エアガンベースの甲冑貫通弾
弾頭に炸薬が仕込まれていない模擬弾を大量に分けてもらってのテストも少ない日数の中で行われていた。
雅彦「これ凄いな!まんま電動エアガンなのに鉄製の鎧を貫通させる威力のある弾を飛ばせるんやな!」
比呂「凄いやろ?案は当然オレなんで褒めてくれてもいいんだよ?」
雅彦「うーむ、褒めたるわ。ヨシヨシ。
前回の戦いで接近戦の時の火力不足を嫌というほど痛感させられたもんな。
これがあれば近寄ってきた敵の大軍に向けてバラバラっと弾をばら撒いてやれば、そこそこのダメージを広範囲に与えれるよな。
しかも敵が鎧を着てても盾を持っててもある程度は確実に貫通するってのはいいね。
対象物に角度が付けられていても簡単には逸れないんだろ?」
比呂「そうだね。鎧は矢や剣を逸らす目的で傾斜が付けられていることが多いけど、ある程度の角度までならお構いなしで貫通するみたいだよ。
対象物に当たると弾頭内の信管が破裂して炸薬に点火、ロート状の銅製のライナーをドロドロに溶かして高速で正面に撃ち出す。
この超高温、超高速の銅の矢を止める手段はないね。
仮にコレを防ぐ盾を作るとするなら、戦車の装甲で使われているようなセラミックと金属を複雑に組み合わせた複合装甲にするか、とてつもなく厚みのある板にするか、どっちかだもんな。
ちなみにオレらのクルマに向けて撃ったら、多分穴だらけになるよ。
50メートルくらいなら高速徹甲砲の矢も貫通するけどね」
雅彦「うーむ。俺らも防ぐ手段がない武器か。笑えるね。
ちなみにライオットシールドは貫通する?」
比呂「ああ、ポリカーボネート製の透明な盾ね。4mm厚ていどの薄いタイプなら貫通するみたいよ。
うちはまだ導入してないけど厚さ25mmのバリスティクシールドなら防げるみたい。
ただアレは重過ぎるのと輸入がタイヘンなので、軽くて透明で使いやすく、そこそこ強度のあるライオットシールドをグリステン兵士たちにも持たせたいと思ってるけどね」
雅彦「うむ。ライオットシールドは大量発注かけてるそうなんで到着したらクロンパキーに持っていけばいいか」
比呂「そうだね。あとこの新型サブマシンガンの特徴としては、『実銃に比べて反動が少ないのでターゲットに弾を集めやすい』とか『連射しても銃身は加熱しない』とか『ベースは市販の大量生産されたオモチャなんで安い』なんてメリットもあるみたいよ。
試しに模擬弾を40発くらいバラバラっと撃ってみたけど銃身はほんのり暖かい程度しか加熱してないね。
これなら銃身の寿命も長くなるんじゃないの?」
雅彦「高温・高圧の火薬の燃焼ガスで金属製の弾丸を撃ち出すわけじゃないからな。
ステンレス製のバレルにライフリングを刻んでいてもそれほど摩擦熱では発生しないんだろうね。
弾の初速はエアガンを少し早くした程度しかないもんな」
比呂「そゆこと。連射でバレルが加熱して撃たなくなるということはないだろうし、バレル内に火薬の燃焼カスなんかが溜まることもない。
多分、バレルの寿命は実銃の数倍は長いだろうね。
壊れるとするなら、やっぱりモーターかギアとかだと思うよ。
そこら辺の設計や大量生産は川北電機はオテノモノって処だろうね。
図面を引いて取引先の下請けメーカーに発注かければいいだけだから。
あと今はバッテリーはマガジンに入れてるけど、電圧低下が問題になる場合は、電源をクルマから引っ張ることも一応考えてるらしい。
こっちの世界は日本より寒いからね、まあ試し撃ちした感じでは大丈夫そうだけどな」
雅彦「電動のエアガンは冬でもそんなに問題にならないからな、まあ大丈夫でしょ。
比呂「今回の弾は成形炸薬弾だけど、目標に当たると金属の破片をばら撒く普通の榴弾も同時並行で開発してるよ。
プロトタイプは親父たちがいくつか持ち出してるハズだ。
ただ、拳銃弾クラスの小さい弾頭に入る火薬の量はたかがしれてるので、おそらく実用化はされないと思う。
榴弾である程度の効果を出そうと思ったら弾頭に入れる炸薬量を増やさないといけないけど、それだと拳銃弾程度の大きさでは実現が難しいからね。
拳銃弾程度の大きさの弾頭で済んでいるのは、ノイマン効果で貫通力のみに全振りしているから。
榴弾にするなら弾頭を大きく出来るグレネードランチャーを作った方がいいわ」
雅彦「火薬で撃ち出す擲弾筒や迫撃砲を作るのは、いくら川北電機の開発部がやるといっても問題があるだろうから、撃ち出す機構はコレみたいな電動モーターにするか、弓矢の先に取り付けて射出するかどちらかって処かな?
