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71、バナバナ星 〜白と黒の女神とデンデン

 僕達は今、貧民通りのテントの中にいる。さっきのテントとは違って、整然と整えられていて、多くの女性や子供もいるようだ。


 蔵へは、別のテントから長い階段を降りたけど、地上に上がるのは、蔵の中から見えない何かに持ち上げられたようだった。おそらく、女神バナバナ様のチカラだろう。


 僕について蔵に潜入したワープワームも、放り出されたみたいだ。蔵には、女神バナバナ様の力が強く及んでいるようだ。



「行商人さん、白い女神は夜にならないと目覚めないので、また夜に来てくれ。誰かに声をかけてくれたら俺に繋がる」


「お頭(かしら)さん、いや、デンデンさんでしたっけ? 貴方を呼んでほしいと言えば……」


「シッ! その名前は使わないでくれ。俺達には個体名はない。女神バナバナ様は、生み出した我々のことをデンデンと呼ばれるのだ」


 彼は、松ぼっくりのときとは違って、僕に近寄って小声で囁いた。まぁ、恐れられるよりはいいけど、僕の素性を忘れているような気もする。


「お頭(かしら)さん、わかりました。では、夜に。あぁ、この町には宿屋はないですよね?」


「宿屋? 屋敷のことか?」


(宿を知らないか)


「いえ、ご存知ないならいいです。このテント通りの人達は、皆、女神バナバナ様が生み出されたのですか?」


「それは、デンデンだけだ。ほとんどは、置き去りにされた者や孤児だ」


(うん? 話が……)


 えーっと……女神バナバナ様が生み出した巨大な松ぼっくりがデンデンと呼ばれ、それ以外の人は、他の星からの移住者ということかな。彼にこれ以上尋ねても、欲しい答えは得られそうにないな。



「そうでしたか。じゃあ、僕達はそろそろ行きますね」


 僕は、まだボーっとしている城兵達に、パナシェ風味のクリアポーションを飲ませた。これで、女神バナバナ様の拘束は解除されるはずだ。


「それは、違うポーションだな。火無効付きではないのか?」


 お頭(かしら)さんは、めざといな。あぁ、匂いでバレたのかもしれない。


「これは、体力回復効果は、火無効付きのポーションと同じ性能です。今、火無効は要らないので火無効無しのものですよ」


 この星で、クリアポーションを売るつもりはない。だから、適当に誤魔化しておく。


「ふぅん、火無効付きよりも安物なんだな。それなら興味はない。出口は、あっちだ」


 彼は、隣接する別のテントを指差した。このテントからは直接外へは出られない仕様なのかな。



「はい、ではまた夜に……」


『ライト! 白い女神と黒い女神の居場所を聞くのじゃ!』


 いきなり大音量の念話だ。同じく青いベレー帽を被っている城兵二人も、慌てて耳を押さえている。念話は、耳を押さえても聞こえるんだけど……。


『ティア様、ボリュームを考えてくださいよ。白い女神は今は眠っているそうです。白い女神や黒い女神をご存知だったんですか?』


『そんなもの、妾(わらわ)が知るわけないのじゃ。さっき、女神バナバナと話しておったじゃろ』


(ベレー帽を通じて、話を聞いてたのか)



「あっ、ちなみに、白い女神様や黒い女神様は、この近くにいらっしゃるのですか」


 僕は、何気なく振り返り、お頭(かしら)さんにそう尋ねた。


「白い女神や黒い女神に、様を付ける必要はない。アイツらは、俺と同じく女神バナバナ様が生み出した動物だからな」


(はい? 女神様ではない?)


「白い女神や黒い女神は、木の実なのですか?」


「シッ! 声が大きい」


 お頭(かしら)さんは、キョロキョロと視線を走らせた。このテントの中に、まるで敵でもいるかのような鋭い視線だ。


「すみません、秘密なのですね」


「女神バナバナ様がデンデンと呼ばれるのは、俺達のように地上の動物を管理する者達のことだ。女神と呼ばれるのは、地上の動物を幻惑魅了して操る者達のことだ。白や黒は、頭の色だ」


(人間を操る!?)


