Second
謎のアプリDeath gameを開こうとした瞬間に一人の猛獣が和泉和泉を襲う。
和泉はしっかりと、化け物を直視する。異常なほどに隆起した筋肉、引き裂くために鋭く伸びた爪、剥き出しになった牙。化け物の全てから感じる殺意に、心臓は高鳴り嫌な汗が頬を垂れる。
「これはまずいことになりましたね…まだチュートリアルもクリアしていないのにいきなり本番なんて。」
AIは先ほどのテンションとは打って変わって急に真面目なトーンで話し始めた。
「もしかしてさっきのアプリのせいでこんな奴が出てきたのか?」
「察しがいいですね、その通りです。」
「ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさと死ね!!」
大きく振り下ろされる爪を間一髪のところで躱したが、地面には大きく爪痕が残る。
「俺もああなっちまうのか!?」
「どうなるかはわかりませんが、今はとにかく逃げてください!」
それでも彼は諦めずに、なんとかギリギリのところで避けながら、器用にスマホを、あのアプリをいじる。
「ダメですよ和泉さん!逃げるためとはいえチュートリアルさえ終わってないんですよ!?どんな力があるかわかりません!」
「なんにしたって、使わなきゃ逃げられないだろ!」
AIの忠告を無視しスマホをいじり続けると"Transform"と書かれたそれらしいボタンを見つける。
「なんだよ!チュートリアルすら終わってないなんて絶好のカモだな!」
「カモかどうかはお楽しみだ!」
力強くボタンを押し、叫ぶ。
「変身!!!」
スマホが強く発行すると和泉の体を包み始めた。
『V!R!MUSIC!!』
包んでいた光はなくなり、和泉の体はこの地獄を耐え抜くための鎧に包まれていた。
その鎧のことだが、実に珍妙な容姿をしている。肩にはステレオ、右腕にはラジカセ、左腕にはタブレット。そして頭には帽子にヘッドホンと、まとまりに欠けた姿をしていた。
「うぉお、すげぇ!本当に変身できた!」
しかしそんな姿でも本人はとても嬉しそうにする。
「これならいけそうな気がする!」
勢いで殴るが相手はピクリとも動かない。
「効かない、なぁ!」
情けないほど簡単に殴り飛ばされてしまう。
「やっぱダメだわ。」
「諦めるの早すぎです!とりあえず何かしてみてください!」
「何かってなんだよ…えーっと、じゃ適当にこれ!」
左腕のタブレットに表示されていたアプリを押す。
『Shield.』
目の前に半透明のプレートが現れ、勢いよく相手はぶつかった。
「おお、すげぇすげぇ。」
「ぐっ…小癪なぁ!」
しかしこれも一撃で粉砕された。
「ええ!これもダメ!?なら…これだ!」
『Sword.』
別のアプリを起動させると今度は剣の形をして出て来た。
「はぁ!」
それを掴み、すかさず斬りつけると火花が散る。
「よし、これならいける!」
何度も何度も相手に剣を振る。
「調子に、乗るな!」
相手の反撃を受け止めたが、あまりの重さに膝を付く。
「そのまま地面に這いつくばるがいい!!」
「ぐっ…重い…」
「見ればわかりますよ!今度はラジカセのボタンを押してください!」
歯を食いしばり、なんとか右の腕のラジカに手を伸ばす。
『First number』
肩のステレオから音が衝撃波のように出、相手を吹き飛ばす。
「おお…ちょっと邪魔くさいと思ってたけどちゃんと使えるんだな…」
「くそったれが…次会う時は覚悟しておけ!」
そう言い残し高く跳躍。屋根の上をぴょんぴょんと飛んでいきあっという間に見えなくなってしまった。
「はぁ…なんとかひと段落、だな。」
「本当上手くいってよかった…いいですか?これからは絶対に今みたいな無茶はしないでください。じゃないと本当に死んじゃいますよ?」
「はいはい、わかってますよ。」
(まだまだ分からないことだらけだけど、とりあえず今は…ね。)
「ところでどうやったら元に戻れるの?」




