Episode 23 秋人視点⑤
15時12分00秒、帰りの挨拶が終わり、俺は帰宅する準備を始めた。
今日は初めての環境で凄く疲れている感覚があった。……帰ったらすぐ寝るか。
俺はふと隣にいる野上さんを見た。
野上さんは既に帰る準備が出来ていて、今まさに歩き出そうとしていた。
「あ、野上さんちょっと待って!」
俺は咄嗟に口を開いた。
野上さんは俺の返事に答えたのか、そっと振り返って会釈をした後、廊下に出て行った。
……急いで準備して追いかければ間に合うな。
俺は筆箱をバックに入れ、忘れ物がないか確認してから、急いで教室を出る。
間に合え、間に合え。
俺は全力で階段を下っていき、昇降口に着いた。
そしてそこには、しっかりと野上さんの姿があった。が……。
野上さんは、下駄箱を見ながらなぜか立ち尽くしていた。
俺は野上さんに近寄り、声を上げた。
「あ、追いついた! ん? 野上さん、どうしたそんな難しい顔して、って、何だこれ? 何の花だ?」
野上さんの視線の先を見てみると、謎の花がローファーの上に置いてあった。
「これはたぶん、マリーゴールド」
マリーゴールド、名前だけは知ってるけど、実際に見るのは初めてだ。
「へー、野上さんこれ誰かからのプレゼントじゃない? スタイルいいしやっぱりモテるんだなー!」
そうじゃなかったら下駄箱に花を入れる理由がわからない。
「プレゼントだったらこんな雑に置かないわよ、何か袋とかにいれるんじゃない? もし仮にプレゼントだったとしたらそんな非常識な人と関わりたくないわ」
確かに、俺だって野上さんにプレゼントをあげるならこんな雑にしない。……じゃあなんで?
「そ、そうか……じゃあなんで?」
「それは私が知りたいわ」
「なぁその花どうするんだ?」
「この花、秋人くんにあげる」
「え? まじで!?」
その言葉を聞いた瞬間、俺は心の中でガッツポーズをした。
「ほかに処理する方法がないから仕方なくね」
野上さんはローファーの上に置いてある(たぶん)マリーゴールドを手に取り、俺に渡してきた。
「はい、上げる」
どこの誰がどんな目的でこの花を野上さんの下駄箱に忍び込ませたのかは知らないけれど、その人に俺は深く感謝した。
そして俺は満面の笑みを浮かべて、口を開く。
「おお……せんきゅ! 大切にするわ!」
「あ、ちょっと待って、野上さんって電車通学?」
門へと向かう最中、俺は野上さんを先に行かせない様積極的に話しかけた。
「そうだけど」
「じゃあさ、俺の自転車の後ろ乗らない?」
俺は出来るだけ自然に自転車の二人乗りに誘った。
「二人乗りは違反になるので無理です」
「そうだったのか!?」
あ、やっぱり駄目か、違反ならよくないな……じゃあ並走するか。
「じゃあ、駅まで並走するわ! 俺自転車だし!」
「ご自由にどうぞ」
よし! 俺は心の中で本日2回目のガッツポーズをした。
俺は自転車に乗り、野上さんの背中を追った。
少しスピードを出して、野上さんの真横に来ることが出来た。
「今日はありがとうな、新しい学校で不安だったけど、野上さんがいてくれてよかったわ!」
俺は正直に思っていることを話した。
「……そう」
野上さんは、俺の方を向かずに返事を返した。
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