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拳聖は木こりの如く、何故か奥義を習得する

 

 目を閉じ、祈り、そして正拳突きを繰り出す。


 その度に、凄まじい速度で樹齢数百年はあろう巨木が拳の形にくり抜かれ、どうっ、と音を立てて倒れる。


 その度に、その巨木をむんずと掴み、遥か彼方、主人のいる場所へと放り投げる。


 無心でこの作業を続けてどれほど立っただろうか。気が付けば周囲の木という木はなぎ倒され、残されたのは、殊更に巨大な樹木であった。


 その巨木はまるで山かと見まがうほどに大きく、大地全てから力を吸い上げるかのように幹は太く、天へと延び、成層圏にすら届かんとするほどに生命に満ち溢れていた。


(つ、強い。これまでの木々とは違う、生命の力強さを感じる!!)


 どれだけの正拳突きを見舞ったのか、時間感覚が失せる程の没頭の末に、彼女は辿り着いた。


『そう、これこそが、私の究極奥義!! 森羅万象拳ッッ!! 』


「解説しよう! 『森羅万象拳』とは、アーリアちゃんの内に眠る闘気が最大に高まった時、標的の弱点を見抜き、その核となる部分に必中の拳を見舞う奥義である!! セイ、セイーーーッッ!!!!」


 ふざけた解説及び、掛け声と共に、大霊山を母体に天へと延びる大樹はその巨木を揺らし、綺麗に崩れ落ちた。


 その超巨大な幹で、()()()を押し潰しながら。



『あの糞馬鹿女(アーリア)がまたもや大霊山を破壊しよったぞ!? お前人界の管理者としてどうするつもりじゃ!? プリンがどうとか言っている場合じゃないぞ!?」


 精霊王アルケイディアが鬼の形相で精霊界から飛び出て来たと共に、容赦なく後頭部をぶん殴ってきた。


(あっのクッソ馬鹿がぁぁあああああああ!!!!)


「さっきから、巨木が次々と降り注いできて何事かとは思っていて対処に気をとられていたが……そりゃあそうだよなあ、どう考えてもあいつだよなぁあ!?」


 ノームがせっかく耕した大地には、凄まじい数の巨木が突き刺さっており、イフリートが手あたり次第に燃やして灰にしては肥料宜しく、せっせと大地に撒き続けていた。


 さしもの魔族の幹部達も吹雪のち晴天のち樹木、などと予想は出来ておらず、何人かは降り注ぐ樹木の下敷きにされてしまった事もあり、家屋の建築も止まっていた状況だった。


『というか、精霊樹まで破壊されておるぞ!? え? 馬鹿なの? 地脈が暴走するのそう簡単には抑えられんけども!?』


 精霊王アルケイディアも流石に狼狽しているぐらいに、精霊樹の破壊はやばい。


 何がやばいって、この北部大陸の地核が破壊されたわけだ。


 それはつまり……


「うん、まあ、あれだな。北部諸国、滅ぶわ、マジで」


「いやいやいやいや、クレイン!? そんな事言っている場合じゃないですけれど!? ど、ど、どどうするんですか????」


 流石のアルマーレも狼狽している。美人が狼狽する姿は眺める分にはとても美しい。


 オーケイ、取り敢えずアーリアを呼び戻して会議をしよう。


 奴隷紋を通じて『凄い会いたくないけど、戻って来い』と強く念じると、目を輝かせながら、『やってやりましたよ!』的な感じて俊足でアーリアが戻ってきた。


 そうだね、やっちゃったね?


「どうですか、クレインさん! アーリアちゃん大健闘の末、奥義的な技で天を突くような大樹を伐採してやりましたよ! これは木こりとしては満点、満点木こりだと思いますけど、いかがでしょうか!?」


「人間としては零点だよ。いや、そもそも木を切れとは言ったが、大樹を切れとは言ってないんだがな……」


「え、私また何かやっちゃいましたか? というか 流石にそれは酷くないですか? 私、クレインさんの命令通りにお仕事こなしたのに!?」


「お前がぶっ倒した大樹が何なのか分かるか?」


「いえ、全然?」


 ホント死なねえかなこいつ。


「精霊樹だよ、あれが大地の要として機能していて北部大陸全土に根を張り巡らせ大地にエネルギーを供給している。ようは地核の役割を果たしているんだよ」


「え、それって普通に不味くないですか?」


 アーリアちゃん、気づいちゃいましたけれども? みたいに顎に手を当てて閃いた感出すのを止めろ。


「まあ何年後になるかは知らんが、北部諸国、その内滅ぶだろうな。普通に人類の危機というか、北部に住まう者達全員の危機だよ。もうお前が魔王でいいよ。魔王アーリアだよほんと」


「え? 魔王アーリア? 格好良い気がしますけれど、頂いちゃっていいんですか? ゴクリ」


 擬音を口に出して言うのが最高に腹が立つが、構っているとこちらがアホにありそうなので、無視をして、アルケイディアに対処法は無いかを確認する事とした。


『とりあえず、その女、儂が手ずから殺しても良い? 処したい、儂、めっちゃそいつ処したいが!?』


 しようとした矢先にアルケイディアの堪忍袋の緒が切れた。


 気持ちはめっちゃよく分かる。だが、それよりも先にどうにかしなければなるまい。


「あ、今なら奥義使えば精霊王にも勝てる気がしますよ?」


 煽んな、糞馬鹿か!? いや馬鹿だったわこいつ。


 確かにに今のこいつ(アーリア)なら精霊王にすら勝ちかねないのが厄介なところである。


『ぐぬぬ……精霊界にある、大樹の苗木を再度植えるしかあるまい……しかし、あれがあるのは精霊界でも奥地の奥地、儂ですら手が出せぬ大秘境にのみ存在しておるのじゃ。それ故に、精霊樹の側にある、人間界と精霊界が上手く交わる大霊山こそが、精霊樹の探索の為に非常に有用なのじゃが……この馬鹿者が精霊樹の側にあった大霊山まで破壊しおったせいで、滅茶苦茶大変になったぞ』


「え? あの御山、大霊山だったんですか?? でも大樹が破壊された二次災害であって、私悪くないですよねえ!?」


 いや、めっちゃ悪いよ、だって大樹を破壊したのお前じゃん。


『まあ、精霊界までは儂が連れて行ってやろう。後は適当に頑張ってくれい』


 あー、この精霊王『よく考えたら北部大陸滅んでも儂関係ないしなー』ぐらいにしか思ってねえわ。後で泣かす。


「と、とりあえず方向性は決まったようで良かったです。クレイン、アーリア、頑張ってきてくださいね?」


 アルマーレが、ファイトッ! 等と可愛らしく応援しているが、いや、お前も連れて行くからな?


「まあ、剣聖、聖女、旧魔王、新魔王が揃えば、精霊界でもなんとかなんだろ。アルケイディア、転移頼むわ。他の連中は頑張って耕作と居住区の新設頑張ってくれや」


 そして俺達は、精霊界へと進出する事となった!



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