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太陽のような瞳の美少女

本作は、少し前に日間ランキング2位・月間9位をいただきました「あるギルドメンバーの遺書」という短編 https://ncode.syosetu.com/n4695hi/  

と、その短編シリーズ https://ncode.syosetu.com/s9750g/


の続きになります。

単体でも楽しめるようになっている作品ですので、お気軽にお楽しみください。


※短編シリーズ八作全作品、日間ランキングに同時掲載されました。ありがとうございます。


『シャロンへ

 しばらく手紙を寄越せなくてごめん。こっちはしばらく雨が続いてて、少し気分が落ち込んでるよ。

 公国の南側は雨が降ると湿気が強くてね。ただ、花はとても綺麗かな。

 シャロンは昔から雨が好きだったっけ? その気持ちも今なら分かる気がするよ。

 でも、傘もささないで雨に打たれるのはやめた方がいい。風邪ひくのは嫌だろ?

 それに、せっかく綺麗な碧色の髪が変色してしまうから。


 酒場を後にした私は、すぐにギルドが借りている寮に向かった。この国の冒険者ギルドの多くは全寮制、つまり同じ場所に住んでいるのだ。

 冒険者はダンジョン――つまりは公国に点在する迷宮の中に潜ることが仕事だから、ひとところに住む者が多い。中には旅をしながら挑むものもいる、らしいが、それは一流のやつか物好きなやつだけだ。


 一応そのギルドの面子をボコボコにした私は、見つかる前に出て行かなくてはならない。扉がいくつも立ち並ぶ長屋のような建物に入り、小さな一部屋に入った。


「……うわこっちもやられてたか」


 部屋はぐちゃぐちゃであった。

 まあもう出て行くからどうでもいいけど。


「えー、これと……これ、あと……」


 持っていくものは最低限にしたい。金子などの貴重品、最低限の食べ物と水。

 身だしなみは必要だから鏡。そして。


「兄貴の手紙……か」


 まだ兄貴が生きていた時に寄越してきた手紙の束だった。ただ一番新しいものでも半年前の日付。遺書というには古すぎる。


 紐で纏められていたはずのそれは、散乱して床に散らばっていた。確認されたらしいが、世間話しかしていないので放置されたのだろう。

 腹いせに破られなかっただけマシか。

 

