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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第八章 デウスエクスマキナ

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122 取捨選択

『ノアのことは忘れろ。サマエル』

 スプンタ・マンユは一通り聞いて、ため息交じりに話した。


「契約した神がそんなこと言うか?」

『契約した神だからわかるんだよ』

 電子の神スプンタ・マンユが画面越しに話す。


『神は地にあらず、冷静に物事を見つめなければいけない。にしても、魔界の王であるサマエルが感情的になるのは珍しいな』

「今は人間だからな」


『どちらにしろ、お前の目的はなんだ? ノアを救うことか? 魔法少女戦争を止めることか?』


「・・・・・・」


『目的を見失うな。また繰り返すぞ』

 スプンタ・マンユが低い声で言う。


『まぁ、ノアが”死者の楽園”でノクスと遭遇するのは誤算だった。デウスエクスマキナの考えはわからないけどな』

「ねぇ、デウスエクスマキナはどこにいるの?」

 カマエルがソファーから身を乗り出していた。


『知らんが、お前らならわかるんじゃないのか?』

「人間になってからそうゆう勘所は鈍いんだよね。ま、俺はエリンちゃんが幸せそうならそれでいいんだけど」

 腕を組んで椅子に座り直す。

 ノアが消えていく姿が頭に焼き付いて離れなかった。


『サマエル、ノクス=リベルからロストグリモワールを渡されたんだろ?』

 スプンタ・マンユが俺が握り締めていた本を見ながら言う。


「あぁ」

『失くすなよ。それが最後のロストグリモワールだ』


「当然だ・・・・・・」

 メイリアが持っていたものよりも、重厚感がある。

 人間であるノクス=リベルが持っていたこと自体、奇跡に近いな。


「な・・・失くしたらどうなるの?」

 ロータスが不安そうに、モニターに話しかける。


『太古の神の存在は消える』


「え・・・消えるって、比喩とかじゃなくて」

「消えるだろうな。ロストグリモワールに残らないなら、信仰もない。信仰がない神は、消えるしかない」

「そんな・・・・」

 ロータスの表情が曇った。


『ったく、最後のロストグリモワールがよりにもよって、魔界の王に渡るとはな』

 スプンタ・マンユが頭を抱えた。


『これも仕組まれたことなのか・・・』

「ただの偶然だろ」

『ロマンがないなぁ。これだから魔界は根暗が多い』


「そもそも、電子の神がロマンを語るなよ」

 瞼を重くして、スプンタ・マンユと話していた。


 ジジ ジジジジ


『お時間です。では、接続を切らせていただきます』

 突然、AIのルルが現れて、画面の前に魔法陣を展開していた。


「まだ話の途中だ。ノアとノクスのことも聞きたいしな」


『ノアが魔法少女ではなくなったという時点で、私の管轄外になりますから。これ以上の会話は無意味と判断しました』

 ルルが淡々と話して、画面に手を置く。


『デウスエクスマキナも冷たいねぇ』

 ルルが表情一つ変えずに、スプンタ・マンユのほうを見る。


『統制するのが私の役目となります。スプンタ・マンユ様が契約した魔法少女で、弾かれたのはノアだけと確認しております。他に異常はないと判断されました』

『ハイハイ』

 スプンタ・マンユがため息をついた。


『では、失礼します』

『あ・・・』

 

 バチンッ


 スプンタ・マンユが何か言いかけたが、強制的に画面を切られた。

 同時にルルも消えていた。


「まさかここでノアが離脱するとはな・・・追うか」

「どうやって?」


「魔法少女研究機関に乗り込む、とか・・・」


 背もたれに寄りかかて、天井を見る。

 葛城さんをうまく使うか。いや、俺が行ければいいんだけどな。


「サマエル」

「なんだよ。カイトって呼べっつってるだろ?」

「いや、サマエルに言うんだ」


「!!」

 カマエルが強い口調で言って、胸倉を掴んできた。


「会った人間すべてを救うなんて無理なんだよ。神だろうと、な」

「わかってるって・・・でも、ノアは七陣魔導団ゲヘナの・・・」


「リリスをこれ以上苦しめないために、割り切れよ。魔法少女研究機関で、万が一カイトに何かあったら、リリスの魔法少女戦争は終了だ!」

 語気を強めた。

 カマエルが手を離して、視線を逸らす。


「少なくとも、俺は選んできた。泉の女神エリンちゃんを守るために」


「・・・!!」

 はっとしてカマエルの目を見る。


「まさか、お前・・・知ってるのか?」

「・・・・エリンちゃんには言うなよ」

 背を向けて、剣を出していた。


「あー、なんかむしゃくしゃするから、その辺の雑魚狩ってくる」

 カマエルの魔力が乱れている。

 剣を持って、部屋から飛び出すように出て行った。


 エリンが女神から人間になった本当の理由を、知ってるのか?


