表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第八章 デウスエクスマキナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

144/154

118 XXXX年の魔法少女戦争の勝者

『カイト、私ね、花を咲かせる魔法を覚えたの』

「種から芽を出して花を咲かせたんだろ? さっきも聞いた」

『何回でも話したくて。あとね・・・』


「洗濯を一瞬でする魔法だろ? もう何十回も聞いた」

『だって、本に載ってないすごい魔法なんだもん。服着たまま洗濯できちゃうんだよ』

 リリスがスマホの向こうで、嬉しそうに話す。

 街を通り過ぎて海沿いを歩きながら、弾むようなリリスの声を聞いていた。


 魔法少女アカデミアは気が抜けるほど、普通の魔法専門の学校のようだ。


 学ぶのは戦闘だけではなく、基礎魔法に加え、数学や社会もやるらしい。

 クラスメイトとも仲がいいと話していた。

  

 親しくなればなるほど、魔法少女戦争に戻った時の落差が激しいのにな。

 警戒しているのは、聞く限りファナくらいだ。


 ルナリアーナは自分で作ったという服を見せてくれた。


「配信で見てるよ。魔法少女アカデミア配信。個人でもやってるだろ?」

『見てくれてるんだ。こっちからはリスナーの反応見えないんだけど、どう?』

「リアリティあって面白いって反応だな」


『そっか、リスナーには、私たちオンラインゲームのキャラみたいなものだもんね。キャラっていうと、不思議な感覚するけど』

「・・・・・・」

 リリスは順応性が高い。

 自分たちが人からどう見られているのか察するのが早かった。


「まぁ、今はあまり余計なことは考えるな。卒業しないと、魔法少女戦争に戻れないんだからな」

『わかってる。カイト・・・でも、私、これまでの魔法少女戦争の中で、今が一番楽しいかもしれない』


「は・・・?」


『自分の姿は魔法少女戦争に関わる人しか見えなかったから、すごく警戒しなきゃいけなかった。でも、この時代はこうやって人に自分を見てもらえる』

 リリスが目を細めて、スマホの画面を拭いていた。


『私をはめる罠だったとしても、ね』


「何かあれば魔界の者がいる。必要以上に気を張らなくてもいいんだからな」

『ありがとう。あ、美憂がおにいによろしくって』

「・・・ハイハイ」

 美憂はほぼ連絡してこない。

 メイリアと繋ぐと横から顔を出す程度だ。


 ・・・別にいいけどな。


「元気でやってるならいいよ。じゃあ、またな」

『あ・・・カイト・・・』



 プツン




 ザアァア


 スマホを消して、カマエルが座っている岩に近づいていった。

 手には血の流れる剣を持っている。

 波の音が大きくなった。


「カマエル」

「・・・人間ってさ、本当愚かだよね」

 カマエルが赤い剣を見つめながら言う。


「神殺しを企む奴らがさ、死んでまで俺を殺そうとしてきてんの」

「"楽園"を拒む奴らか」

「そうだよ。昔、俺に殺されたことをまだ恨みに思ってるらしくてさ。わざわざここに来て、魂を入れた肉体を持って、俺に復讐したいんだって」

「誰かのせいにしなきゃ自分を保てない魂だ」

 

 空中をなぞって、ルピスを出す。


「”楽園”なんかいらないんだろ」

「人間はこんなに醜いのに、エリンちゃんはどうして人間に優しいんだろ」

「さぁ・・・・」

 

