96-71 順調な滑り出し
1月25日。
『アヴァロン』は活気づいていた。
『通信のネットワーク』と『転移魔法陣のネットワーク』が機能し始めたのである。
『転移』は試験的にゴーレムが送られてきてまた戻っていった。
その次には、近衛騎士がやって来て、無事に着いたことを『通信』で本国に連絡した後、大臣クラスの者が一旦『アヴァロン』を訪れ、『転移の道』の開通を祝ってまた国へと帰っていったのである。
そして1日休んだ両チームは、再び世界各国へと散っていった。
もう設置作業にも慣れたため、今回は中型輸送機『エグレッタ』3と4のみで、仁とマキナ3世は同行しない。
もちろん何か問題が生じた場合は、構築中の『通信のネットワーク』を使い、連絡してくる手筈になっていた。
* * *
エルザ、リシア、ミーネ等による『看護師教育』も行われている。
午前中は知識優先ということで、初歩の医学講座を中心とした基礎教育。
エルザとリシアが交代で講義を行っていく。
独学でかなりの予習をしてきたのか、ナージャスの姉ナルン・ド・カーンは成績優秀である。
「彼女のやる気は本気みたいですね」
「うん。動機はさておき、いいことだと、思う」
そして午後は実習を交えて……としたかったのだが、入院患者がいないので、互いに患者役を交代しながらの模擬実習となる。
「最初から患者の世話はちょっと無理だろうから、このやり方でちょうどいい、かも」
「そうですね。私もそう思います」
ベッドメイクや着替えも含めた世話の練習なので、講師はミーネが中心だ。
実習は、行儀見習いということで皇太后陛下の侍女をしていたフリーデ・ガイニス・フォン・クラウダが手際のよさでは群を抜いていた。
「この調子で、進めたい」
「そうですね」
「いいと思います」
『看護師教育』は順調である……。
* * *
エイラとグローマによる『馬の動作解析』も順調に進み、4つ脚による歩行についてのデータも取れた。
今は『魔導樹脂』で簡単なモデルを作り、歩かせてみようとしているところだ。
見た目は全長50センチ、幅20センチの机である……。
「これが歩くのって、ちょっと不気味だな……」
「作った本人が何言ってる」
が、それを見た技術主任のアーノルトは絶賛。
「素晴らしいじゃないか。ちゃんと動物の歩行に見えるよ」
「あ、ありがとうございます」
「あとはこれを乗り物へと展開するわけだね」
「はい」
「期待しているよ」
こちらも順調に開発が進んでいた。
* * *
デウス・エクス・マキナ3世は、『大使館』をどうするかということで、最高管理官トマックス・バートマンと話し合っている。
「やはり『アヴァロン1』に作るべきでしょうな」
「うん、賛成だ。迎賓館を増築すればいいと思う」
「なるほど、いいですな」
基本的に、アルス上全ての国家の大使が在留するわけなので、迎賓館と共存できるわけだ。
「部屋の割当でもめませんかね?」
「そうだな……」
こんなことで、というような些事を気にするのが外交である。
「部屋のレイアウトは全部同じにして、どの国がどこを使うかはくじ引きで決めるというのはどうだろう?」
「おお、マキナ殿の案はいいですな」
「そうすると、5フロアほど増築して、1フロアあたり3国を割り当てられるようにしようか」
今のところ、クライン王国、フランツ王国、エゲレア王国、エリアス王国、セルロア王国、ショウロ皇国、ノルド連邦、ミツホ、そして近々『世界会議』入りするであろうメルカーナ公国、ミマカ公国、ダーラト公国、ノルハ公国、ジャグス公国の13国プラス『懐古党』を加え、14団体分があればよい。
「15組あれば当面は問題ないでしょう」
「うん。増築は可能だからな」
「では、予算ですが……」
「資材の大半は『アヴァロン3』にあるものを使えるし、作業もゴーレムにやらせるからな。費用は最小限に抑えるようにしよう」
「よろしくお願いします」
「任せてくれ」
こちらもまた、スムーズに話は決着したのである。
* * *
そして仁は、ゴウとルビーナの相談に乗っていた。
「うん、設計思想はいいと思うぞ」
「荷台を、荷物だけじゃなく人も乗せられるようにしたいと思っているんです」
「その場合、オプションの座席を工夫する必要があるかもな」
「それは考えています」
「ならよし」
仁は、自分がいた頃の現代日本でも、荷台に人を乗せて走っているのを(違法だが)見たことがあった。田舎では犬を乗せて走っている車もある。
「使う素材も問題ないな。ほぼ適材適所といえるし」
「ほぼ、ってことは、どこかに問題があるの?」
ルビーナが鋭い質問を投げかけた。
「あるといえばある。……タイヤと窓だな」
「そこは悩んだんですよ……」
「それはわかる。そんな2人に朗報がある」
「え?」
「何ですか?」
「実はつい最近、海底で『古代遺物』を見つけたんだよ」
「どんな?」
「今調査中だが、どうやら樹脂の合成ができるらしい」
「えっ!?」
「うまくいけば、ゴムの合成ができるかもしれない。そうしたら2人の考えている自動車に役立てられるだろう」
これを聞いて2人とも大喜び。
「いや、まだ、使えると決まったわけじゃないからな?」
と仁が言っても、
「ジン様が『できるかもしれない』と言ったんだから、きっとできるわよ」
とルビーナは主張したし、ゴウもまた、
「ジン様のことですから、きっとなんとかしてくれると思っています」
と全幅の信頼を寄せたのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20240316 修正
(誤)メルカーナ公国、ミマカ公国、ダーラト公国、ノルハこうお香、ジャグス公国の13国
(正)メルカーナ公国、ミマカ公国、ダーラト公国、ノルハ公国、ジャグス公国の13国
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(旧)かなり独学で予習をしてきたのか、ナージャスの姉ナルン・ド・カーンは成績優秀である。
(新)独学でかなりの予習をしてきたのか、ナージャスの姉ナルン・ド・カーンは成績優秀である。




