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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第十章 夢幻泡影

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147 魔法少女配信の日常

 談話室のソファーで横になりながら本を読んでいた。

 フィオーレとアクアたちが配信している。


「今日は僕、アクアと」

「フィオーレでお送りしました。あ、リルムもいるよ。映って映って!」


「えーっ今度にして。お風呂上がりだもん」

 リルムが髪をタオルで乾かしながら談話室に入ってきた。


「お風呂上りじゃ仕方ないね。リルム推しの人たちは、ごめんね。今日はありがとう! 今度はリルムも配信するね」

 フィオーレがモニターに向かって手を振りながら、接続を切る。


「ふぅ・・・・」


 アクアとフィオーレが同時に力を抜いた。


「お疲れ。配信も随分慣れてきたな」

「そう、同接3万が当たり前になってきた」


「は!? 3万!?」

 思わず、本を落としそうになる。

 

「魔法少女の母数が劇的に減ったこともあるの。他の魔法少女の配信に行ってた人たちが入ってきてる。配信しなくなった魔法少女は、きっと魔法少女戦争で負けた子たちだと思う」


「僕らの配信でも○○ちゃんどこ? とか、聞かれるもんね。全部わからないって流してるけど」

 アクアがハーブティーを飲みながら言う。


「なるほどな」


「アンチも多いのよね。特にいなくなっちゃった魔法少女のファンだった人とか」

「僕らに八つ当たりしても仕方ないのに」


「みんな、あたしたちをゲームの登場人物としてしか見てくれない。ひどい言葉ばかり言うんだよ。顔が見えないからって」

 リルムが髪をとかしながら、頬を膨らませた。


「でも、僕らの魔力は上がってるんだよね」

 アクアが指でシャボン玉のような気泡を浮かべた。


「これは回復魔法の一つなんだけど、傷を癒すだけじゃなく回復もできるようになった。ずっと挑戦してたんだけど、うまくできなくて」

「アンチもいるから魔力も半減するかな? って思ったんだけど、私も火力が上がってた」

 フィオーレがクッキーを口に放り込む。


 配信を重ねるごとに、魔法少女たちの魔力は向上していた。


 推し=信仰か・・・。


「最近、魔法少女が全然現れないのよね」


 ティナがラフなジャージを着て、リルムの横に座った。


「ティナ!!!!!」


「く・・・苦しい・・・」

 フィオーレが抱きつく。


「大丈夫なの? 眩暈は?」

「もう大丈夫。まだ、魔法を使うのはメイリアに止められてるけどね」

 フィオーレがほっとしたような表情をした。

 