 人間たちが群れを成して、こちらに向かってくるのが見えた。


「女神だからじゃない?」

「なるほど。じゃあ、エリンちゃんには俺がこれからすること内緒ね」

 カマエルが笑いながら、岩から降りた。


「お互い様だな」

「リリスは知ってるじゃん」

「あ、それもそうか」


 ”楽園”も退屈だからな。


「・・・・やっぱり、まだいたか」

「あいつらが悪魔の王サマエルと、断罪の悪魔カマエルだ! 人間のふりをしているが、俺の大切な者を奪った邪神だ!」

 戦闘にいる鎧を着た奴が叫ぶ。


「私の家族を奪った悪魔! 聖なる裁きを与えるためにここに立ってる」

「俺もだ!!!」

「神が何もしないのなら、俺らが戦う!」

「今はただの人間、しかもガキだ! 奪われた命の重みを思い知らせてやる」


 総勢50人ってところか。

 カマエルが先に来て殺していたのは何人か知らないけどな。


「あの時死んだ俺たちとは違っ・・・」


 シュンッ


「え・・・・?」

 ザッ


「何が違う?」

 素早く移動して男の胸を貫く。

 カマエルが剣をくるっと回して、口笛を鳴らした。


「ひぃっ・・・」

「恐れるな。冷静になれ、俺たちにはゲームのバフがある」

「へぇ、どんな?」


「うぐっ・・・・・」

 答える前に、カマエルが男の胸に剣を刺した。


 きゃあああぁぁああああ


 複数の女が、海に響き渡るような悲鳴を上げる。

 2人の死体が光の粒になって消えていくと、周囲の動揺は瞬く間に広がっていく。

 一気に防御態勢に入っていた。


「無鉄砲に来るなよ。さっき俺が倒した奴らを見なかったのか?」

 カマエルが呆れたように言う。


「学ばない奴らだな」

「違う!」

 前にいた青年が腹の底から声を上げる。


 ― 聖なる雫の輝き ―


 ブワッ


 光のドームのようなものが人間たちを包み込んだ。


「!?」

 カマエルと同時に後ろに下がる。


「懐かしい力だな」

「え、そう? 俺、覚えてないんだけど」

 地面の魔法陣が輝き、聖なる癒しの力と、防御力を押し上げていた。


 圧倒的な聖なる力を持つ者が中心にいる。



「久しぶりね。サマエル」

 白銀の髪を、赤いリボンで一つに結んだ少女・・・。


「聖女エレノア様!」

「下がってて。彼らはいくら人間だろうと束で殺せる相手じゃない。バフがあっても戦闘能力は高いんだから。みんなが復讐するなら、私が彼らを捕まえてからね?」

 エレノアが柔らかくほほ笑む。


「エレノア様」

「はい、エレノア様。ご武運を」 

 人だかりが掃けていった。


「エレノア・・・」

「うわぁ、契約神、セラフィムの誰かだっけ? セフィロトの神だっけ?」

 カマエルが軽く伸びをしながら言う。


「セフィロトのガブリエルよ」

「君がいるから、人間の態度が大きかったのか。なるほどねぇ」


「・・・・・・」

 エレノアが息をつく。

 長い杖の先には聖なる魔法石が10個埋め込まれていた。


「大昔の魔法少女戦争の勝者だもんな」


「失礼ね。ファナの前の勝者よ。そんなに昔でもないから」


 時折、儚げな表情を見せる、美しい少女だった。

 あまりの美しさに、人々の嫉妬や妬みを集め、無実の罪で殺されそうになっていたところを、ガブリエルが救い出して魔法少女になった。


 でも、エレノアは人を恨んだことがない。

 敵意を向ける人にさえ、愛を持って接していた。


「今度こそ決着をつけるから、サマエル」

「決着も何も、あの時勝ったのはお前だろ?」


「違う!!」

 声を張り上げる。


 エレノアは幼い頃から聖なる魔力に包まれていた。

 おそらく、魔法少女戦争で勝つために生まれてきた魂だ。


「あの時・・・サマエルは毒を受けていたから、私の攻撃を避けられなかった。あんなの勝ったうちに入らない!」

 目に涙を溜めながら言う。

 ゆっくりと杖を剣に変えた。


「変なところに拘るな」

「・・・どうせ暇なんでしょ? じゃあ、私との戦闘に付き合って」

「いいよ」


「え、俺は?」

「そこらへんで見ててくれ。手は出すな」

「えー」 

 不服そうな声を出す。


「はぁ・・・せっかく盛り上がってきたところだったのに・・・まぁ、いっか。見学させてもらうよ」

「あぁ」


 カマエルが砂地を蹴って、波打ち際に移動していた。


「うわっ」

 周囲にいた人間たちが、声を上げてカマエルから距離を取る。


「手は出すなって言われてるんだ。何もしないよ。ったく、さっきはあれだけ威勢がよかったのに」

 カマエルが剣を消して、手を挙げた。


「!?」

「まぁ、そっちが何もしてこなければ、だけどね」


「・・・・・???」

 人間たちが少し混乱しているのが伝わってきた。



「カマエルはいいの? 2人で来てもいいのよ?」

 エレノアが蒼い瞳をこちらに向ける。


「俺との一騎打ちを望んでいるくせに」

「・・・よかった。あのときのサマエルのままね」

 エレノアと向き合う。

 剣の魔力を整えていると、エレノアが一気に距離を詰めて、剣を振り下ろしてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