prologue
0と1の羅列が無限に続く空間。
そこにポツリと一人の少年が招き寄せられた。
少年は地面がないことに慌てふためくがすぐに関係ないことに気づき、恥ずかしさを含みながら安堵の溜息を吐く。
「…………………………」
しかし、自分以外の存在がいると言うことに気づくのは少し遅れたようだ。
「落ち着きました?」
少女は冷ややかに言う。
「あーっと、まぁ、そうですね。」
誤魔化すようにだらしなく笑うが空気は変わらなかった。
その空気に耐えかねてか、少女は口を開く。
「まず最初に、あなたは死にました。」
僅かなためらいも、悲しむようなそぶりも見せず、一言でその少女は言い切る。
「あ、やっぱりそうなんですね。」
しかし少年の方はさほどショックを受けているようなそぶりは見せず、すんなりと受け入れた。
「で、僕は転生するんですよね?どんな世界に転生するんですか?魔法のある世界?それとも科学が発展しまくった近未来?教えてくださいよ。」
どうやら死んだショックよりも異世界に行ける興奮の方が勝っていたらしく、随分と前のめりに聞いてくる。
「残念ながら転生はしません。そもそもあなたが思い描くような世界は空想の産物で、実在なんてしませんし。」
その一言で少年はわかりやすく肩を落とす。まったく、慌てたり、恥ずかしがったり、喜んだり、悲しんだり。忙しい男のようだ。
「じゃあなんでこんなこんなところに呼ばれたんですか?転生もしないのに。まさか…天国に行けますってわざわざ伝えに来てくれたんですか?」
異世界の次は天国か。彼の頭には夢しか詰まっていないのかもしれない。
「あなたが行く場所が天国か、はたまた地獄か。それはまたあの世で会えたら教えましょう。」
彼女がそう告げると視界は緑色に包まれた。