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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
97 ゴウとルビーナ成長篇
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97-82 実用化へのステップアップ

 『思考会議』の魔導機(マギマシン)、その最終テストが終了。


「いやあ、『思考会議』は素晴らしかったですな!」

「これなら、効率アップがはかれるでしょう!」

「早く実用化してもらいたいものです」


 評判は上々である。


 時刻は午後1時30分。


「30分以上『向こう』にいたと思ったが、まだ1時半か」

「本当に効率がいいのだな」

「それでは、後ほど……明日でもいいので、気になった点や改善点など、指摘してください」


 仁がそう言うと、さっそく手が上がった。


「ナオ・スルハシ殿、何でしょうか?」

「改善点というより質問です。……この『思考会議』は、出席者が自国にいても使えるのでしょうか? それとも、やはり『アヴァロン』に出向いてもらわないとできないのでしょうか?」

「ああ、それは……ゴウ、答えられるかい?」


 仁は、回答をゴウに任せた。


「え、あ、はい。……今の仕様では無理、ですね」

「やはりだめですか」

「はい。ヘッドセットと本体の接続には、並列で512本のミスリル銀線を使っています。このデータ量を遠距離で通信するのは今の技術ではまだ(・・)無理です」

まだ(・・)ね」

「はい、まだ(・・)


 そこには、いずれ実現してみせる、という意気込みが感じられたので、仁も内心微笑んでいたりする。


「わかりました。その時を楽しみにすることにします」


「……他に何かございますか?」

「これも質問になりますが、この『思考会議』は何人まで使えるのですか?」


 今度の質問は『機械研』副室長のカイジ・オキ・イルノスキーから。

 これには、ルビーナが答えることになった。


「ええっと、今回のものは試作なので、30人までです。本番用は100人くらいは使えるようにします」

「おお、そうですか。それは楽しみだ」

「はい、楽しみにしていてください!」


 いつもよりも丁寧な口調で受け答えしたルビーナであった。

 その他にも、2、3の質問に答え、この日の確認実験は終わりとなり、協力者たちは皆それぞれの部署へと戻っていった。


*   *   *


「さて、基本的には大成功だったわけだが」


 午後2時、アーノルトはまとめに入った。


「まだ終わりではないですよ。次は実用品と、そのバックアップを作ることになります」


 『世界会議』にも使うものであるから、1つではなくもう1つ同じものをバックアップに作っておく、とアーノルトは言った。


「既に1つ、試作とはいえ実用品を仕上げているのだから、これは問題ないでしょう。問題があるとすれば、『中心』となる『魔結晶(マギクリスタル)』ですね」

「『魔結晶(マギクリスタル)』が何か?」

「それだけの高品質のものがないんですよ」


 仁の質問に、アーノルトが困ったような顔で答えた。


「ああ、そうだったな……今回のものも、俺が加工したんだっけ」

「そうなんですよ」

「そうか……なら、それは、今回も俺がなんとかしよう」

「よろしくお願いします」

「引き受けた」


 と、そういうことになったのである。


「その他の素材は問題ないでしょう」

「それならいいな」

「あと、改善点として私が気が付いたことは、ヘッドセットをもう少し軽くしたいですね」

「ああ、それはいえるかも」


 現代日本で使われているオートバイ用のヘルメットよりもかなり重い、といえば多少想像がつくであろうか。

 長時間(かぶ)っているのはきついかもしれない、と仁は感じた。


「材質と構造、厚みなんかを見直せばいいのかな?」


 エイラが言った。


「そうだな。軽銀を使っているんだから、もう少し厚みが薄くてもいいだろうし」

「あとは接続されている魔導ケーブルの重さもあると思うよ」

「そうだなあ」

「素線系を細くすれば軽くなると思う」


 使われているミスリル銀の比重は10.5。

 これをり線にして柔軟性を持たせるとともに、被覆材を工夫して引張強度・曲げ強度をアップすることで、重さを半減することができる。

 また、柔軟性が増したことで、首の動きもより楽になるはずである。


 そして、グローマ・トレーから、より面白いアイデアが出た。


「頭の後ろまで椅子の背もたれを長くして、そこからフレキシブルなアームにヘッドセットを取り付けたらどうかな?」

「あ、そうか。会議中にヘッドセットを被って歩き回るようなことはまずありえないか」

「というより歩き回っちゃだめだろ」


 そんなやり取りもあって、椅子にヘッドセットを取り付けたものをちょっと作ってみることにした。

 これは、ゴウとルビーナが10分で作り上げた。

 見た目は昭和の美容室にあるパーマの機械みたいな形だ、と仁は感じた(仁は床屋派)。


「うん、ヘッドセットを上下に調整できるようにすれば、身長差は気にならないな」

「でも、身動きすると接続が切れそうです」

「うーん、そうか」

「この型はだめですね」


 パーマの機械とは違い、頭にある程度密着していないと思考の読み取りができないため、椅子に取り付ける形式は没となった。


「あと、やれることはあるかな……」

「そうですね……細かいことですが、ヘッドセットの内側にクッションを張るとか、サイズ調整ができるようにする、というのもいいのではないでしょうか」


 グローマが意見を述べた。


「そういう細やかな気遣いも必要だな」

「あ、あと、ヘッドセットは専用にするんですか?」

「うーん……そういうことか」


 ヘルメットと同様、長くかぶっていると臭くなるのでは、と言うことである。


「『消臭(デオドラント)』や『浄化(クリーンアップ)』を使えばいいのでは?」

「いえ、やっぱり、自分専用の物、ということに意味があると思うのですよ」

「なるほどな。理解した」


 こうして、改善点を挙げていき、1つ1つ地道に解決していく『開発チーム』であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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