↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
23 セルロア王国式典篇
780/4423

23-16 祝い事/休息

「ほう、そんなことがあったのかね」

 カイナ村の朝は早い。村長ギーベックはもう起きており、治癒師サリィ・ミレスハンと共に朝食を食べ終えたところであった。

「テルルスはある意味、歪んだ町だからな……」

 数年をそこで過ごしたサリィもしみじみと呟いた。

「それで、ジンはどうしたいのだね?」

 ギーベックの問いに仁ははっきりと答える。

「孤児が何人かいるようなので、彼女たちが希望するならこの村に住まわせたいと思っています」

「うむ、問題ないな。もしも、の話だが、養子として引き取りたいという者も出るかもしれん」

 カイナ村にも、何軒か、子供を亡くしてしまった家があるのである。

「そうなってくれたらいいですね」

「うむ、だが、あくまでも将来の話、仮定の話だが、な。まずは村に馴染んでもらうところからだろう」

 そこへサリィが口を挟んだ。

「ベック、それならば、私たちもいずれ1人面倒見たいものだね」

「そう、だな」

 そんな2人を見た仁は、

「……お2人は、もしかして?」

 と尋ねてみる。すると2人は少し赤くなりながらも頷いた。

「う、うむ。バーバラもじきにエリックのところへ嫁に行くだろうし。……一緒になることにしたのだよ」

「おめでとうございます。それで、式は?」

「この歳で式もないだろう」

 などとギーベックは言うが、仁はかぶりを振った。

「せっかくですから、そうだな、今夜、二堂城で宴会をやりましょうよ」

「お、おい、あまり大袈裟には……」

 だが仁は聞かない。

「いいじゃないですか。サリィ先生だって、初めての結婚なんだし」

 そう言って、半ば強引に決めてしまった。

「それじゃあ夕方5時に、城に集まって下さいよ!」


「……ふう、まいったな」

 仁が帰った後、ギーベックは溜め息をつきながら呟いた。が、その顔は言葉と裏腹に笑みを浮かべていた。

「ベック、ジン君の心遣いを受けようじゃないか」

 幸せそうな笑みを浮かべながらサリィが言う。ギーベックは答える代わりに、彼女の手をそっと握ったのである。


*   *   *


「おにーちゃん、お帰りなさい!」

 次いで仁はマーサ宅へ行った。もちろんハンナに会うためである。加えて、

「ハンナ、今度の22日、セルロア王国で記念式典があるんだ。一緒に行こうか」

 と、誘うためでもある。

「ほんと? おにーちゃんと一緒にお出掛けできるの?」

 満面の笑み。最近出掛けてばかりの仁と一緒にいられるので嬉しいのだろう。

「ああ。いい勉強になるだろうしな」

 安全面としても、改編した新生『隠密機動部隊(SP)』に警護させるつもりである。

「ジンも出世したものだねえ」

 話を聞きながらマーサはにこにこしている。初めて仁がカイナ村に来た頃のことを思い出しているのかも知れない。


「それで、その女の子たちをしばらくお城で預かるんですね?」

 これはミーネ。ハンナも良く懐いており、すっかりマーサ家に馴染んでいた。

「そう。それでミーネに、少し教育を頼みたくて」

「ああ、そういうことですね。分かりました、お任せください」

 要は、彼女たちの自立を少しでも助けられるように教育をしてあげようというのである。もちろん、高度なものではなく、読み書きと簡単な計算程度から始める。

 今、カイナ村の子供たちはそういった初等教育を終えてしまい、次の段階はどうしようかというところまで来ていた。

「少しでも自立の助けになれば、と思ってさ」

「そうですね、とてもいいことだと思いますよ」

 そこで仁は、今夕の話をする。

「あ、そうそう。今日、午後5時から城で宴会しますから」

 これには、マーサが怪訝そうな顔をした。

「また急な話だね。まあ、この村の者で出ないなんて言う奴はいないと思うけどね。何か目的があるのかい?」

「ええ。連れてきた子たちの紹介と……村長さんたちの披露宴ですね」

 そう言われ、マーサもミーネも頷いた。

「ああ、そういうことかい。確かにね。村長とサリィ先生、幸せになってくれるといいねえ!」


*   *   *


 エルザは、とりあえず少女たちを2階の客室に案内した。そこには、ゴーレムメイドたちが既に布団を敷いてくれていた。

「わあ、すっごいふかふかのお布団!」

「ここで寝ていいんですか?」

「床からいい匂いがします……」

 少女たちは、初めのうちこそ、畳と魔絹(マギシルク)の布団に驚いていたが、おなかがいっぱいになり、これまでの緊張から解放されたことや、溜まっていた疲れもあって、横になるとすぐに眠ってしまった。やはり飛行船の中では良くは眠れなかったのだろう。

 彼女たちの世話はゴーレムメイドに任せ、エルザは自分も別の客間で少し仮眠を取ることにする。同様に少々寝不足なのだ。


 エルザが眠ってから2時間ほどの後、礼子を連れた仁が戻って来た。

「女の子たちはどうしてる?」

 出迎えてくれたトパズ101に尋ねる。

「はい、お食事を済ませた後、2階の客間で眠っています」

「そうか。やっぱり疲れていたんだろうな。で、エルザは?」

「はい、エルザ様もお疲れのご様子で、おやすみになっています」

 それを聞いた仁は少し反省した。

 自分と違い、貴族令嬢として育った彼女には少々無理を強いているかも知れない、と。

「そうか。お昼まで寝かせておいてやろう」

 仁はそう言って、5階の自室へ向かった。仁自身も少々疲れていたので仮眠を取るつもりである。

「礼子、12時になったら起こしてくれ」

「分かりました、お父さま」

 仁も、自覚してはいなかったものの、やはり寝不足だったのだろう。横になるとすぐに寝息を立て始めた。

「お父さまが寒くないように……」

 室温を確認した礼子は、空調の魔導具を作動させ、24℃に調整したのである。


「ああ、よく寝た」

 11時55分、礼子が起こす前に仁は目覚めた。

「お父さま、あと5分で12時です」

「ああ、そうか。ちょうど良かった。……じゃ、エルザも起こすか」

 2階に下りた仁は、エルザの部屋に入ろうとして足を止めた。

「……っと、俺が入っていったんじゃまずいな。礼子、起こしてきてくれないか」

「はい、分かりました」

 仁の代わりに礼子がエルザの寝ている客室に入る。が、すぐに出てきた。

「お父さま、エルザさんはもう起きていらっしゃるようです」

「ああ、そうだったか。じゃあ、どこにいるんだろう」

 との仁の疑問に答えたのは礼子。

「この時間ですと、厨房ではないでしょうか」

「ああ、そうか。行ってみよう」

 仁は礼子と共に、1階の台所へ向かった。そこからはいい匂いが漂ってきていたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。