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剣聖は常識を叩きこむ


 俺とリミリーは結婚し、新魔王城を住居として、ルシス王国に帰る事は無かった。


 アルマーレはぶつくさ文句を言いながら、北部が温かくなった事もあり「まあ、別にこっちで聖女と崇められてもいいですけどねー」と近くに教会を立てさせ、そこで日がな一日説教を垂れるか、信徒に貢物をさせるか、聖女なのか悪女なのかよく分からない生活を続けていた。


 魔族だらけだった街を解放して、北部諸国と改めて国交を結び直し、貿易や人の行き来を始めた事で、環境は大きく変わった。人間と魔族が仲睦まじく生活を始めたのは、俺とリミリーの婚約によるところが大きいらしいと、リミリーが聞かせてくれた。


 ルシス王国に対しては色々と出鱈目を並び立て、最後には物理的な交渉を用いた結果、魔王は死んだとして、無理やり四百五十億ルシスをふんだくる事に成功した。これで俺の借金はチャラである。


「結果としてアーリアは魔王となりました。そして魔王は死んだ。なので四百五十億ルシスのお支払いお願いします」


「な、あのアーリアが死んだ? それは何という……信じられませんな」


 ダールトンは何所か憑き物が落ちたように落ち着いていた。何れはこうなると分かっていたのかもしれなかった。


「まあ、何というか少しほっとしましたな」

 

 自分の娘に対して、相変わらず血も涙も無い小太りなおっさんである。


「しかし、アーリアの生死は確かめようがありません。それではお支払いは難しいですね」


 皇太子のマー君こと、マーベリックは俺を値踏みするようにそう言い放った。まあ、正論ではあったが、むかっ腹が立ったのでルシス王国には二度と帰らない前提で脅しをかけた。


「因みに次の魔王は俺が引き継いだ、払わなきゃルシス王国滅ぼすけどいい?」


「いえお支払い致します、すみません、すみません」


 ルシス王国には戻らないと決めたのであれば、金を回収する方法はいくらでもあると言う事だ。国債を売りつけられるマシソンは凄い嫌そうな顔をしていたらしいが、それは完全に自業自得だと思う。


 しかし、ルシス王国に立ち寄れないとなると、獣人の女郎街に立ち寄れない事は忌々しき問題ではあるのは確かではあった。


 しかし、リミリーと、その子供達との思いでがある以上、変な事は今の俺には出来そうもない。


 因みに、北部諸侯がリミリーの元に集っていたのはやはり獣人フェチの大馬鹿者(同士)どもばかりであったかららしい。国際会議と銘打って様々に趣向を凝らした獣人絵画鑑賞会を定期的に行っていた事が今でも俺の思い出の一つとなっている事は言うまでも無い。


 精霊界は相変わらず、アルケイディアを中心につつがなく過ごしている。


『クレイン、はようプリンを作ってたもれ。精霊界には卵も砂糖もないからのう! お前が作るしかないのじゃ!』


 などと、何か頼み事をするたびにプリンをねだってくる。最近はアイスクリームという単語を覚えたらしく仕切りに要求してくるのが厄介である。


 誰だこいつにそんな言葉を教えたのは。


 その他の俺と契約した大精霊たち、特にクロノスは、『クレインに相変わらずこき使われる』とか言うので、折を見て泣かせてやるつもりだ。


 ノーム、イフリート、ウンディーネは、今でも過去魔王の直轄地であった『アーリア』と名付けられた街で大地に恵を与えている。


 そろそろ解放してやろうかと聞くたびに、『我々も楽しんでいますから大丈夫ですよ』と人間や魔族の側で暮らす事に楽しみを見出しているらしい。


 ヘラは……ここでは触れないでおこう。相も変わらず面倒なので。


 そうこう過去を回想している合間に目的地にたどり着いた。


「ここに来るのも久しぶりだな……」


 嘗て北限に存在した大霊山の麓には天をも貫く精霊樹があった。


 そしてそれは、今も尚、その威容を高らかに誇っている。


「二千年か、そりゃあ大きくもなるわなぁ……」


 大きいと思っていた樹木が年月を経て更なる大きさへと変貌するのはどこか気持ちの良いものであった。この精霊樹が大地を支えている事をあの馬鹿以外に知らない人間はもういない。


 その大樹の根本に、小さな古めかしい墓が、多くの花々を手向けられ小奇麗に手入れされ、残されている。俺はそこに一本、新たな花を捧げた。


「『魔王拳聖アーリア・ドライツェンここに眠る』か」


 今では立派な大樹となった精霊樹を見上げて俺は呟いた。


 それもこれも、今となっては懐かしい記憶の一つであった。


 山を拳で拓く拳聖はもういない。


 いないと、そう思っていた。


「くッ、この狭い空間は一体なんなのです!? これはあれですね、私を試していますね!?」


 まさか、と俺は耳を疑った。


 『山海断拳』の叫び声と共に、精霊樹を貫いて、一人の女が、その金髪を靡かせながら躍り出てきた。


「えっと、ここは何所で、私は誰でしょうか!?!?!? は、まさか私、記憶喪失ってやつでしょうか!?!?!? どうしましょう!?」


 笑える。本当に笑える話だ。


 二千年経ってもこの馬鹿は変わっちゃいない。


「おい、馬鹿女」


「な、馬鹿とはなんですか馬鹿とは!? 馬鹿って言う人が馬鹿だって、えーと、誰だったかが言っていた気がします! それに私は馬鹿じゃありません。空気が読めなくて常識が無いだけです!!」


 ああ、そうだったな。お前は馬鹿じゃ無い。


「わかったよ。そしたら、俺が常識を叩きこんでやるよ」


堂々完結致しました!!


三日間走り抜けました、ここまでご覧いただきありがとうございました!


最後まで読んだ記念に感想、ご評価&ブックマーク等いかがでしょう?私が喜んで、次回作の励みにします!


また、別連載中の『魔族的宥和政策』はシリアスファンタジーですが、ご興味あるかたは是非ご覧ください!


改めて、本作のご愛読ありがとうございました!!


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