仇討ちなんてカッコいいものじゃないけれど
本作は、少し前に日間ランキング2位・月間9位をいただきました「あるギルドメンバーの遺書」という短編 https://ncode.syosetu.com/n4695hi/
と、その短編シリーズ https://ncode.syosetu.com/s9750g/
の続きになります。
単体でも楽しめるようになっている作品ですので、お気軽にお楽しみください。
※短編シリーズ八作全作品、日間ランキングに同時掲載されました。ありがとうございます。
軽く避けた弾丸は、私の後ろにいた別の冒険者に着弾した。
肩を掠めた銃弾に呻いて倒れる男を横目で見て、私はこれ見よがしに肩を竦める。勿論、呆れた顔も忘れずに。
「……こんな狭い中で銃ぶっ放す奴があるか。しかも囲まれてる中でさ。誤射するとは思わなかったわけ?」
「テメェが避けなきゃ当たってただろうが!!」
「銃で撃たれたら避けるでしょ普通」
まともに当たったら高確率で死ぬモノを、黙って待ってやる道理もない。
「クソが……銃弾なんて普通は避けねえんだよ!!」
「そりゃあアンタが鈍間なだけだね。来るってわかってるものをなんで避けられないのさ」
はあ!? とまた驚いた様子のゴメス。追い打ちをかける。
「ついでに観察不足だよ。あんたがよく見てりゃ、私の身体能力なんてすぐに分かったはずだ。……見下して雑用係みたいに扱ってたから、そりゃあわかるはずもないけど」
私がこのギルドで冒険者として戦うことはなかった。
これまでギルドで行ってきた仕事は、そのほとんどが後方支援、雑用だ。魔力量の少なさを見ればそこまで不自然なことでもないし、後方支援の重要さは理解していたので文句はなかったが、ここまで把握されていなかったとは。
それにしてもギルド長が成員の能力も把握してないのはどうかと思う。
「で。どうするの。まだ撃ちまくる? 多分ここにいる冒険者、全滅するけど」
「……チッ」
銃が効かないと悟ったゴメスはそれ以上撃ってくることはなかった。学習能力はあったようで嬉しい。
「賢明な選択だね。……じゃ、私はこの辺でそろそろお暇するから。ちょっとどいてそこ。邪魔だからーー」
「もういいわ」
と、セリアが呟いた。
「手ぬるいことやってるから駄目なのよゴメス。拷問でもなんでもして、とっとと吐かせればいいんだわ」
「……だけどセリア、こいつは銃を……」
「バカね偶然に決まってるでしょ! それにいくらアンタが動けるやつでも、この人数相手に勝てるわけないわ!!」
出ていこうとするのを辞めて、私はセリアを振り向く。セリアは苛々していた。綺麗な顔が台無しだ。
セリアは強気で笑う。
「ふん。それに前から気に入らなかったのよねアンタのこと。ちょっと顔整ってるからって、ゴメスに色目なんか使ってさ」
「……は? 色目?」
誰が誰に色目??
