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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第十章 夢幻泡影

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148 ロストグリモワールの使い方

 結局メイリアが話そうとしたことは聞けなかった。

 まぁ、急ぎの用事でもないのだろう。


 メイリアはリリスを引っ張って、自分の部屋に連れて行ってしまったしな。

 服のことで騒いでいたが、リリスはそんなに興味ないように見えた。


 蒼いワンピースか・・・。



「あ、おにい」

「美憂?」

 前から歩いてきた美憂に声を掛けられる。


 なぜか、アドラメクと一緒にいた。

 アドラメクは太陽のような赤い髪を持つ、貪欲の魔神だ。

 背は高く、顔立ちの整った人間に近い容姿をしている。


「なんか意外な組み合わせだな。つか、アドラメク、戻ってきていたのか。魔界を散歩してたんじゃないのか? どうせ、また、女遊びでも・・・」


『俺、美憂ちゃんのこと気に入っちゃってさ。こんな可愛い子見たことないって』


「は!? 美憂・・・ちゃん・・・?」

 腹の底から声が出た。


『もちろん容姿だけじゃない。綺麗な魂だ。穢れやすい人間の魂なのに、一切の曇りがない。彼女こそ絶世の美少女だよ。初めて見るなぁ、こんな美しい魂は・・・』


「いやいや、そんなわけないし・・・私だって腹黒いこと考えたりするもん。さっきからほ、褒めすぎで、えっと、おにい、そんなんじゃないから」

 美憂が顔を赤らめて首を振っていた。


「アドラメク」

 反射的に美憂とアドラメクの間に入る。


『いいじゃん。厳しいなぁ』

「美憂に手を出したら殺すぞ」


「ちがっ・・・そうじゃないって」

『それは美憂ちゃんの気持ち次第じゃん』

「美憂はまだ中学生だ! 未成年だからな!」


『未成年? あぁ、人間はそうゆう決まりがあるんだよね。でも、俺は魔神だし恋愛に年齢は関係ないよね? 美憂ちゃん』

「あ!」

『魔神は嫌いかい?』

 アドラメクが俺を避けて美憂の顎に手をあてる。


「・・えっと・・・あの・・・・」

「美憂、こっちへ来い」

 しどろもどろする美憂を強引に引っ張った。


 ― デドラギルド ―


 ゴオォ


「おぉっと」

「ひゃっ」

 人差し指から、黒い閃光を走らせる。

 ひらりと避けたアドラメクのマントの裾から煙が出ている。


『げ、サマエル・・・裁きの閃光じゃん。その魔法、人間の姿でも使えるの?』

 アドラメクが擦り切れたマントを見て、顔色を変えた。


「まぁな。お前みたいな遊び人、美憂に近づかせるかよ」

『そんなことないって。マジで惚れたんだよ。美憂ちゃんの兄なら、美憂ちゃんの魅力がわかるだろ?』

「だから言ってるんだ。美憂は純粋で信じやすいんだよ。絶対、認めないからな」

 アドラメクを睨みつける。


「おにいっ・・・・」

「・・・・・・」

 美憂を無視する。


『マジか・・・サマエルは手ごわいね。でも、遊びじゃないよ。この愛は本物だからね。いつか証明してみせる』

「へぇ・・・よく言うよ」


『美憂ちゃん、今度はサマエルのいないところで会おうね。呼ばれたらいつでも美憂ちゃんのそばに行くから、心配しないでね』

「え・・・・・」

 アドラメクが美憂に投げキッスをして飛んでいった。


 まさか、本当の敵がこんなところにいたとは。

 あいつだけ魔界へぶち込む方法もないわけではないが・・・。


「ねぇ、おにいってば」

「美憂」


「本当にそんなんじゃないのに。アドラメクは夕食の仕込みを手伝ってくれたんだよ?」

 美憂が顔を赤らめながら両手を振っていた。


「ちょっと距離は近いけど、悪い人じゃないよ・・・たぶん、あ、魔神か・・・」

 視線を逸らして、髪で頬を隠す。


「本当にそれだけで・・・」


 ・・・厄介な奴に好かれたな。


 でも、ここで無理やり引き剥がしたら、兄としての威厳も保てなくなる。

 呼吸を整えてから口を開く。


「美憂、あまり強引に来る男を信用する・・・・・」



 キャー!!!!!!!!!!!



