96-73 魔導高分子合成機、お披露目
1月26日。
朝一番で(『アヴァロン』ではだいたい午前7時)仁は『魔導高分子合成機』を『ハリケーン改』から降ろした。
もちろん蓬莱島から『転移門』で送ってきたものである。
1基あたりの重さはおよそ40キロ。
なので礼子とホープに1つずつ持ってもらい、『アカデミー』の第2実験室に運んだ。
その後、午前8時、最高管理官トマックス・バートマンに『魔導高分子合成機』の試作機が出来上がったことを報告。
「おお、本当にできたのですな!」
トマックス・バートマンは大喜び。
前日から予定していたため、動作確認に立ち会うだけの時間は空けてある。
『アカデミー』学長のセイバン・イライエ・センチ、技術主任アーノルトらとともに動作説明を聞くことになった。
『総合技術士』であるゴウ、ルビーナ、エイラ、グローマらも同席している。
その他『化学研究室』のケン・カシン、ルプラン・アルコーと、『材料研究室』のシホ・リョウ・イザイとケン・ザイブ・ノモもいた。
「では、説明を始めます」
解説は仁が行う。
「この『魔導機』を『魔導高分子合成機』と名付けました。その名のとおり、高分子を合成できるものです」
出席者は皆、『高分子』がどういうものか、概要を知っているためこの段階では質問は出ない。
「炭素Cと水素H、酸素Oは空気中から取り込むこともできますが、量が少ないため時間が掛かります。ですので原料を入れてやるのが手っ取り早いですね」
「おお、やはり」
仁は原料としての黒鉛(=炭素)と水(=水素と酸素)を『魔導高分子合成機』の上部に開いている投入口に入れた。
「比率を気にする必要はありません。『魔導機』の方で必要なだけを使用します」
「ふむ、便利ですな」
「そして使い方ですが、オリジナルのものにアレンジを加えています」
元々の『古代遺物』は言語体系もやや異なっている上、合成する高分子の名称が我々の知るものと異なっていたから、と仁は説明。
「高分子の名称は、『賢者』が遺した資料を元にしました」
「なるほど、多少は馴染み深いですからね」
『化学研究室』のメンバーが納得したように頷いた。
「ではまず、簡単なものから作ってみましょう」
仁は入力部を指し示す。
そこにはテンキーが付いていた。
「まだ試作ですので、指定する方法は少々分かりにくいですが、こちらの対照表にある高分子のナンバーを入力することで、その物質を合成してくれます」
「ほほう……」
「逆にいうと、その表にない物質は合成できません。……オリジナルはおそらくもっと多くの種類の高分子を合成できたのかもしれませんが」
「いや、それでもこれはすごいですよ。手に入る物質が一気に増えたのですから」
『材料研究室』のメンバーが興奮気味にそう言った。
「まずはナンバー51、『ポリエチレン』を作ります」
ちなみにナンバー01から19までは『アルカン』に割り当ててある。
こちらは気体もしくは液体なのでデモには向かないうえ劇物もあるからと仁は考え、51番のポリエチレンを選んだのである。
蛇足ながら、21から30は『アルケン』(炭素間の2重構造を1つ持つ)である(ポリエチレンやポリプロピレンの基)。
さらに31から40は『アルキン』(炭素間の3重結合を1つ持つ)となっている(アセチレンはこれ)。
「テンキーで51と入力すると正面の表示窓に『ポリエチレン』と表示されますので、間違いがなければこの『OK』ボタンを押します」
「なるほど。……間違って押すとどうなりますか?」
「例えば99は何も割り当てられていないナンバーですが、その場合は何も表示されません。52は『ポリプロピレン』なのですが、そちらと間違った場合は『やり直し』ボタンでもう一度最初から入力し直しです」
「それなら間違えにくそうですね」
「続いて必要なグラム数を入力します。表示部のこちらに『カーソル』……入力場所の指示が移動しますから、今回は『100』と入力します。100グラムの意味です。量産用はもっと大きく作りますのでキログラムで指定できるようになるでしょう」
そしてOKなら『合成』ボタンを押す、と仁は説明し、ボタンを押した。
「これも、より間違いを防ぐなら2度押しにするとか、確認画面をもう1ステップ増やせばいいでしょう」
そう説明しているうちにも『魔導高分子合成機』は動作を続け、出力口から半透明の乳白色をした『ペレット』(粒状の樹脂)が出てきた。
「これがポリエチレンです。熱可塑性樹脂ですので、溶かして型に流すことが可能です」
「操作そのものは手順さえ覚えてしまえば簡単ですな」
「気を付けていただきたいのはエポキシ……唯一の『熱硬化性樹脂』でして、A液とB液の2種類が専用の口から出てきます。これは硬化反応前なので半流動体ですから、受け皿のような容器を置いておく必要があります」
「なるほどなるほど」
「あとはゴムですね。これは加硫前のいわゆる『生ゴム』状態で出てきますので、これも容器に受け、別途加硫してください。あ、クロロプレンゴムは硫黄ではなくマグネシウム系を添加する……らしいです」
「よくわかりました」
さらに仁は説明を続ける。
「ゴムの場合は、塩素や臭素を必要とする種類があります。その場合は『不足原料があって合成できません』と表示されますので原料を追加してください。塩素は塩でいいでしょう。臭素は……鉱石ですね」
この表示も要改良であり、不足している原料名まで表示させたかった、と仁は説明した。
「ゴム用とそれ以外の樹脂用は分けたほうがいいかもしれませんね」
と仁が補足すれば、
「確かにそうですな」
と同意する声が多数であった。
「まずはこの試作機を使って、改善点を指摘してほしいと思います。……合成できる物質を増やすことはできないので、それ以外で」
「わかりました」
「いやあ、やり甲斐があります」
「素晴らしい贈り物をありがとうございます」
説明を聞いた面々は、この『古代遺物レプリカ』に大感激したのであった。
「ジン様、ありがとうございます!」
ゴウとルビーナも例外ではない。
「これで、一時止まっていたタイヤの研究も進められるだろう」
「はい!」
嬉しそうなルビーナの顔を見て、仁は満足げに頷いたのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20240318 修正
(誤)「ではまず、簡単なものか作ってみましょう」
(正)「ではまず、簡単なものから作ってみましょう」
(誤)「テンキーで51と入力しますすると正面の表示窓に『ポリエチレン』と表示されますので、
(正)「テンキーで51と入力すると正面の表示窓に『ポリエチレン』と表示されますので、
(旧)魔導高分子合成機、レビュー
(新)魔導高分子合成機、お披露目




