97-79 試作機成功
エイラとグローマが『現実』に戻ってきた。
「大成功ですよ!」
「あたしみたいにほとんど魔法が使えなくてもちゃんと会議ができたよ」
「それはよかった。それじゃあ、次は……」
ゴウとルビーナがもう一度参加し、4人で会議ができるかどうかをテストすることになる。
「それじゃあ、スタートします」
起動スイッチを押したのはゴウだった。
* * *
《お、今度は3人いるな。ゴウとルビーナ、それにグローマが見える》
《僕からはゴウ君、ルビーナさん、エイラが見えているよ》
ゴウとルビーナからも同じく、自分以外の3人の姿が確認された。
《それじゃあみんな、円卓の適当な場所に座ろう》
《おう》
年長者として、グローマが一時的に場を仕切った。
《さて、全員、自分以外の3人がよく見えているかな?》
《見えてるぞ》
《見えてます》
《見えているわ》
そして手を挙げたり表情を変えたりする動作も、問題なかった。
《あと数名欲しいな》
《それで動作試験は合格にできるだろうからな》
と、そこへ。
《来てみたよ》
《俺もだ》
《私も》
《私もです》
仁、アーノルト、エルザ、チェルの姿が現れた。
少しだけヘッドセットの設定をいじることで、彼らも参加できたのである。
さらにこれにより、途中参加も可能であることがわかった。
ちなみに、礼子は不慮の事態が生じた時のために待機している。
これにより、『自動人形』、『複体』、『人造人間』にも使えることがわかった(実は蓬莱島で実験済み。万が一仁とエルザが使えないと正体がバレるおそれがあるから)。
《計8名での会議も成功ですね》
《うん。不具合もなさそうだ》
《パラメーターの調整も必要なさそうです》
こうして、『思考会議』用の魔導機、その試作が完成したのである。
* * *
時刻は午後4時30分。
「最後に、皆さんの精神と思考の状態を、検査します」
エルザが言った。
『思考会議』を行ったがために、精神状態が不安定になったのではまずいからだ。
「お願いします」
「ん。……『精神走査』……異常なし」
エルザは『精神走査』で全員の診察を行い、全て異常なしという結果であった。
これで一安心である。
そして、時刻は午後4時50分。
「今日はこれで終わりにしよう。明日は『アヴァロン』内で希望者を募って、人数を増やしてみようと思う」
「主任、何人まで増やします?」
「そうだな、20人は試したいかな」
「でしたら、ヘッドセットをもっと増やさないと」
「ああ、そうか。今はちょうど8人分しか作っていなかったな」
「はい」
「よし。それじゃあ、人数を増やした試験は明日の午後にしよう。午前中はヘッドセットの増産を頼む」
「わかりました」
そういうことになり、この日は解散となった。
* * *
仁はゴウと、エルザはルビーナと共に風呂で寛いでいる。
「今日はうまくいったな」
「はい。ジン様のおかげです」
「いや、ゴウとルビーナが努力したからさ。これからも頑張れ」
「はい、ありがとうございます」
* * *
女湯では。
「これで、一段落」
「はい!」
「おめでとう、ルビちゃん」
「ありがと、メルちゃん!」
折からメルツェも入浴に来ており、今は3人でゆったりと湯に浸かっている。
「『思考』で会議ができるなんて、すごいわ!」
「議事録は『ログ』という形で記録されるから、見返すのも楽になるわ。何時何分、で調べればすぐに出てくるから」
「いいなあ、それ」
「課内会議でも使ってもらえると思うわ」
「ん、そうやっていろいろなデータを集めるのは、いいこと」
「ですよね!」
「でも、危ないことはないの? 意識がなくなるとか、洗脳されるとか」
これに答えたのはエルザ。
「洗脳は心配ない。そもそもそういう機能の魔法も『魔導装置』も使っていないから」
洗脳したくても洗脳なんてできない、とエルザは説明した。
それを引き継いで、ルビーナが説明を始める。
「そしてね、危険もないわ。参加者の意識レベルが低下するとスイッチが切れるようになっているし、そもそも少し集中して意識しないと会議に参加できないし」
「慣れが必要?」
「ほんのちょっとね」
「……『分身人形』を操作する、くらい」
他に誰も入浴客がいなかったので、エルザがそんな説明をした。
「ああ、そうなんですね。なら……割合簡単、かな」
エルザの説明を聞いて、メルツェもほっとしたのであった。
* * *
入浴後は待ち合わせて一緒に夕食。
ひと仕事をやり終えたゴウとルビーナは、達成感に満たされ、柔らかな表情をしていた。
「ふふ、2人共、いい表情をしてますね」
それはメルツェにも指摘されるほど。
「そ、そうかな?」
「ええ。でもちょっとうらやましいです」
ゴウたちの様に、成果が形として目に見えるような業種ではないので、メルツェとしてはちょっぴり残念だったようである……。
* * *
「今日は、ゴウとルビーナ、エイラとグローマの成長ぶりが見られて、嬉しかった」
「だなあ」
仁とエルザは居室で語り合っていた。
「4人とも『総合技術士』として、着実に経験を積んでいるよ」
「ん、同感」
「エルザの方だって、『内視鏡』に『カテーテル』と、新たな技術を導入しただろう?」
「うん。今は『アヴァロン病院』の医師たちに練習をさせようと、考えている」
「そうだな、練習は必要だな」
「その過程で、改良点を思い付いたら、お願い」
「ああ、改造は任せておいてくれ」
こうして、また一歩、『アヴァロン』は未来へと踏み出したのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20240702 修正
(誤)ゴウとルビーナからも同じく、自分以外の3人乗姿が確認された。
(正)ゴウとルビーナからも同じく、自分以外の3人の姿が確認された。
(誤)《おう」
(正)《おう》
(誤)《うん。不具合もなさそうだ」
(正)《うん。不具合もなさそうだ》
(誤)何時何分、で調べればすくに出てくるから」
(正)何時何分、で調べればすぐに出てくるから」
(誤)『でも、危ないことはないの?
(正)「でも、危ないことはないの?