「!!」

 はっと後ろを振り返る。

 ルナリアーナの悲鳴だった。


「おにい、今!!」

「あぁ、こっちのほうからだな」

 すぐにルナリアーナの声が聞こえたほうへ走っていく。

 

「ルナリアーナ!!」


「あ・・・・・」

 部屋のドアの前に立つと、思わず袖で鼻を覆った。


 じめじめとした息苦しい魔力。


「カイト・・・様・・・」

 真っ黒の人型の者たちがドロドロとした闇の中から出てきていた。

 ゆらゆら揺れながら赤い目を光らせる。


 "成れ果て"の魔女、ヴァーシル家の女たちだ。


「急に、どうしたの? ママ」


『XXXXXXXXX XXXXXXXXX XXXXXXXXXXX』


「ママ、わからないよ。カイト様、私、召喚していないのに勝手に出てきちゃって。落ち着いて・・・みんな、どうしたの・・・・?」

 ルナリアーナが必死になだめようとしている。


『XXXXX XXXXXXXXXXXXX XXXXXXX』

 ルナリアーナの腕を掴んで、何かを訴えているようだ。

 赤い目がぎろりとこちらを向く。


「おにい、どうすれば・・・?」

「美憂はリリスとメイリアに今の状況を伝えてくれ。すぐに・・・わかるはずだ。あと、増援は不要だと言っておいて」

「え? う・・・・うん。おにい、大丈夫なの?」


「問題ない」

 美憂に伝えると、頷いて部屋のドアを閉めた。


「来栖まりなはどうした?」


「・・・・私ならここよ」

 来栖まりなが、半分体が闇に染まりかけていた。

 額に汗を浮かべて、自虐的に笑う。


「全く、魔法少女でもないのに、取り込まれそうになるとは・・・ルナリアーナは無事なのにね」

「ごめんね! すぐ、鎮められなくてごめん! でもどうしたらいいかわからないの!!」


 ルナリアーナが半泣きになりながら声を震わせていた。


「黒い心だけが浮き上がってくる。どうして、ルナリアーナだけってね」

「まりな!!」

「私だってヴァーシル家の者なのに、魔法少女にもなれず、闇落ちするしかないなんて。ホント、サイアク。ルナリアーナだけ、どうしてルナリアーナだけ・・・・」

 恨みの言葉を吐く。

 まりなの目は赤くなりかけていた。


 ロストグリモワールを開いて、ルナリアーナに近づいていく。

 襲い掛かってこようとする魔女を睨みつけると、固まっていた。


「魔法少女戦争の最終決戦が近づくにつれて、"成れ果て"の魔女たちはうずくんだよ」

「カイト様、それってどうゆう意味・・・?」


「ロンギヌスの槍が主を決めた、ってところだろう」


 指で文字に触れる。

 ロストグリモワールの文字が光りだして、文章が入れ替わっていく。


 何かに導かれているようだった。


 ロストグリモワールは禁忌魔法の魔術書や、魔法少女戦争のための本ではない。


 失われた神々の名が、ロストグリモワールの本来の使い方を・・・。


 ― XXXXXXX XXXXXX XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

    XXXXXXXXXXXXXX XXXXXXXXX XXXXXXXXXXXXXX ―


 書いてある字を読み上げる。

 

 しゅううぅぅぅぅぅぅぅうううう


 月の女神セレーヌのための祈りの言葉だった。


「え・・・ま・・ママ?」

『ルナリアーナ』

「ま・・・ママ、苦しくないの?」

 ルナリアーナが目を潤ませて顔を覆っていた。


 闇が溶けて、ルナリアーナと顔立ちの似た女が現れる。

 体はところどころ崩れた人形のように欠けていて、消えていきそうになっていた。


『まりな』

「お母さん・・・?」

 来栖まりながその場に崩れそうになりながら、声をかけた女のほうへ近づく。

 闇は消えて、瞳も元に戻っていた。


「元の姿に戻れたの? どうして? ママ、何か言って・・・」

『・・・・・・』


 ヴァーシル家の者たちが10人程度、元の姿に戻っていた。

 彼女らの体は、電子世界に漂う魂で再現されているだけだ。


 すぐに消える運命にある。



 サアァ


 夜風にカーテンが揺れて月明かりが差し込む。

 月の女神セレーヌが、ぽつんと立っていた。


 白く輝き、穏やかにほほ笑んでいた。


「セレーヌ」


『サマエル、ありがとう』


 セレーヌがふわっと浮かんで、ヴァーシル家の者たちの前に降りる。

 ルナリアーナの表情が曇っていった。

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