスロと神々
「さすが、キャプテンアール様だ! なんというチカラだ」
「俺達は、素晴らしい主人を得た!!」
宇宙海賊キャプテンアールが、捕らわれていた子供達と僕の城兵達を連れて消えると、レギュロー団の人達は、大騒ぎだ。あれはキャプテンアールの能力じゃなくて、ワープワームを使っただけなのにな。
リュックくん自身は確かに強い魔人だけど、こんなに短期間で有名になったのは、こういう演出の成果だろうか。たぶん、宇宙海賊キャプテンアールは、実際の能力以上に、過大評価されている気がする。
「じゃあ、僕も失礼しますね」
そう声をかけると、高速船の運転手テスロさんが振り返った。石像信仰の人達もキャプテンアールの団に入りたいらしく、レギュローさんに群がっている。テスロさんもそのひとりだ。
「あぁ、行商人さん、対岸まで送るよ」
「ええっ、それならレギュローもご一緒しますよ。島から戻る手段がなくなりますからな」
テスロさんが高速船を使うと考えて、慌てるレギュロー団の人達。あ、もうレギュロー団ではないのかな。リュックくんは、レギュローさんだけに入団を許可していたけど、団員をここで、1,000人集めろと言ってたもんね。
「あー、いえ、僕は高速船はなくても……」
(ワープワームを使うから、とは言えない)
「そうだな。彼のことは、ワレが運ぼう。ワレと同じくアンデッドの王だからな。いや、運ばなくとも自力で湖を越えることができるか? 動物のアンデッドの能力は、ワレにはわからないが」
根切り男が、僕をアンデッドの王と呼んだためか、石像信仰の人達の様子が変わった。自分達が信じていた石像神が、僕に討たれたことを思い出したのかな。キャプテンアールの登場で舞い上がっていた頭が、スーッと冷えたかのようだ。
「ええ、まぁ、自力で大丈夫です。テスロさん、お気遣いありがとうございます。では」
「あー、あの、行商人さん、えっと……」
テスロさんは、僕を慌てて呼び止めた。そして、何か言いたそうにしている。彼がチラチラと見る視線の先には、石像信仰の……弱小神と呼ばれていた人達がいるようだ。
僕が彼らに気づくと、彼らの方から近寄ってきた。
「イロハカルティア星の行商人、いや、女神イロハカルティアの番犬ライトだな」
(高圧的な言い方だな)
「はい、そうです。イロハカルティア星を離れているときは、ただの行商人として扱っていただければ嬉しいのですが」
僕が営業スマイルを浮かべたせいか、彼らは警戒したようだ。高圧的な話し方は、彼らの緊張の証だろうか。
「そう言われても、あんな力を見せつけられたのだ。しかも、まさか呪詛神デルガンダを討つとはな」
(デルガンダのこと、呼び捨てだな)
「神デルガンダ様は、弱っておられましたからね。神戦争の頃の彼には、手も足も出ませんでしたよ」
「ふむ、謙虚なのか、それとも嫌味なのか……」
(そう聞こえるのか)
「事実を述べただけですよ。青の神ダーラ様は、神デルガンダ様を配下にしたことで、青の星系の覇者となることができたと聞いています。貴方達は、魔導系には見えませんが……」
「あぁ、俺達は、どの星系にも属していない者だ。もう100年以上前に、青の星系の勢力争いに巻き込まれて、星を奪われたがな」
「星を奪われたのですか? 壊されたのではなく?」
「あぁ、奪われた。その言い方からすると、俺達が星と命を共にする者だということが、わかっているようだな」
(あれ? 神って言わないの?)
「ええ、どこかの神々かと……。神デルガンダ様がそう話しているのが聞こえたので」
そう話すと、彼らは互いに顔を見合わせている。マズイことを言ってしまったかな。
「やはり、女神イロハカルティアの番犬は、恐ろしいな。会話が聞こえただけなら、俺達が青の星系の者だと思うはずだが、魔導系ではないとわかるのだからな」
(あー、ゲージサーチしたからね)
この星の大気が邪魔をするから、サーチの可能性はないと思い込んでいるらしい。ゲージサーチは、大気の影響は受けないんだけど、そもそも、女神様が神族に与えた『眼』の能力だもんな。
「えーっと、見た目が、青の神っぽくないなと思っただけですけど?」
僕は、しらばっくれておく。
「そうか、それならそういうことにしておくか」
さらっと話は流してくれた。ということは、このことは、彼らには、どうでもいいことらしい。さっき、互いに顔を見合わせていたのは、念話だろうか。何か別の用事がありそうだ。
「はい、それで、僕に何かご用でしょうか。ポーションが必要でしたら、朝になれば、宇宙海賊だらけの町で販売会を予定していますよ」
「えっ、あ、あぁ、ポーション屋として扱えというのは、そういう意味か。その……奪われた星についての相談を、女神イロハカルティア様にしたいのだ。取次を頼めないだろうか」
(うん? 女神様に相談?)
僕が変な顔をしたのか、別の神が口を開く。
「俺達が呪詛神デルガンダに従っていたから、信頼できないのだろう。それは俺達も、そうだろうとは思っている。だが、従うには理由があって……。黄の星系の創造神、女神イロハカルティア様に会わせてもらえないだろうか」
「俺達のチカラは、見抜いているだろう? 女神イロハカルティア様を害するチカラなど、皆無だ。女神の番犬の誰にも敵わない弱小の者だ」
(やはり、自分のことを神とは言わないんだ)
「今の僕は、ただの行商人です。こんな場所でそんなことを言われても、困りますよ」
「あ、あぁ、そうだな」
「俺達は、どうすれば……」
僕が断ったと感じたのか、彼らは少し怯えたようにも見える不安げな表情をしている。そして、彼らはなぜかチラッと、高速船の運転手テスロさんに視線を向けた。知り合いなのだろうか。
「もうすぐ朝になります。僕は、販売会の準備に戻らないといけないので、話の続きは、宇宙海賊達がたくさん住む町でお願いできますか? お頭さんに聞けば、場所を教えてくれますから」
デンデンと呼ばれるお頭さんは、白い女神と何か話をしていたようだ。名前が出て、ピクリと飛び上がっている。
「あぁ、星の門に一番近い町だな。確かに、宇宙海賊だらけだ。少し仮眠を取ってから、訪ねさせてもらう。販売会が終わる時間の方が良いか」
(神なのに、めちゃくちゃ気を遣うんだな)
「僕達は、4つのグループに分かれて販売会をしています。白い制服の上着とこの帽子が目印です。制服の上着は、今は僕は店員に預けてますが……」
どう説明しようかとキョロキョロしたが、似た服を着ている人はいない。
「その服のことは、テスロがわかるようだ。店員は、君のような神族なのか?」
(城兵だとは言えない)
「えーっと、いろいろですよ。僕が住む町に出入りする人達です」
「他にも、女神の番犬はいるのか?」
(店長は、その番犬と女神様本人だとは言えない)
「それは、企業秘密です。肯定しても否定しても、デメリットがありますからね」
僕がそう流すと、神々はフッと笑みを浮かべた。バレたのだろうか。
「わかった。まぁ、行商の邪魔はしないように、訪問させてもらう。青い帽子を探せば良いのだな?」
「ええ、青い帽子を探してください。他に、赤と黄と緑がいます。一応、各色ごとに店として分かれているので、他の色はライバル店です。では、失礼します」
「レギュローも……」
僕は、足元に透明化して待機していたワープワームを使って、島から森へと移動した。ワープの瞬間、レギュローさんが何か言いかけていたけど……ま、いっか。




