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94、バナバナ星 〜素直じゃないね

「りゅ……キャプテンアール、勝手に、この星にアジトなんて……」


 僕は驚きのあまり、思わずリュックくんの名前を呼びそうになってしまった。


「根切り男が許可している。何も問題はないぜ」


「根切り男さんは、何も言ってないよ?」


 僕が即座に反論しても、宇宙海賊キャプテンアールは涼しい顔で知らんぷりだ。一方で、そう言われた根切り男は、呆然としている。絶対に許可なんか取ってないよね?


 当初の予定では、キャプテンアールが強い宇宙海賊をスカウトして、皆を連れて撤収するはずだった。彼がアプルゴルド星に宇宙海賊達を連れていくからこそ、呪詛神デルガンダがこの星に戻ってきても、配下がいない状態になるのに。



(リュックくん、知らないよ? 女神様との打ち合わせを勝手にぶち壊して……)


『いーんだよ。気にすんな』


(でも、どうして、この星にもアジトを作るなんて言うの? この星を治める女神バナバナ様って、たぶん女神様と仲悪いよ?)


『敵の敵は味方だろーが』


(ちょ、誰が敵なんだよ。打ち合わせと違うと、きっと……)


『うるせーな。作戦は変更するためにあるんだよ』


(リュックくん、また反抗期?)


『誰が反抗期だ? 子供扱いしてんじゃねーぞ。どう考えても、オレがこの星にアジトを作る方がいいじゃねーか』


(ぜんっぜん、意味わかんない)


『呪詛神デルガンダは、絶対に戻ってくるだろ。今の配下がいなくても、そんなことは奴にとっては、どーでもいいんだよ。この星は、なかなか入れねーからな』


(星に入れないって、さっきも言ってたけど、普通に入ってるじゃん)


『今は、女神バナバナが、いらっしゃいキャンペーン中だからだ。あちこちを炎の海にすればわかるぜ。この星の大気は、おまえのわらびもちバリアと同じだろ』


(はい? あー、神戦争のとき……)


 そういえば、この星は、神戦争によるダメージをあまり受けていないらしい。植物の星だから、他の星系の神々が攻め込まなかったのかと思ってたけど……。


『神戦争のとき、この星は厚い大気に覆われたらしーぜ。大気の層は、星の門(ゲート)以外の場所からの侵入を完全に排除したって、宇宙海賊達の間では有名な話だ』


(それが、女神バナバナ様の力?)


『あぁ、地底から出てこねーんだろ? 神戦争以前から、動物嫌いらしーからな』


(確かに、無関心みたいだけど……)


『呪詛神デルガンダは、自分がこの星を乗っ取ったら、敵襲を装って焼き払うだろーな。いや、凍てつかせるか。どっちでも同じことだ。女神バナバナは危機を感じると、厚い大気を作り出す。霧になれるデルガンダにとってみれば、これほど良い隠れ家はないだろーぜ』


(でもそれなら、アジトを作っても、リュックくんはともかく、配下の宇宙海賊達も入れないじゃん。いちいちリュックくんが異空間を経由させて出入りするわけ?)


『アジトには、天使ちゃん達を置いておくから、よゆーだろ。ワーム神だからな。それに火の魔物っつっても、緑虫だ。植物の星とは相性がいいぜ』


(ちょ、ワープワーム達を、宇宙海賊達の移動手段として勝手に使う気?)


『あん? 腹黒女神さえ使ってんだから、オレもいいはずだろ』


 確かに、ワープワームは仕える主人の家族にも従う。リュックくんは、僕の魔力で育った子供のようなものだけど……でもだからって、宇宙海賊達全員の出入りに使うなんて、あり得ない。




「あ、あの……なぜ、そんなに睨み合いを……」


 僕がリュックくんと喧嘩していると、宇宙海賊レギュローさんが、おそるおそる声をかけてきた。睨み合いをしているように見えるんだな。


 リュックくんは、僕の肩に残している肩紐を経由して話してくるから、普通の念話とは少し違うらしい。たぶん、誰にも傍受されないんだと思う。だから、睨み合いに見えるんだ。



「レギュローさん、心配はいりませんよ。キャプテンアールが、あまりにもわがままなので、僕が少しイラついているだけです」


 僕が冗談っぽくそう話すと、レギュローさんは僕につられたのか、笑みを浮かべた。だけど、目は笑ってない。彼は、キャプテンアール団への入団が許されたから、どういう態度をとれば正解なのかを探っているかのようだ。


「誰がわがままだって?」


(ちょ、リュックくん! 声が出てるよ!! 今はキャプテンアールなんでしょ?)