「まぁ、この分だと3日後には魔法も使えそうだな」


「・・・・うん。しばらく魔法使ってないから心配だけど」

「使い方なら僕が教えてあげるー」

 アクアが前のめりになって主張していた。


 ティナの顔色はよく、まとっていた穢れは不思議と一切なくなっていた。

 誰かが、清めたような感覚だ。


「ファナもノアも行方がわからなくなって・・・ティナもどこかにいなくなっちゃったらどうしようかと思った」

 リルムが潤んだ目を擦っていた。


「魔法少女も減ったけど、僕たちの仲間も減ったもんね」

 アクアが周囲を見渡した。


「・・・そうね・・・あの子たちの分も頑張らなきゃ」

 ティナが両手を握り締める。


 時空間に閉じ込めたファナは、まだ"成れ果て"にはなっていない。


 でも、ティナ以外には、ファナの行方を伝えていなかった。

 変に不安を煽りたくなかった。


 モニターを出してスクロールする。

 2週間程、行方不明になっていた花音は、普通に配信していた。


 ナナキが三賢の呪いを気にして連れて行ったのか、わからない。

 こちらからの通信は遮断されていた。


 でも、画面越しの花音は、紛れもなくいつもの花音で安堵していた。


 少し、引っかかることは、あるけどな・・・。


「花音の配信、大人気だよね」

 エメが眼鏡のレンズを拭きながら言う。


「この薬草の知識、エメが教えたのか?」

「うん。でも、花音が配信している中庭? ここは初めて見る場所だね」

「あぁ・・・・」

 花音は花壇から摘んだ薬草の調合を紹介していた。


 同接は最大4万近くあるらしい。

 アンチもいるが、うまく受け流しているようだった。


「花音が居なきゃ、なんだか寂しいな」

「話し相手がいないか?」

「そ、そうじゃないよ・・・花音ってほら、太陽みたいでしょ? だから一緒にいて居心地がいいんだよね」

「確かにな・・・」

 エメが手を後ろについていて、足首を動かす。


「あははは、いい質問だね。ん? 血の味? そうだなぁ、フルーティーな感じかな?」

 ラインハルトが足を組んで、一人で配信していた。


「つか、なんでラインハルトまで配信してるんだよ」

「私たちの配信に一瞬だけ映ったことがあって、女子人気がすごいの」

 フィオーレが小声で耳打ちしてくる。


「ほら、見て」

 リルムがモニターでラインハルトの配信を映す。


 同接1万・・・。


「・・・・・イケメン吸血鬼ラインハルト様・・・・」

 思わずコメント欄を読み上げてしまった。


「ラインハルトは普通に話してるんだけど、なんかミステリアスに映るみたいで」

「ラインハルトに関しては二次創作漫画まであるんだよ。BLだけど、検索する?」


「いや、辞めておく・・・」


 美憂には毒でしかないな。

 絶対に見せないようにしなければ・・・。




「ねぇ、カイト、ちょっと話があるの。いい?」

「おーけー」

 メイリアが話しかけてくる。

 モニターを消して、本に栞を挟んでソファーに置いた。


「あ、カイト!」

 立ち上がって、アクアの声に振り返る。


「フィオーレ、アクア、夜食はほどほどにしろよ」

「!!」

 配信が終わって、お菓子を食べる手が止まらなかった。

 フィオーレが口いっぱいにクッキーを含んでこちらを見上げる。


「そ、そ、その分動いてるもん! ねぇ、アクア」

「そうそう。今日もたくさん模擬戦闘したんだよ! カイトが見てなかっただけだから!」


「じゃあ、いいけどな」

 ひらひら手を振って、談話室を出ていく。

 メイリアが後ろから速足でついてきた。




「・・・へぇ、こんなところあるんだ」

「ただの倉庫だよ。古い本とか置いてるから、俺は結構好きでね。廊下だと落ち着かないだろ」

 倉庫の明かりをつける。


 埃被った本の中には、一生丸ごと欠けているものもあった。

 軽く埃を払って本棚に寄りかかる。


「で? 話ってなんだ?」

「カイト・・・ロスト・・・・」


 キィッ・・・・・


 ドアが開く。


「何話してるの?」

 黒いローブを着たリリスがドアの前に立っていた。

 メイリアが口をつぐむ。


「リリス」

「どこ行ってたんだよ。探したんだぞ。連絡もつかないし」

「あはは、ごめんごめん。新しい魔法覚えるのに練習してたら、集中して、時間の感覚が麻痺しちゃって」


「ったく・・・・・・」

 リリスが頭を掻いて、舌を出した。

 腕を組んで息をつく。


「今更、リリスが知らない魔法なんかあるのか?」

「魔法はどんどん生み出されるんだよ。知らない魔法なんかいっぱいあるんだから。特に、私は回復系が苦手だからね」

 リリスが部屋の中に入ってきて、すぐ横の本棚を眺めていた。


「あ、ごめん。カイトとメイリア、話し途中だったよね? 私がいると話しにくいかな?」

「ううん。そんなことないよ。むしろいてくれたほうが心強いな」

 メイリアがリリスのほうを見て笑いかけた。

 

「・・・・・」


「ん? どうしたの? カイト」

「・・・・いや、何でもないよ」

 本棚の本を一冊手に取る。


「そうだ! 蒼いワンピースのリリス可愛かったよね。やっぱりリリスは蒼が似合うと思ってたの」

「へ?」

「ピンクと蒼で本当に迷ったんだ・・・美憂はピンクって言ってたけど、私はリリスには絶対、蒼って思ったの! 動画撮っておけばよかったなぁ」


「そ、そうかな・・・?」


「そうだよ! リリスが魔力の関係上、黒いローブを着るのもわかるけど、たまには華やかな服を着るのもあり。だって、魔法少女なんだから!」


「え・・・・・」

「リリスは自分が思っている以上に可愛いんだよ! 可愛い服だって似合うの!」

 メイリアが急にリリスの手を握って話し始める。


 長くなりそうだ。

 ページをめくって、目次を読んでいく。


 困惑するリリスに、メイリアがリリスの可愛さについて力説していた。

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