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99-112 ミツホでのメルD

 8月27日となった。

 この日は、メルDがミツホでやっておくべきことが1つある。

 それは、攻撃を受けた荷車の確認である。

 これまでの訪問国では、既に修理されていたため、賊の痕跡を調べることが出来なかったが、ここミツホではまだ未修理の荷車があるという情報を得ていたのだ。


「荷車……というよりゴーレム自動車ですね。修理はここミツホにある工場で行われると聞きました」


 そこで朝食後、工場を訪ねたわけである。

 『アヴァロン』による調査ということで、特に問題もなく、当該自動車を調べさせてもらうことができた。


「『テクノ50』、どうですか?」

「指紋は、全て既知のもの……つまり、商会関係者のものですね」

「そうですか……」


 実行犯はゴーレムだろうと思っていたので、これについては落胆はしない。


「『テクノ49』、何かわかりますか?」

「はい、いくつか。……まず、ここに付いている指の跡は、賊ゴーレムのものでしょう。運搬用自動車トラックを止めた際に付いたものでしょう」

「そこから、何かわかりますか?」

「パワーの推測と、手の大きさですね。手の大きさから身長もわかりますが、こちらは2メートルくらいという目撃情報がありますから新事実というわけではありません」

「でも、これまでになかった情報ですね!」


 わずかでも前進できたことを喜ぶメルツェ。

 現場にいるメルDも、表情をほころばせている。


「あともう1つあります」

「それは?」

「ゴーレムの手の平と思われる軟質部材の一部が僅かにちぎれて付着していました」


 手の平もしくは指の腹などに、摩擦力増加や壊れやすいものを扱いやすくする、などの目的でゴムや革などの軟質部材を貼り付けることがある。

 その一部が、被害にあった自動車の金属製の部分に付着していたというのだ。


「材質は天然ゴムでした」

「そういうこともわかるんですね」


 メルDを通じて得た、思わぬ情報に驚くメルツェであった。


*   *   *


『メルツェさん、こちらで分析すれば、どこ産のゴムかわかると思いますが、どうしますか?』


 老君が尋ねてきた。


「そんなことができるんですか?」

『可能です。天然ゴムはゴムの木の樹液から作られますから、元になったゴムの樹液から辿って、その木がどこ産なのか、分析することができるんです』

「はあ、そうなんですね」

『どうしますか?』

「……おねがいします。ですが、老君さんの判断で、本当に必要とするまで、私には伝えないでください」


 ゴムの破片を発見するまでは『アヴァロン』の技術系ゴーレム『テクノ』にもできたが、その産地までは特定できなかった。

 老君ならそれができるというが、それは犯人特定の情報として、ぎりぎりまで取っておこう、と判断したのである。


(これが最善なのかどうかはわかりませんけど……)


 事件を解決することが最終目的だとしたら、使えるものは何でも使い、最短時間で解決すべきかもしれない、とも思える。

 が、蓬莱島の技術力に頼るのは反則技だ。

 (『分身人形(ドッペル)』の使用についてはメルツェの安全が目的であって、事件解決には寄与していないからノーカウント、という考えである)


 『アヴァロン』の誰でもが蓬莱島の技術の恩恵にあずかれるわけではない。

 自分の身の安全以外、甘えてしまうのは違うのではないか、というのがメルツェの考えだった。


(……もし、ジン様にお会いできたら、聞いてみようかしら……)


 と思いつつ、お昼となった。


 昼食は軽食で済ませるメルD。

 メルツェ本人は蓬莱島でゴーレムメイドが作ってくれたサンドイッチ。


「午後はどうしましょうか……」


 独り言のつもりだったが、老君が反応してくれた。


『メルツェさん、それでしたら『サヤマ湖』へ行ってみるのがよろしいかと』

「あ、老君さん。えっと、何かあるのでしょうか?」

『はい。ミヤコから見て向こう岸、つまり北岸に、自動車を生産している工場があります』

「なるほど、被害にあった貨物自動車もそこで生産されたのですね?」

『はい、そうです』


 生産ラインを見学するのは、今後のためになるでしょう、と老君は言った。


「今のところ、『マーカー』をひそかに設置されたという仮説も捨てきれませんしね」

『ええ、そういうことです』


 ということで、メルツェは『分身人形(ドッペル)』であるメルDをその自動車工場へ向かわせることにしたのである。


*   *   *


 自動車工場は『サヤマ湖』の北岸にあるため、湖を船で渡るのが最短である。

 ゆえに『渡し船』は南岸の西・中央・東の3箇所から出ており、メルDは中央の船着き場を利用することにした。


 渡し船は30分おきに出ており、メルDはちょうどいいタイミングで乗船。

 船は双胴タイプの中型船(この世界の基準)で、30人乗り。

 最高速度は時速20キロ(ノットは使われていない)。

 途中、他の航路の船とのすれ違いもあったりして、横断に要した時間は35分。


 船着き場から3分ほど歩くと、乗合自動車の発着所である。

 メルDは自動車工場行きの路線に乗る。

 ちなみに『テクノ49』と『テクノ50』は自力で泳いで渡っている……。


*   *   *


「……そういうわけで、向学のために見学をしたいのです」

「わかりました。どうぞ、こちらへ」


 メルDが『アヴァロン職員』という本来の肩書を使い、工場見学を申し込んだところ、快く許可してもらえたのである。

 もちろん、『テクノ49』と『テクノ50』とは合流済み。


 そして、親切な職員の案内でひととおり見て回ることができたメルDであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は3月6日(金)12:00の予定です。


 20260303 修正

(誤)そこで朝食後、工場を尋ねたわけである。

(正)そこで朝食後、工場を訪ねたわけである。

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― 新着の感想 ―
>>攻撃を受けた荷車の確認 ハ「バラバラの残骸を」 エ「立体パズルのように組み上げて・・・」 仁「其処まで壊れてないぞ・・・」 >>お会いできたら 老・フラグ「ふっふっふっふっふ」 >>自力で泳い…
>「『テクノ50』、どうですか?」 >「指紋は、全て既知のもn >「『テクノ49』、何かわかりますか?」 >「はい、いくつか。……まず、ここに付いている指の跡   らしきものですが、指には必ず指紋があ…
 ありとあらゆるソムリエな老君に分からないことはない!ペロッこれは○○国にある○○村で少数しか取れない希少なゴムだな!
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