それにしても、やっぱり国の軍需産業に食い込んでいる企業ってのは凄いね。
川北様様だよ」
比呂「ホンマにソレやね。出来たら川北重工とかも参加してくれたら、マジモンの戦車や装甲車が使えるんだろうけどな」
雅彦「まぁ、それはそうなんだけどな。交易が不自由な間は動かせる金もそんなにないので、あり合わせの物を使ってやるしかないんだよな。
愚痴ってもしゃあないか?」
比呂「とりあえず、この新型の武器が間に合っただけでも良かったと思うぜ。
問題は、数が揃えれるかどうかって処だねぇ」
雅彦「ホンマ、ソレな」
一方、ヴィルマとイングリットの二人もこのエアガンを使う訓練を受けていた。
今回は彼女たち二人が使用してデータを集めるので、習熟してもらわねばならないからだ。
ヴィルマ「使い方は以前使ったM4と似てるのね」
雅彦「ああ。AR系と多少違うけど、慣れたらこれはこれで使いやすいと思うよ。
コンパクトで可愛いでしょ?」
ヴィルマ「…ところで何でこの銃はピンク色してるの?」
雅彦「うん、開発部の誰かが、これを使うのが若い女の子だと知って塗ったらしい。
田中技師も頭を抱えてたわ」
ヴィルマ「」
ジトーっと雅彦を睨むヴィルマに対し、無邪気に喜んでいたのはイングリットである。
イングリット「やったー!!私専用の武器ね!早速、撃ってもいい?」
いつも見えない角度から雅彦に近付いてきて、飛び膝蹴りを食らわせるイングリットが今日は珍しく大人しく近付いてきて雅彦と田中技師から構造と使い方の説明を受けていた。
田中「弾はこうやってマガジンに収めていきます。
この時、弾の先端をコチラに確実に揃えて下さい。
反対に収めても弾は発射されますが、不発になってしまいますから。
マガジン内部にバッテリーが入っていて、コチラのホルダーに入れると自動的に充電が始まります。
ここのランプが赤になれば充電スタート。
緑になれば充電完了です。
このホルダーはクルマに一つ付けておきます」
田中技師の日本語にもなんとなく理解できている様子の二人。
イングリット「バッテリーって何?」
田中「あ…、この銃を動かす元になっているエネルギーを貯めている物ですね。
電気を貯めることが出来ますよ」
イングリット「へー、凄いね。未だに“電気”が何かわからないけどさ」
田中「そのうち、電気やモーターに関してもレクチャーさせてもらいますね。
とりあえず今は大まかな造りと分解方法、使い方を教えますね」
若い美人の女の子二人に囲まれた田中技師は、まんざらでもなさそうだった。
雅彦「ゲルハルトも使いたいか?」
ゲルハルト「量産化できましたら、是非」
雅彦「へー。剣にしか興味がないと思ってたのに意外だね」
ゲルハルト「モビル◯ーツが実用化されましたら、是非」
雅彦「いや、それはネフリでアニメの見過ぎな?」
ゲルハルト「以前から不思議に思っていたのですが、映画などでバリバリ撃ちまくっているM4アサルトライフルなどは入手出来ないのですか?
あれを全員が持って撃ちまくれたら、敵がたとえ数万いても楽勝で勝てると思うのですが?」
雅彦「うーん、日本は基本的に銃器を一般人が持てないからな。
俺が持ってるベネリのM3ショットガンなどは“狩猟用”として特別に認可されている珍しい例だからな。
映画の中で使われているような連射が可能な銃は、狩猟用としては認可されないから入手出来ないんだよ」
ゲルハルト「なるほど、そうでしたか!
…思い通りにはいかないもんなんですね」
雅彦「そうだけど、簡単ではないだけで方法はいくらでもあるんだよ。
今回の電動エアガンで成形炸薬弾を撃ち出す武器もそうさ。
今の日本で手に入る物と知識と技術でなんとかすれば良いだけさ。
だけど剣を持たなくて良いって訳じゃない。
この世界でのメインウェポンはやっぱり剣と槍と弓矢なんだよ。
銃などは補助でしかないんだ。
だからこれからも剣術はしっかり磨いてもらわないといけないね」
ゲルハルト「そういうことですか、分かりました。
なら我々もタカシサンに剣術で勝てるようにならないといけませんね」
雅彦「おう、貴史に一発入れれた奴には、俺が酒を一晩奢ってやるからしっかり頑張ってくれよな」
ゲルハルト「」
結局、貴史に剣で一発入れることが出来る人はマルレーネも含めて誰一人居なかったのであった。
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