「えっちょっと、まさか私がゴメスに色目を使ってたと言いたいの?」
「それ以外何があるのよ。ゴメスに惚れてたことくらいバレバレだったんだから」
「いや、ない。絶対ない。頼まれてもない」
それだけは必死に否定した。
「ごめん、マジでない。本当にありえない。そこだけは絶対勘違いされたくない」
背筋が寒くなる誤解だった。
「そういう勘違いしてるんなら心配することないってセリア。ゴメスはあんただけもの――」
「言い訳無用よ――『氷魔術』!」
さあっと、冷たい魔力が酒場を覆った。氷が得意なセリアの魔力。
その彼女が全力で、私に氷魔術を撃とうとしてくる。まともに食らったら死の危険もある魔術だ。
……ほんと危なっかしいやつ。
「だからゴメスだけは無いって言ってるじゃない。話聞きなよ」
「煩いわね! アンタには色々聞かなきゃいけないことがあるのよ。大人しく捕まって拷問されてもらうわ!」
「……ほんっと、嫌だね冒険者ってのは、野蛮でさ――」
私も冒険者の端くれではあるけれど。
そっちにも理がないわけじゃないから、穏便に済ませるつもりだったんだけどなぁ。
今にも氷魔術を発動しようとするセリア。
氷魔術は単純に氷を武器として使うものだ。当然酒場で発動するものじゃないが、今のセリアの頭からはすっぽり抜け落ちているらしい。
酒場ごと破壊せんとするかのように、その手から、無数の氷が吐き出されーー
「ーーいや遅いって。何? 寝てるの?」
その全てが当たらなかった。
驚いた顔のセリアを視界に収めたと同時に、周囲の冒険者どもがようやく動き出す。
それぞれ掲げた大剣やら槍やらが一斉に私に襲ってくるが、使い手が悪いから何も怖くはない。斜線が見え見えなので、あとは見えてるものを避けるだけだ。
多分子供でもできる。
「お遊戯、って言うのもなんだかね。真面目にお遊戯やってる子供達が可哀想だし」
剣の持ち方がなってない戦士四人から武器を叩き落として背負い投げ、炎魔術を撃ってきた魔導師を魔術が当たる前に後方から絞め落とす。僧侶はひと蹴りで気絶させれば終わり。
どんな攻撃も当たらなきゃただのお遊びだ。
そんなことをしているうちに本拠地の酒場は崩壊し、天井が見え始めた。死屍累々(死んではないが)の冒険者の上に光がさして中々に綺麗である。
残ったのはセリアとゴメスだ。酒場のカウンターだったものに身体を預けて鷹揚に言う。
「……いい運動にはなったけど。他に何か用事はある?」
「な、なんなんだお前――!?」
「だからシャロンだってば。前からいたじゃない。アンタのギルドに」
「隠してたのか!? お前ここまでするなんて、」
「隠してたんじゃなく使う機会がなかったんだよ」
皿洗いや掃除に身体能力はさほど必要ない。その機会を与えなかったのはゴメスの方だった。
だからこの状況は、あまり同情できる状況でもない。
もはや目の前の二人に何の興味も湧かないが、私は一応教えてやることにした。同じギルドだったよしみで。
「確かに私の一族は代々魔力が極薄だ。あってもなくても変わらないような魔力しか持たない、兄貴みたいな規格外が生まれるはずがなかった弱小の一族」
そういう枷を背負っている。
だが背負ったのは枷だけではなかった。
「でも何かが弱いってことは何かが強いってことでもあるんだよね。魔力が少ない私は、カバーするようにフィジカルが飛びぬけてる。それくらい分かってくれてると思ってたよ」
「……ッ、追放だ、お前なんか……早く出て行け!」
「勿論。さっきからそうしようとしてるよ」
追放、という事実上の敗北宣言をしたゴメスと死屍累々となった酒場を後に、私は空を仰ぐ。
今日も嫌というほど素敵な快晴だ。
「……」
しかし、心はとても快晴とはいかなかった。
それどころか大雨だ。
平気なように思い込んでいるが、平気なはずだと暗示をかけているが、やはり兄貴の死は辛かった。そんなに連絡も取ってなかったけど。
「何を思って死んだんだ、兄貴……あんたは。なんであんなことを――」
それに、と死屍累々を振り返る。
あの冒険者だって一応は被害者だ。攻撃されたからやり返したけど、兄貴の件に関しては多少は申し訳なく思っていなくもない。ほんの少しくらいは。
兄貴は死んだ。それは覆らない事実だ。
だけどその理由、原因を追い求めずにはいられなかった。私にだって知りたいことはある。あの、変にお人好しなくせに胆力はある兄貴が、どうして。
「ちょっと色々回ってみるのもいいかもね。兄貴の辿ってきた道をもう一度。そしてもしーー」
もし兄貴を自殺に追いやった何かがあるのなら、そいつらがまだのうのうと生きているのなら。
決着をつけてやるのもいいかもしれない。
仇討ちなんてカッコいいもんじゃないが、私が責任を取れるとしたら、多分そういう形だろうから。
お読みいただきありがとうございます。
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たくさんの読者の方に作品をお届けしたいため、もし評価いただけたらとても嬉しいですm(_ _)m
今後作品を作っていく上での大きなモチベーションにもなります!
また、ブクマしても良いぞ、という方がいらっしゃいましたら是非いただけると幸いです。
これからも作品づくり頑張ってまいります。
よろしくお願い致します。
※7/15 昼〜夕方に五話を更新します




