第34話 窮地と勘違い
砦跡の地下一階で、囚われたパルネは瀉血を受け入れて、男たちの言われるがままに血液を採取されてしまった。残るはクララはその様子に怯えて取り乱してしまう。
「イイヤ――――――!」
「ククククッ。いいぞいいぞ、そうこなくっちゃ。もっと漏らせよ」
「暴れるお前は、やっぱり良い所に連れて行ってやろう。ヒヒヒヒ」
「やめて、やめて――!」
「う~ん。元気がいいですね」
その姿を見て、ウヌムは側ににじり寄りクララの頬へ平手をくれた。
バシッ!―― チャリチャリチャリ――。
「くあっ、ぎゅう――」
平手をもらい、倒れたクララをさらにウヌムは足で背中を踏みつけた。
「どうです。もっともっと、してあげますよ。ヒヒヒ」
「いた――い――!。……やめて! もうやめて!」
石床に腹ばいにされたクララは、手足をばたつかせて必死に訴えた。
「やめなさい! それでもあなたは人ですか!」
そう、パルネが声を上げたのだ。
「ほお、シスターあんたも殴られたいかい」
ウヌムは、後ろのパルネを睨んでいたが、デュオが止めに入る。
「もうよせよ。ウヌム。早く終いにしよう」
「おや、あなたが止めるとは。まさか、それが気に入ったのですかね?」
「そんなんじゃない。ただ、俺はそんなのが好きじゃないだけだ」
「いまさら、なに良い子ぶってるんです? まったく」
一通り会話が済むとウヌムとデュオはパルネには目もくれずに、倒れたクララに二人がかりで手足を押さえ、目隠しと後ろ手に手を荒縄で縛り上げる。必死にクララも抵抗し、悲鳴をあげて抵抗したが、男二人に敵うはずもない。
「うるさいですね。縄で猿ぐつわもしますかね」
「ぐううう・うんくう」
――やめて、助けて、アレク……。
あっという間に、クララは手の自由を失うが、それでも必死に抗っている。
「フフフ、しょんべん臭くても生きがい良いですね。どれ足も縛りますか」
ウヌムは、嬉しそうだった。
「もうそこまでにして! こんなひどい事をしては、神がゆるさないわよ」
パルネが、たまらずに訴えた。
「神~? 残念でした。私は無神論者なんでね。
ただ、知りたいだけですよ。いろんな真実をね」ウヌムはこう答えた。
「……さあ、もういいだろ」デュオが呟くとウヌムもそれに呼応した。
「ぐうかううう・うんくう」
と声にならない必死のクララを脇にかかえると牢屋を後にする二人。
一人取り残されたパルネは、顔を伏せて唇を噛みしめていた。
クララと二人の伝者は、牢屋から通路を挟んだ一つの部屋に入った。そう、人を拘束する寝椅子のある部屋だった。
デュオとウヌムは手早く、クララを寝椅子の拘束具に、手を縛り足を広げ動けないように固定してゆく。クララの着ているブラウスから白い太ももが剥き出しとなっている。
「へへへっへ。いい格好だ。ククククッ」ウヌムは嬉しそうにその姿をみている。
「くうかううう・うんうん」
と必死に声を漏らすクララだったが、もうどうしようもない。
――いや――・・・・・・。
自分が辱められているのが解ったクララは、絶望しそうになった。
――犯される! ――こいつらに私が!
体が震えてくる。訳の分からない恐怖がクララを支配して行く。
「まだ騒ぎますか、ここに早く慣れてくださいよ。
3か月もすれば、また子を生みに来るんだから。……化物の子をね」
ウヌムは、クララの耳元でそう囁やくと小刀を取り出し、刃を腕の静脈にあてた。
「うん、良く出ますね。生きがいい。きっといい子を孕めますよ」
とウヌムはとても嬉しそうだった。
――化け物!? ――孕む!? ――もう嫌だ~~~~~~~~~!!
暗い部屋の中にクララの声にならない慟哭が響く。
◇◆◇◆
その頃、ルナの一行は再び馬車に乗り、砦跡へと急いでいた。
すでに、道はかき消えてしまい、ガスパルがたまに見るコンパスが頼りとなっている。いまだ、森の姿は見えずに丘陵や林の脇を通り過ぎて行った。
「ルナ、どうしたの?」アレクが声をかけてきた。
「う~ん。なんだか胸騒ぎがするの」
「やっぱり、魔法使いは違うね。何か感じるの?」
「バカ、それは言わない約束でしょ」
そんなやり取りの中でも、ルナは胸中に不安を感じているとインフィニティが通心してくる。
……早くしないときっといけない。そんな気がする。
……ルナ、パルネって子が心配なんだね。
……もちろんよ、大切な人だもの。
……へえ、どうして?
少し思考が止まったルナだが、インフィニティには隠し事は出来ないよねと再開する。
……あのね、2年前に私は修道院に拾われた。
その時に何もわからない私の世話を焼いてくれたのがパルネ。
初めて会った時は、もっと年上かと思ったけどそんな事もなく、
優しく接してくれたんだ。
私はとっても嬉しくて、いつもありがとうって言ってたの。
……ふううん。優しいのか。ルナはパルネの事、好き? 愛してる?
……いやだなインフィニティったら。
そうね、いままで深くは考えたことなかったけどね。
大好きだよ、パルネの事。
……いつも一緒で楽しかったんでしょうルナ。
……ふふ、そうそう。パルネといると安心したわ。ちょっとエッチだけどね。
……エッチてなに?
……ばばっばか。何聞いてくんのよ。もう知らないから。
アレクは、黙ったままで、急に顔を一人で赤らめているルナを見ていた。
きっとルナは、友人の救出に向けて燃えているに違いないと思った。
ガタガタと揺れながら馬車は進む。
読者の皆様から「ブックマーク」を頂けたり、下段の「☆☆☆☆☆」のご評価がとっても励みになります。