「・・・・・・」


「サマエル、大丈夫?」

 ロータスが目をうるうるさせて、顔を覗き込んでくる。


「そうだな・・・しばらく一人にしてくれ」

「待って」

 立ち上がると、ロータスが手を握り締めてきた。


「サマエルは私が死んでからもずっと、魔法少女戦争で苦しんできたんでしょ?」

「だから、どうした?」


「わ、私に何かできないかって・・・思ってた。だって、私は魔法少女にならなかったから、魔法少女をたくさん見てきたけど・・・どんなに苦しんでるのか、わかってあげられなかった。どうしても心に引っかかっていて・・・」

 言いながら、声が震えていた。


「あの時、魔法少女になればよかったなって。ずっと後悔してたの」

 ロータスがぎゅっと目をつぶって、胸に手をあてる。

 息をつく。


「ロータス」

「・・・?」

 頬にかかった髪を耳にかけてやる。


「ロータスは十分やってくれた。昔も今も、魔法少女にならなくたって本当にありがとう。ラインハルトとアリシアの件も含めて、な」

「サマエル・・・」

「・・・あと一つ、しいて言うなら、カマエルが戻ってきたときにハーブティーを用意しててくれ。あいつもあいつで、抱えてるものがあるんだ」


「・・・・わかった」

 ロータスが目を擦って、強く頷いた。

 マントを羽織って、ロータスの家を出ていく。


 空は晴れ渡り、たくさんの花の香りがした。




『あ、おにい?』

 木の上でぼうっと、近未来都市を眺めていると美憂から連絡がきた。

 スマホをスピーカーにして、枝に肘をつく。


「珍しいな。美憂からかけてくるなんて」


『おにいが寂しがってるからメイリアが連絡してあげてって』

「あ・・そ・・・・・」

 相変わらずメイリアにべったりだな。


 魔法少女たちと打ち解けているのはいいが・・・。


『浮かない顔してどうしたの?』

「リリスから聞いてるだろ? 今、”死者の楽園”ってゲームに閉じ込められてるんだ。暇なんだよなー」


『お母さんとお父さんは・・・』

「会ってない。会ったら美憂に真っ先に連絡するって」

『・・・そうだよね。すぐ、生まれ変わらないって聞いたよ』

 

 美憂の周りがやけに騒がしかった。

 リリスたちと同じ制服を着ていて、なんだか違和感があった。


「魔法少女アカデミアではうまくやれてるのか?」

『うん! 友達もたくさんできて楽しいよ。本当に学校みたいなの』

 美憂が楽しそうに話す。


「SNSでも盛り上がってるらしいな。魔法少女アカデミアでの授業はこっちに配信されてるんだよ」

『花音もリリスも配信ランキング上位だもんね。エリンから聞いたよ』


 授業中の花音の火、水、風、地の基礎魔法は洗練されていて美しかった。 

 2人は魔法少女アカデミアの配信が行われるようになって、さらに人気が出た気がした。 


『ノアは? そっちにいるんだよね?』

「・・・まぁ、いるよ。寝てるけどな」


『早く来れるといいねってみんなと話してたの。ノアがいなきゃ、ゲームしてもババ引く人がいないって、アクアがぼやいてたよ』

「ふうん、そうか」

 嘘をついていたが、適当に流した。


 近くの落ちそうな葉を拾って、くるっと回す。


「それより、美憂、魔法少女アカデミア卒業しろよ。ちゃんと勉強はついていけてるのか?」

『大丈夫だよ! 私、魔法に関しては才能があるみたいなの。お母さんの血を引いてるからかな?』


「奢るなって。足元すくわれるぞ」


『もう、おにいは心配性だなぁ。ちゃんと卒業して魔法少女戦争に参加するって。わからない部分はメイリアに教えてもらってるから大丈夫だよ』

「またメイリアかよ」


『おにい、もしかしてやきもちやいてる?』


「んなわけねぇだろ」

『どうかな? おにいシスコンだもんね』

 美憂がからかうように笑っていた。

 美憂と他愛もない話をしていると、少しずつ気が紛れていった。

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