「まあ、遺品は持ってくよねぇ――」


 手紙の束は比較的重いけれど、それでも。こんなところに置いていたら放火でもされかねないのだから。

 快晴の光の中、手鏡を覗く。兄貴が褒めてくれた碧色の長い髪と、対照的に翠色の瞳。相変わらず目つきが悪いな、私は。

 派手な顔立ちは自覚している。一応隠したほうがいいだろうと、前髪を少し整えた。


「あんまり目立ちすぎてもよくないしね」


 とりあえず、一番古い三年前の手紙に書かれていた、「公国の南側」に行ってみることとする。

 南側。曖昧すぎる表現だ。手紙はいつも送り先が書かれていなかった。

 なんで住所すら書かないんだよ、兄貴は。


・・・


 この国の名は「アリア公国」という。


 そして私が先程までいた場所は、公国の東側。グレーンゾーン区、という場所。ダンジョンの多さでいえば、東西南北で一番少ない場所だった。


 公国は結構広い。東から南地区に行くには何か交通機関を使わなくてはならなかった。


「つまり、汽車……あるいは魔術汽車」


 石炭の代わりに魔術を使う汽車のこと。

 魔術汽車の方がずっと早い。だが駅に行っても、もう魔術汽車なんてものは運営していなかった。

 駅員に眉をひそめて尋ねる。


「……廃車したの?」

「まさか。そんなにすぐに廃車にはならないよ」


 駅員は帰り支度をしていた。まだ昼だ。


「けどさぁ、もう世界も御終いだってのに、それでも働く意味があるとは思えなくてなぁ。今日限りでこの駅も終いだ。あとは家族とゆっくり過ごすよ」

「……そう。そうだね、きっとそれがいいよ……」


 駅員は鷹揚に笑った。


「ああでも、石炭の方の汽車なら帰りに乗っていくから、一緒に乗ってもいいよ。ブレスワルドに行くんだ」

「ブレスワルド。中央街ですね」

「そこならまだ汽車が動いてるかもしれんしな。あんたの言う南側も、そこから行けばいいさ」


 人の好い駅員だった。

 無償の好意は苦手だ。金子を出そうとしたが、駅員はついでだからと受け取ってはくれなかった。お人好しな人だ。


「お住まいはブレスワルドに?」

「ああ。皆そこに住んでる。……俺は冒険者じゃないが、分かるんだ。もう死ぬっていう人間が死期を悟っちまうようにな……人類の死期がすぐそこまで迫ってるってこと」

「ええ。私も、他の者もおそらく理解できていると思います」


 ハッキリ明言されたわけではないが、それほどの何かが起こったことは事実だった。

 お言葉に甘え汽車に同乗させてもらう。駅員は車掌も兼ねているようで、先頭に行こうとしていた。


「そんなんだから、ブレスワルド中央街もちょっと治安が悪くなってるかもしれねぇな――じゃ、もう出すぞ」

「はい」


 汽車はもう出ようとしていた。石炭がくべられ、出車する。

 ブレスワルドまでここから石炭汽車で三時間だ。

 その間どうやって暇をつぶすか、と私が考えていた時だった。


「……ん?」

 何か声が聞こえる。


「なんだ?」


 か細い女性のような声だった。

 ……外から聞こえる。

 耳を澄ませる。


『待って……』


「待って?」


『待ってええええ』


 私は自分が乗る車両コンパートメントの窓の外を見た。

 一人の少女が走ってきていた。ものすごく慌てた表情だ。

 私は石炭室にいる駅員に声をかけようとする。が、今からはもう止められない――


『風来魔術!!』


 ひときわ大きな声と音が聞こえた。

 窓の外で何かが起こったことだけは分かった。風が吹くような音だ。

 驚いてみると、駅にはもう、少女の姿はなく。

 だが彼女はすぐに見つかった。いや、現れたのだ――車両の窓の外に。

 風の魔術。文字通り風を操る魔術で、少女はその窓の外にちょうど到着したのだった。


 腰まである金色の長い髪と、同じく金色の、まるで太陽のような瞳。

 綺麗な少女だった。浮かべている微笑はまるで天使のようで――


『あっ開けてください!!』

「え」

『私の風魔術、そんなに持たないのぉおあああ!!』

「ちょっ――」


 美少女は風圧に即負けし、窓にしがみついて今にも吹き飛ばされそうになっていた。

 なにしてんだこいつ。

 窓を開けようとするが、少女が窓枠をガッチリ掴んでいるので開かない。


「きみ、ちょっと窓から一旦手を離せ! 開かないから!」

『手を離したら落ちちゃうじゃないですか!!』

「風魔術もう一回使えばいいだろ!」

『私がそんな短いクールタイムで魔術をホイホイ使えると思いますか!?』


 クールタイム?

 なんじゃそりゃ。そんなの聞いたことないが。


「と、とりあえず、そのままだと指を挟むぞ!?」

『全身打ち付けられて死ぬよりはマシですうう!!』


 バカなのか度胸があるのかわからん。


『あ、やば……もう……駄目……さよなr」

「おいおいおい!!」


 言葉の途中で飛んでった。

 ガラリと窓を開けて首を出し、彼女が飛んで行った方向を見る。顔に風が恐ろしいほど吹き付けるが構っている暇はない。

 そして彼女はまだ運が良い方だった。次の車両の窓枠に掴まってギリギリ死んでいない。

 そこなら助けられる。私は隣の車両に行こうとして、思い直す。


「いや。こっちからの方が早いな」


 そのまま爆走している汽車の窓に足をかけた。私なら、外から救い出せるからだ。

 



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あるギルドメンバーの遺書


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