 僕がそう指摘すると、キャプテンアールはニヤリと口角をあげた。挑発しているのかな。めちゃくちゃ反抗期じゃん。



「キャプテンアール様、この星にアジトを作られるのでしたら、是非とも……」


「それは、オレじゃなくて、レギュローに言え。ふぅん、おまえは、変わった種族のようだな」


 高速船の運転手テスロさんの言葉を、ぶった切るように冷たく言い放つキャプテンアール。こういうキャラで通しているのかな。だから僕に対しても、超反抗期なんだ。


「は、はい!」


 種族のことを見抜かれて、テスロさんは嬉しそうに目を輝かせている。いや、拒否されなかったから、入団確定ということなのかもしれない。




「キャプテンアール、この星にアジトを作ってどうするつもりかな。根切り男さんも、困惑しているよ」


 僕が改めてそう尋ねると、キャプテンアールは、なぜか白い女神の方を向いた。


「白い女神、おまえも入団するか?」


「なっ? わ、わたわたひが……」


 白い女神は、すっかり怯えているよ。僕のことも見ないし……。いつの間にか白銀の鎧は消え、シンプルなワンピースを着ている。戦闘狂かと思っていたけど、随分と印象が違って見える。


「あぁ、おまえは、結構強いだろ? それに、宇宙(そら)は広いぜ? こんな陰湿な星に引きこもってないで、外に出たらどうだ?」


「えっ、あ、わわわわ……」


 白い女神は、真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。なんだか百面相をしている。感情が処理できない状態なのだろうか。



「キャプテンアール、悪いが、白い女神には役割がある。俺達は、女神バナバナを支えなければならない」


 根切り男がそう言うと、キャプテンアールはニヤッと笑った。めちゃくちゃ悪役っぽい顔をしてる。


「ふぅん、じゃあ、根切り男、おまえも入団するか?」


(リュックくん! 何を言ってんの! 全然、話を聞いてないじゃん)


『うるせーな、黙ってろ』


(超反抗期!!)


 僕が抗議しても、キャプテンアールは知らんぷりだ。こういう所って、女神様にそっくりだよね。たぶん、リュックくんの提案には意味があるはずだ。だけど、あまりにも強引じゃないの? ってか、僕に何も言わないって……あっ、そうか、このベレー帽か。女神様にバレたくないんだ。



「いや、入団するかと言われても、俺達には役割がある」


 根切り男は、ビシッと断っている。ただ、キャプテンアールのことは、怖れているみたいだ。そして、彼が断ったことで、周りはひきつっているようだ。


 これも、様々な演出が効果を発揮しているのだろう。キャプテンアールが、この星にどこからか転移してきたこと自体が、ここにいる人達には、信じられないのだと思う。そんな絶対的強者の申し出を、根切り男が断ったんだ。


 シーンと、重苦しい静寂。たぶんこれも、キャプテンアールの演出だ。



「根切り男、なぜ、オレが勧誘していると思う?」


 キャプテンアールは、小さな声で尋ねた。これも演出だろうな。リュックくんは、最初から根切り男を勧誘するつもりだったように思える。


「ワレにはわからない」


「ふっ、じゃあ、ライトはわかっているよな?」


(へ? 知らないし!!)


 そう反論しても、僕の心の声をリュックくんはスルーしている。僕に何かを言わせたいらしい。


「僕にも、キャプテンアールの狙いなんてわからないよ。ただ、アプルゴルド星では、神アプルゴルド様の側近の白い竜を、入団させたんだっけ?」


 するとキャプテンアールは、ニヤリと笑みを浮かべた。僕は、適当に話を流したつもりだったけど、これでいいの?


「あぁ、神竜と呼ばれる竜を配下にした。オレは、自分のコレクションは、壊されないように守るからな」

  

(なるほど、そういうことか。だけど、リュックくん! 言い方! コレクションって、本や魔道具と一緒にしてない?)


『コレクションはコレクションじゃねーか』


(ったく……素直じゃないよね)


 キャプテンアールの発言に、困惑する根切り男。仕方ない、僕が補足しようか。



「根切り男さん、どうやらキャプテンアールは、この星を守るための理由が欲しいようです」


 僕がそう話すと、根切り男は目を見開き一瞬固まっていたが、しばらくすると、キャプテンアールに深々と頭を下げた。一方で、白い女神はキョトンとしている。神の能力を吸収した根切り男は、ほんと賢くなったな。



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