 女神バナバナ様の能力を分け与えられているのかな。だから、女神と呼ぶのかも。


「そうなのですね。じゃあ、白い女神や黒い女神は、この町に住んでいるのですか?」


「いや、アイツらは、こんな動物臭い場所は嫌うからな。白い女神は、火山湖の火山にいる。黒い女神は、星の門がある森にいるよ。だが行商人さん、自分達だけで接触しようとは考えないことだ。アイツらは、災害を起こすからな」


「災害?」


「あぁ、まぁ、また夜に。俺は少し眠る」


 そう言うと、お頭さんは僕から離れていった。



『やはり、そういうことじゃったか。ライト、露店通りに来るのじゃ! さっさと店じまいをして、その森を探すぞ』


 また大音量の念話だ。頭がガンガンするよ。


『災害を起こすって言ってましたよ?』


『それは宇宙海賊を相手にする場合じゃろ? 妾達は、行商人じゃから、関係ないのじゃ。はよ、露店通りに来るのじゃ!』


(はぁ、まったく……)


 大音量の念話は、乱暴にブチッと切れた。城兵達が、涙目になっているよ。大音量の念話は頭にガンガン響くんだよね。




 僕達は、テントにいた別の人に案内され、テント内を移動していく。いくつものテント小屋がくっついて並んでいる。蒸し暑さを軽減する工夫だろうか。蔵に降りたテントは、地熱で、すごくモワッとしていたもんな。


「ここから、外に出られます。行商人さん、ありがとうございました」


「いえ、こちらこそ」


 案内してくれた男性が、テントの出入り口の布を持ち上げた瞬間、パッと出入り口を閉じた。


(何? 何かあった?)


 彼の表情は、青ざめ、数歩下がった。



 パサッ!


 乱暴にテントの出入り口の布が……下半分を切り落とされたみたいだ。


 僕のそばにいた城兵二人が、剣に手をかけた。だが、彼らはまだ調子が戻っていない。


「キミ達は、何もしなくていいよ。僕に任せて」


「ですが、ライト……店長!」


「キミ達、忘れてない? 僕は、1年前からキミ達より通常戦闘力も高くなったんだよ。ティア様風にいえば、僕も強くなったのじゃ、かな?」


 僕が少し冗談混じりにそう言うと、城兵達は剣から手を離した。


 テント内は、この付近は雑多な物置きになっている。これは、ある種のバリケードかな。テントの出入り口を少なくしているのは、賢いな。おそらく、何度も失敗してきたのだろう。




「おう、おうおう! 中におびきよせようって作戦か? 同じ罠は通用しないぜ!」


 外から脅すような声。それと同時に、火のついた棒が投げ込まれた。


 僕の後ろにいたテントの住人は、慌てて火を消そうとしている。だけど、近くにある壺の水は使わないんだな。布を覆って消す気らしい。


(あぁ、仕掛けがあるんだな)


 僕は彼に合図をして後ろへ下がらせると、テント内の、僕の後方にバリアを張った。



 ボンッ!



 投げ込まれた火が何かに引火して、軽い爆発を起こした。床に、爆発物を埋めてあったみたいだ。


(殺す気はないんだな)


 侵入者を撃退するための仕掛けみたいだが、せいぜい踏んだ足を吹き飛ばす程度の威力しかない。


 僕は、バリアを張らなくても平気だった。以前の僕なら、ビビって何重にもバリアを重ねていたと思う。



「やったぜ! 突入だ!」


 テントの出入り口を、今度は大きく切り開け、そして、なだれ込んで来たのは、それなりの装備を身につけた男達だった。


 そして、僕の姿を見つけて、怪訝な顔をして立ち止まった。



「おまえら、何だ? 先客か? 俺達に権利があるはずだぜ。こないだ、俺達の武器倉庫を襲撃しやがったからな」


(あー、どうしようかな)


 チラッと後方を確認すると、案内してくれた男性が首を思いっきり横に振っている。下手に宇宙海賊の争いに加わることはできない。僕達がいなくなると、彼らは報復を受ける。だけど……。



「貴方達こそ、何なんですか? いま、貴方達が放り込んだ火の棒のせいでこの辺が吹き飛び、僕達の制服が泥だらけになったじゃないですか!」


「は? 泥だらけ? は? 爆発でそれだけ?」


(この路線が良さげだな)


「それだけですって? 貴方達、僕にケンカを売ってるんですか? 見ず知らずの僕に、いきなりこんなことをして」


「いや、ここはデンデンの巣だろ」


「何ですか? デンデンって」


「いや……おまえ、こんな場所で、いや、その白い服は、あの乱暴者と同じ……あはは、あはあは」


 侵入者は、ジリジリと外へと後退していく。


「ケンカを売っているつもりなら、買ってあげますよ? 僕は、蘇生魔法は得意なんですよね」


 ニヤリと笑みを浮かべてそう言うと、ジワジワと後退していた侵入者達は、僕に背を向けると一目散に逃げていった。


(よし、これでいいよね)



 だが、一歩外に出ると、また壁のような建物から、サーチの光を感じた。



皆様、今年も残りわずかとなりました。

いつも読んでくださって、ありがとうございます♪

序盤に長期休止となり、ごめんなさい。まだ、目眩は治らないですが、付き合い方がなんとなくわかってきました。

しばらくは更新頻度もこのまま、週4更新が続くと思いますが、来年も、どうぞよろしくお願いします。(*´ω`*)

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