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99-100 福音の氏族領へ

 明けて26日となった。

 朝食後、シオンは仁に尋ねた。


「ジンたちは、今日はどうするのかしら?」

「久しぶりに、ノルド連邦内を巡ってみたいと思ってるんだが」

「それじゃあ、ローを付けましょうか?」


 ロー、というのはロードトスのこと。

 曾祖母であるシオンはロードトスのことをローと呼び、ロードトスはシオンのことを大おばあさま、と呼んでいるのだ。


「ロードトスが来てくれるなら助かるなあ」

「それじゃあ、そうしましょう」


 ということで、シオンはこの日1日、ロードトスに仁たちのガイド役をするよう命じたのである。


「ロードトス、よろしく頼むよ」

「こちらこそ。よろしくお願いします」


 時刻は午前8時半。

 まだ仁たちはシオン邸にいる。

 行き先を決めるためだ。


「まずは『福音ふくいん』の氏族に挨拶したいものだが」

「そうですね、それはいいことだと思います」


 『福音ふくいん』の氏族には、オリジナルの仁が異空間から戻った時に世話になったバルトドスがいる(氏族長)。


「その後は、もっと北へ行ってみたいな」

「夏ですからね、大丈夫でしょう」

「まずはそんなところかな」

「わかりました」


 ロードトスは『福音ふくいん』の氏族に、これから仁が『ハリケーン改』で訪問することを連絡してくる、と告げて一旦奥へと引っ込み、2分ほどで戻ってきた。

 『魔素通信機(マナカム)』で連絡してきたという。


「では、まいりましょう」

「よし」


 仁、エルザ、ロードトス、礼子、ホープ、そして桃子が『ハリケーン改』に乗り込んだ。

 マリッカDは工房に残っている。


「ホープ、目標は『福音ふくいん』の氏族領だ。北へ向かってくれ」

「了解です」


 『ハリケーン改』はゆっくりと地上を離れ、高度100メートルほどで水平飛行に移行し、真北を目指す。

 『福音ふくいん』の氏族領は、ほぼ『森羅しんら』の氏族領の真北にあるのだ。

 距離にしておよそ190キロ。

 時速200キロでゆっくり飛んでも1時間弱で到着する。


 眼下には緑の大地が広がっていた。


「草原が多いけど、畑やビニールハウスも見える」

「大分開発が進んでいるな」

「ん」


(あの時は、行きは4時間、帰りは10分だったなあ)


 オリジナルの仁は、ロードトスとともにゴーレム馬でこの平原を4時間掛けて突っ切ったのである。

 が、帰りは『700672号』経由で400年前の仁から授けられた『ペガサス2』だったのである。


「今、ルガーダ川を越えた」


 エルザが呟いた。

 ルガーダ川は『福音ふくいん』の氏族領がある山地に端を発し、南東へと流れて海へと注いでいる川だ。

 その下流域南側には肥沃な平原が広がっており、ロロナが耕作地にするため尽力してきた土地である。


 そのルガーダ川を過ぎれば、もう行程の半分は来たことになる。


「しかし速いですね。そのうえ快適です」

「速さ以上に快適さを求めたからこの『ハリケーン改』が出来たんだからなあ」


 速さだけなら『ペガサス2』でよかったのだが、のんびりしたいこと、それ以上に『ハリケーン改』は仁の乗機、という認識が浸透しているということもあった。


「だんだん、緑が少なくなってきた」

「もう北緯55度をこえたろうからな」


 地球で言うと、北緯55度は、イングランド北部のグラスゴー、北欧コペンハーゲン、リトアニア、モスクワ、アラスカ、カナダあたりである。

 かなり冷涼な地域であることがわかるであろう。


 そして『福音ふくいん』の氏族領は北緯57度,西経46度。

 あと少しである。


*   *   *


 事前に連絡してあったので、『ハリケーン改』の着陸はスムーズであった。

 氏族領南端にある飛行場に『ハリケーン改』は着陸。


「ようこそ、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ジン殿」


 氏族長バルトドスが自ら一行を出迎えた。


「ご無沙汰しております。その節はお世話になりました」

「なんのなんの。……しかし、あの時のジン殿が『魔法工学師マギクラフト・マイスター』だったとは」

「当時は『魔法連盟』とのゴタゴタがありましたから……申し訳ないです」

「いやいや、事情はわかりますぞ」


 そして仁とバルトドスは握手を交わす。


「今日は、久々の休暇を楽しみにノルド連邦に来まして」


 いつぞやのお礼も兼ねて伺いました、と仁は言った。


「これはこれは、律儀なお方ですな。もう礼はいただきましたし、お忙しい事も風の噂で耳にしておりますからな」


 実際、蓬莱島を解放したあと、老君からシオンを通じて、仁が世話になったお礼はしているのだ。

 ただ、あれきり仁はこの地を訪れていないのである。


 もう1つ……こちらが大きな理由なのだが、あの時の仁は『オリジナルの仁』であって、『今の複体の仁』ではない。

 今の仁は、当時のことを知ってはいるが実際に経験したわけではない(複体なのでオリジナルの記憶をそのまま受け継いではいるが)。


 だが、そんなことはこの際、些細ささいなことである。


「いやあ、忙しかったことは言い訳になりませんよ」


 本当に、あれ(ペガサス2を受け取ったこと)からいろいろなことがそれこそなし崩しに片付いていったのだ。

 そういう意味でも、『世話になった』わけである。


 ということで、案内された応接室で、仁たちは一時ひとときの歓談に興じたのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は2月6日(金)12:00の予定です。

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― 新着の感想 ―
まぁ恩人みたいなモノですからねぇ。直接顔を合わせて挨拶ぐらいはせにゃ。………実は忙し過ぎて忘れていたとか?
>>ガイド役をするよう命じた ハ「突然の追加仕事」 エ「男はつらいよ?」 仁「いやいやいやいや」 >>北へ ハ「某専務が宣伝したゲーム機の?」 エ「その後はライバル機へ?」 仁「一文字足りてないだろ…
元(400年前)の世界に戻るまでの記憶は、オリジナルも複体も同一記憶を持っていて、オリジナルのほうは“未来の記憶”が薄れていて“運命の強制力”によって必要以上の対策ができないようになっていたんだよねぇ…
感想一覧
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