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99-123 宣言

 3代目『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の拠点、『崑崙』。

 その管理魔導頭脳は『開明』。

 そして細部までの仕様が決定したため、老君は内部の整備を開始する。

 外殻の建造場所はユニーであったが、完成した今は蓬莱島の南東、『タツミ湾』に浮かんでいる。


『こちらの作業はお任せください、御主人様(マイロード)

「頼んだぞ、老君」


 老君が監督し、作業は『職人(スミス)』たちが500体で取り掛かる。

 おそらく1日足らずで終わるはずだ。

 そうなったら……。


「あと問題は、どこに置くか、だな……」

『はい、御主人様(マイロード)

「崑崙島のそば……は駄目だな……蓬莱島からできるだけ離しておきたいし……」

『ショウロ皇国南の海上はいかがでしょう?』


 『アヴァロン』が現在位置するのはセルロア王国南部の海に突き出た部分(半島とは呼べない)の東側。

 『崑崙』はその突き出た部分を挟んで反対側である西側に位置することになる。


「うーん……いいかもな……」


 ニドー家はショウロ皇国にあることだし、と仁は考えた。

 十分に陸地から離れれば領海侵犯にはならないだろう、とも。


 そもそも海運が未発達な今の世界では、領海の考え方はまだ定着していないのだから。


 そこで、北緯5度、西経75度付近を拠点『崑崙』のポジションと定めることにした仁であった。


「まあ、あくまで『仮』の拠点だからな……」


 とはいえ、設備はすべて使用可能であり、長年使い込まれたように偽装されている(最中さいちゅうである)。

 仁クラスの能力がない限りばれることはないだろう。


「これで、とりあえずの連絡先はよし、と」

御主人様(マイロード)、所属しているゴーレムの名前はどういたしますか?』

「ああ、それがあったな。……技術系ゴーレムは『テクニス』、大型ゴーレムは『ギガンテス』でどうだろう?」

『承りました』


 こうして、仁の仮拠点『崑崙』は仕上がっていく……。


*   *   *


 仁が『分身人形(ドッペル)』と入れ替わって蓬莱島に行っているその時、エルザは『アヴァロン病院』で引き継ぎを行っていた。

 ……はずだった。


「……病名、急性大動脈解離(だいどうみゃくかいり)! 処置、急いで!」

「はい、院長!」


 引き継ぎの最中に、急病人が担ぎ込まれたのである。


 最初、エルザは指示を出そうとしていたのだが、病院長ハーシャ・クラウドはてきぱきと適切な指示を出していくので、バックアップに徹することにする。

 そして、万が一のミスがないかどうか、裏方を務めることにしたわけである。


解離かいり箇所、胸部大動脈」

「応急処置として治癒魔法を掛けて」

「はい! ……『快復(ハイルング)』」


 基本的に治癒魔法の多くは、人間が持つ治癒能力を大幅に向上させて治すものである。

 ゆえに、古傷のような『常態化』してしまった場合は、『治癒』系の魔法では治せない。

 麻酔をかけた上で古傷を外科手術的に除去してから『治癒』させる必要がある。

 粉砕骨折もこれにあたるし、単純骨折であっても曲がったままくっつかないよう注意が必要だ。


「フローレン、患者の血圧は?」

「はい、101の54、脈は47です」

「体温を下げておいて」

「はい」


 血圧によって動脈が裂けかけているため、血圧は患者に障害が出ない程度に下げておいた方がよい。

 そして用意されたのは『医療従事用自動人形(オートマタ)』と『手術用小型ゴーレム(SG)』。


 解離かいり……3層になっている大動脈の一番内側の層が裂け、中層と表層の間に『偽腔ぎくう』という血液の流路が出来てしまった状態である。

 ここで表層が裂けたら胸腔内に血液があふれてしまい、手遅れになりかねない。


 そこで『手術用小型ゴーレム(SG)』と医療従事用自動人形(オートマタ)『フローレン』である。


「フローレンは『麻酔(ナルコーゼ)』を掛け、開胸かいきょう。『手術用小型ゴーレム(SG)』は速やかに患部を『修復(レパラトゥーア)』で治療して。それが済んだら閉胸へいきょうし、傷跡を『快復(ハイルング)』で消して」

「了解」

「了解」


 その指示内容は、聞いているエルザも納得するものだった。


開胸かいきょう完了」

「患部の修復完了」

閉胸へいきょうします」

「傷跡の消去完了」


 トータルで28秒、迅速な対応によって患者の生命は救われたのだった。


*   *   *


「……もうあなたたちは、大丈夫」

「お恥ずかしい限りです」


 患者の容態が安定したことを確認後、エルザはもう引き継ぎの必要なし、と『アヴァロン病院』の体制に太鼓判を押した。


「もちろん、これきりいなくなるわけじゃない。連絡先もあとで、教えるから」

「先生、これからもよろしくお願いします」

「ん、頑張って」


 ……と、エルザの方も引き継ぎは無事終了したのである。


*   *   *


 仁とエルザは、『アヴァロン』の主だった人たちに、明日引き払うことを告げた。


「寂しくなりますね」

「ずっといてほしかったです」


 当然ながら、惜しむ声、引き止める声が多方面から出る。

 とはいえ、仁とエルザを縛り付けることは誰にもできないことも理解していた。


 それで、『ちょくちょく顔を見せるよ』という言葉を頼りに、泣く泣く現実を受け入れたのである。


 その日の『アヴァロン』の空は、皆の心境を映したかのような曇天であった……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は3月31日(火)12:00の予定です。


 20260329 修正

(誤)

 今『アヴァロン』がある場所とは、セルロア王国南部の、海に突き出た部分(半東とは呼べない)を挟んで反対側、つまり東側に位置することになる。

(正)

 『アヴァロン』が現在位置するのはセルロア王国南部の海に突き出た部分(半島とは呼べない)の東側。

 『崑崙』はその突き出た部分を挟んで反対側である西側に位置することになる。

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― 新着の感想 ―
うっかりで長年使い込まれたような最新技術の設備とかありそうw
> 3代目『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の拠点、『崑崙』。 (中略) >「あと問題は、どこに置くか、だな……」 >『はい、御主人様マイロード』 >「崑崙島のそば……   だn o...『崑崙』…
崑崙… 1日足らずで終わる。 他の技術者が聞いたら、絶望して泣くやつである。 どこに置くか… そんなもの、一般人が知らないオノゴロ島一択でしょう。 偽装… プラモデルでいう“汚し”と呼ばれる工程で…
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