Dear my brother~second
『兄貴へ
前の手紙から少し時間が空いてしまった。ちょっと色々あったもんで、書く時間すら取れなかったよ。
二月の一日。それが今の日付だ。普段なら祭りの準備で忙しないこの時期でも、やっぱりひっそりとしている。誰もが家族と過ごしているからだろうね。
今私は、中央街から少し南にいったところの飲食店でこれを書いている。店主が店を捨てて結構経つのか廃墟みたいになってたが、食べ物はかなり残ってて助かったよ。
色々って何があったかっていうと、まあ色々あったのさ。多分兄貴が予想している以上の色々なことがね。前回の手紙しか見てない兄貴には、ーーといっても死んでるからそもそも見てないんだがーー分からないだろうから、簡単に説明すると。
アルファルドって奴に会ったんだ。
アルファルド……兄貴のギルドに居た奴だ。
確か戦士だったっけ? 遺書の一番最初に書かれてた奴だよ。
私はそいつと会った。
そして謝られた。
会ったというか、どうもアルファルドの方がそう仕向けたらしいけどね。ルチアに変な嘘をつかせて連れて来させてーーあ、ルチアってのはこの間の手紙で言った魔導師のことね。
結構かわいいやつだよ。今私の隣でフルーツポンチ食べてる。あんなことあったのに食い意地が張ってて見てて飽きないよね。
そのルチアの兄貴がアルファルドだってんだから、驚きだ。アルファルドは謝っていたけど。
……だけど、なあ、兄貴。たとえば家族を自殺に追い込んだ奴がいたとして、それを簡単に赦せるもんだろうか?
実はまだ、私も実感が湧いたわけじゃないんだ。兄貴を殺した連中に、憎悪はしているけど……この気持ちをどう伝えればいいのかわからない。ただけじめをつけなきゃいけないという気持ちはある。
奴等をただの被害者で終わらせないというけじめをね。
そしてアルファルドは墓穴を掘った。
私の魔術の特性は知ってるだろ。詳しいことは書かないけれど、奴は条件を満たせなかった。兄貴に謝るという条件を。だから報いを受けた……
そういう報告だ。特にこれ以外に目立った話はないかな。
あ、そうだ。汽車。
なんで遺書に「汽車は止めないでくれ」とか書いてくれなかったんだ?
アルファルドのいる街につくまで物凄く大変だったんだよ。星空とかも見れたけどさ……
兄貴、私はしばらくアンタのことは忘れないだろう。
けどどうしたって……時間ってのは残酷だ。
どうしたっていつかは生きてる奴が中心に来ちまう。しばらくは兄貴のことで頭がいっぱいだが、いつかどこかで、隣で飯を喰ってる奴を優先するようになる。兄貴のことは忘れないけど、頭の片隅に留めておく程度になってしまう。
死ぬってのはそういうことなんだよ。結局。
だからその日が来る前に、兄貴の足跡を辿ることにしようと思う。
どうせもうそんなに時間はないんだ。兄貴を殺した連中も平等に死ぬけど、あいつらが何も変わらないまま終わっていくのを見るのはちょっと面白くないから。
兄貴はもうどこにもいない。だから、兄貴の本当の望みを私はしらない。
本当はそんなこと望んでやしないのかもしれないね。
余計なお世話だってならごめん。近いうちに私がそっちに行った時、また怒ってくれればいいさ』
「てかなんでアンタがいるんだよルチア」
「いやぁはは、なんか居づらくて……」
「アンタが? なんで」
「だって……兄さんにあんなこと言われちゃったし」
「あ、ああ……うん」
それはちょっと私にも責任があるから、目を逸らす。
「でも一緒に来ることなかったのに」
「だって……気になるじゃないですか。シャロンさんがこれからどうするのか」
ルチアは少し複雑な笑みを浮かべた。
「私、今まで誰かの言う通りに生きてきました。だから、最後くらい行ってみたいところに行きたいんです!」
「……正直、あんま楽しくないと思うけど……」
「いえいえ。私は私のやり方で楽しませてもらうことにしますから」
フルーツポンチを食べながらにやりと笑うルチア。
まあ好きにしなよ、と、私は肩を竦めただけだった。




