99-122 仮拠点
遅れました
<(_ _)>
さて、懸念事項もかなり減ったので、仁は『アヴァロン』を去る日を検討し始めた。
「……『拠点』が出来てからがいいんじゃ、ない?」
「それはそうだな」
エルザと話し合った結果、そういうことになる。
「それじゃあ、『拠点』についての建造指示を出してくるよ」
「ん」
そういう風に話がついて、仁は『分身人形』と入れ変わって蓬莱島へ。
* * *
「そういうわけで老君、『アルカディア』と同型の拠点を作りたいんだ」
『御主人様、もう完成しておりますが』
「え?」
『以前にも、『アヴァロン』の構想を口にされていらっしゃいましたし、こういうこともあろうかと、私の裁量の範囲でできることをやっておりました』
「そ、そうか」
優秀な老君である……。
『ですが、内装は完成しておりませんので、御主人様のご指示をいただきたく』
「よし、わかった」
建造という大仕事が既に終わっているというのは大助かりで、仁は喜々として内装の検討を開始した。
「俺の拠点なんだから、工房がないのはおかしいし、それも『ハリケーン改』が作れないような小さな工房じゃまずいよなあ」
上層階に、航空機用の大型工房を。
「船も作ったんだから……こっちは乾ドックにするか?」
ちなみに、船体の検査や修理などのために水を抜くことができるドックのことである。
建造時や修理時には、水があるとやりにくい作業もあるからだ。
「ドックは、100メートル級の全金属製の艦船を作れるようにしておかないとな……」
仁が100メートル級の巡洋艦と300メートル級の戦艦を所有していることは知られているからだ。
「資材もそれなりに積んでおいたほうがいいな」
貯まる一方の資材を倉庫に詰めることにするが、それでも仁の抱える資材の1万分の1にもならない。
「農場と牧場もほしいな。……地上部には田んぼも作ろうか」
仁の好みで構想が決まっていく。
「まあ、いずれ『アヴァロン』に寄付したらそれなりに改造しやすいようにしておくべきだな」
内部はできるだけユニット化し、増改築がしやすい構造とする。
「動力源は大きめにするか」
中型のユニットを数多く搭載し、合計で『アルカディア』よりも少し出力は大きめにすることに。
「勤務しているゴーレムは……『テクノ』と同型でいいかな? ……いや、少しだけ性能を上げよう」
同じ型では芸が無い、と、『アヴァロン』で就役中の『テクノ』よりも20パーセントほど性能アップしたものを100体用意することに。
また、重作業用に5メートル級の大型ゴーレムも10体。それ以上はクレーンを使用することになる。
「『アルカディア』とは逆に、居住性の方はあまり気にしなくてもいいか」
こちらは仁とエルザ以外に人間は常住しない(厳密には仁もエルザも人間ではないが)前提だからだ。
「客人用の宿泊施設くらいはあってもいいけどな」
100人程度のキャパシティはあってもいいだろう、と考えていく。
「推進機も必要だな……」
大型の『魔法型水流推進機関』を60基使うことにする。
「安定のためにも巨大なジャイロを備えておくか……」
アダマンタイト製の巨大円盤を高速回転させることで安定を保つ構造だ。
「食料もそれなりに必要かな? ……これはまあ、それほど多い必要はないだろう」
基本的に仁とエルザ、そして客人用に1ヵ月分ほどもあればいいだろうと考える。
ただし保存は『魔力庫』(エーテル比が20パーセント以上の冷蔵貯蔵庫。魔力系素材の半永久的保存が可能)を使う。
「寄贈するといってもいずれ、の話だから、それなりの武装や防御も必要だろうなあ……」
『いえ御主人様、寄贈時には危険そうな武装は取り外した、とすればよろしいのでは?』
「ああ、それでいこう」
ということで、武装に関してはとりあえず『魔力砲』と『電磁誘導放射器』、『魔力爆弾』『魔法転写砲』(特定の魔法をロスタイムなく放つことができる大砲)を備えることとした。
「これで、大分仕様は決まったな」
『はい、御主人様。……防御用の結界はどう致しますか?』
「それがあったな。まあ通常の『障壁結界』と、寄贈時に取り外す『防御盾』も備えておこう」
『防御盾』は、『整波器』を応用して作られた、平面状のバリアである。その形状から『盾』と呼ぶわけだが、今は半球状に展開することもできるようになった。
『整波器』は、『ユニバシウム』(旧名エルラドライト)を使用して作られた、波動の位相を揃えることのできる魔導装置である。
『御主人様、その他にも研究室をお作りになられるといいと思います』
「ああ、そうだな。そうした部屋もほしいな」
いずれ寄贈した際にも使いやすいように考えていく。
「『アルカディア』同様の性能でいいから『管理魔導頭脳』も必要だな」
……とまあ、こうして決まった内容を老君がブラッシュアップし、それを仁が確認していく……という流れで、最終的に仕様が決まったのはその日の夕方であった。
* * *
『では御主人様、この仕様で建造を続けます』
「頼むぞ」
『お任せください』
仁としても最後まで自分でやりたいところだが、ダミーの拠点ということで老君に任せることとなったのである。
『御主人様、最後に1つ』
「何だ?」
『この拠点の名前はいかが致しましょうか。管理魔導頭脳とともに命名をお願い致します』
こればかりは、今のうちに仁に決めてもらいたいと老君は言った。
「うーん……」
考え込む仁。
「それじゃあ……『崑崙』としておくか」
『なるほど、先代……2代目は『崑崙君』でしたから、その意を汲むわけですね』
「そういうことだな。で、魔導頭脳は『開明』でいこう」
『開明』は、その昔読んだ覚えのあるマンガから取った。
(確か、崑崙の門を守っているとかどうとか)
『わかりました』
とにかく、こうして仮拠点についての決定がなされたのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は3月29日(日)12:00の予定です。
20260327 修正
(誤)内部やできるだけユニット化し、増改築がしやすい構造とする。
(正)内部はできるだけユニット化し、増改築がしやすい構造とする。




