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『慈愛の王妃 アゼリア物語』 〜なんで本の主人公に!?こんな本、ぶっ壊してやるっ!〜  作者: てちてち


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 ーーーーーー三ヶ月後。


 家の売却も済み、使用人達の新たな勤め先も決まり、私達は領地へと帰ることになった。


 ガランとした家をトビーと見て回った。


「姉上、領地に行ったら何をするの?」


「私ね、お祖父様に剣を習いたいの。お祖母様は色んな事が出来るから、それも学ぶつもり。そしていつかこの国を出て、違う国で暮らすつもりよ」


 今までほとんど家の中に閉じ込められていたから、外の世界が見たいのだ。


「僕も一緒に行く!ずっと姉上と一緒にいるよ!」トビーが私の手をギュッと握り、真っすぐな瞳で見つめてくる。


 何か照れるな。でも嬉しい。


「うん、これからたくさん楽しい事をしようね。一緒に!」


 二人で笑い合い廊下を歩いていると、お祖父様が「出発するぞー」と呼びに来た。


 私達は馬車に乗り「皆、元気でね」と、使用人一人一人に別れを告げた。


 私はワクワクと、心が騒ぐのを止められなかった。


 この世界に来て、初めて息をしている気がした。


 本の内容と明らかに違う毎日を、これからも送るのだ。


 何が起きるか分からないが、全力で人生を楽しみたいと思う。


 領地に着き、お祖母様であるフェリシアが出迎えてくれた。


 母フリージアにそっくりだ。


 私をギューッと抱きしめ「お帰りなさい、アゼリア。会いたかったわ」と微笑んでくれる。


「お久しぶりです、お祖母様。ただ今戻りましたわ」




◆◇◆◇◆◇



 私達は数年を領地で過ごした。


 その間にお祖父様は、遠縁の男に爵位を押し付けることに成功した。結局は身代わりを立てたのだ。


 国を変えるのはムズカシイ…


 そして、三日月のペンダントが私の首から外せなかった。なぜだ。


 私はペンダントを着けたまま、生涯を過ごすことになる。ワケワカラン。



 私達はそのタイミングで隣国へ引っ越した。


 お隣の国には色んな人種がいて、冒険者ギルドがあったのだ。


 お祖父様とヒューイと私とトビーは、早速冒険者登録をして四人でパーティーを組んだ。


 お祖父様とヒューイの剣士としての腕は確かだったし、サクサクとランクが上がり私達は最速でSランクパーティーになった。


 少々ズルをしている気分だったが。


 私とトビーもがんばったのよ?個人でもAランクまでは行けたけど、その先は中々上がらなくて悔しかったわ。


 隣国を自由に楽しんでいたのは、他の皆もだった。


 お祖母様は、マナー講師として引っぱりだこになった。


 マーサはメイド育成の教師として、多数の貴族から声が掛かった。


 ジェロームとトーマスさんは、家の中を守ってくれた。大きな家を買って、皆で一緒に暮らしたのだ。


 私とトビーは、18才になった時結婚した。


 そしてジェロームとマーサも結婚した。


 ヒューイは…、まいっか。


 トーマスさんは「女はもうコリゴリです」と言っていた。


 私達に子供が産まれた時は、ジェロームとマーサとトーマスさんとで取り合いになるほど世話をしてくれた。


 男の子と女の子が産まれて、私とトビーも目一杯可愛がった。




◆◇◆◇◆◇



 隣国に来て十数年が経った頃、元の国の噂話が聞こえてきた。


 まず、貴族の奥様達が夫を追い出し始めたと言うのだ。追い出されたのは全員入り婿らしい。仕事もせず資産を散財し愛人を囲う。


 今まで黙って耐えていた女達が、声を上げ始めた。


 それは王家にも話が飛んだらしく、王妃が「女性にも地位の確約を。出来ぬと言うのなら、私は離縁して実家に戻ります」と。


 あの国王も王妃に仕事を振って、自分は側妃の部屋に入り浸りだったとか。


 本で私と結婚するハズだった王太子は、余りにも公務のサボり方が酷く、王妃の怒りを買い離宮に閉じ込められたらしい。今だ独身。王族なのに。


 バーナピーはやはり捕まって、一生牢の中。ミザリーは私への恨みを吐き散らし、頭痛にのた打ち回って心を病んだとか。


 アーチーは知らん。


 ウチで働いていた使用人達が、巷でバラまいた話が花開いたのかしら。


 ちょっと時間は掛かったけど、皆さん“ざまぁみろ”ですのよ。


 やがて多くの時が経ち、皆を見送ってひ孫も大きくなった頃、私も静かに見送られた。




◆◇◆◇◆◇



 毎日楽しかったな。次の人生も楽しく過ごせたら良いな。


『ハイハイ、お疲れ様でした。本の主人公になってみて如何でしたか?』


 えーっと、どちら様で?


『私、慈愛の王妃 アゼリア物語の作者で女神ですぅ。初めまして、〇〇ちゃん』


 あー…それはそれは…。申し訳ない事をしまして…。ソレ前世の名前?覚えてないや…


『良いのですよ。〇〇ちゃん、熱心な読者さんでしたからね〜。つい嬉しくてこちらに転生させて頂きました。私の作品を一番読んでくれたのが〇〇ちゃんなのですよぉ。ありがとうございました。ただ…、本の通りの人生を送ると思っていたのに、まったく違う人生を送るとは思いませんでしたぁ。』


 そうですよね〜、スイマセン…。元の本はどうなりましたか?


『もちろん消滅しました。しかし!新たに作品を書き上げ、自費出版しました!パチパチパチパチ… 〇〇ちゃんを主人公にして、本の主人公に転生して本の内容と違う行動を取り別の作品に作り上げる!きっと〇〇ちゃんのような、熱心な読者が現れると思います!私はたった一人でも読んでくれる子がいれば、それで満足なのですぅ!』


 ええぇ〜、私の話なんて誰も読みませんよ…。


『そして本の題名ですが…「隣のざまぁは密の味 〜波瀾の少女 アゼリア物語〜」で如何でしょう?良い題名でしょ?』


 そうですか…。がんばって下さい…。


『実はお知らせが一つありまして…。アーチーなんですが、アレ社長の甥っ子だったんですぅ〜。』


 ハァ!?本当ですか!?


『彼、あなただと気づいていたかも知れません。近付こうとしなかったでしょ?』


 そう言えば…。くっそー、ぶん殴っとけば良かった!!


『鉱山送りにしましたから、十分でしょう』


 はぁ〜い。ふんっ、ざまぁみろだ!


『〇〇ちゃん、私の書いた本はまだまだたくさんあるのです!次はどの本が良いですか?ご要望を聞きますよ?』






 あの、女神様…?



 勘弁して下さいっ!! 






                 =完=



お読み頂きありがとうございました。

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