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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
96 アカデミー発展篇
3947/4414

96-49 バニラの香り

「おおおおお!」

「これは美味い!」

「香りが付いただけで味わいも変わるのか……」

「なんとも甘い、魅惑的な香り……」


 バニラの効果をわかりやすく知ってもらうため、ホットミルクにバニラを入れてみたものを全員に飲んでもらっている。

 その反応は見てのとおり。


「これって、どうやって香りをつけているんですか?」


 ロロナが尋ねた。

 さすがの彼女も、バニラの使い方までは把握していなかったようだ。


「今回は、熟成させたバニラのさやを切って中の種を出してミルクに混ぜただけです」

「さやは?」

「砂糖壺に入れて、香りを砂糖に移しました」


 説明をしたのはペリドリーダー。


「もうちょっと熟成させたほうがよさそうだから、本格的に使えるようになるのはもうちょっと待っててね」


 と、ハンナも補足する。


「プリンに入れたり、アイスクリームに入れたり、クリームやクッキーに入れたりすれば、一層美味しくできそうだよな」


 仁も、かつて現代日本で味わった菓子類のことを思い出しながら言葉を添えた。


「くふ、楽しみだね」

「食が豊かになるのはいいことですわ。ね、サキさん」


 サキとベルチェもまた、バニラの香りが気に入ったと見え、目を輝かせていたのである。


*   *   *


 同日、『アヴァロン』。

 こちらにいる仁とアーノルト、エルザ、リシアらは『分身人形(ドッペル)』である。

 そして蓬莱島での話は、当然『分身人形(ドッペル)』にも伝わっているわけだ。


 ゴウとルビーナの工房には、仁の『分身人形(ドッペル)』、仁Dが顔を出した。


「どうだ、順調か?」

「あ、ジン様」

「『世界会議』では、『電気技術』の有用性をマキナが説明しているはずだ。だから数日後には『電気技術初級講座』をしてもらうことになるだろうな」

「は、はい……」

「一応、準備はできてます」

「そうか。あとで見せてもらえるか?」

「はい。チェックしていただけたらありがたいです」

「それは任せろ。……で、今は何をやっていたんだ?」

「ええと、『抗菌素材』の検討です」

「なるほどな」


 ここで仁Dは、蓬莱島でリシアとサキが話していたことを前提に、指導を行うことにした。


「そういえば、抗菌塗料の効果の程度は比較したのか?」

「はい?」

「いや、抗菌塗料の効果があるのはわかった、それを、『抗菌処理』した軽銀と比べてみたのか、という意味だ」

「あ、それはやってないです」

「やっておいた方がいいぞ」


 定性的な結果だけでなく、定量的に効果の程を知っておくというのも大事だ、と仁Dは言った。


「そうですね……」

「やってみます」


 仁Dの指摘を受け、ゴウとルビーナは、シャーレの中に『抗菌塗料』を塗ったガラス片と、『抗菌処理』を施した軽銀の板を入れ、寒天培地で薄く覆った。

 因みにガラス片と軽銀の板は同じ大きさである。

 そしてそこに、前回実験したものと同じカビを植え付け、摂氏30度の雰囲気に保存したのである。


*   *   *


 さて、結果が出るまでには時間が掛かる。

 そこで、ゴウとルビーナは『タイヤ』の研究を行うことにした。


 こちらは、まだ目処めどが立たないテーマである。


「タイヤか……」


 ゴウがいずれは新型自動車を開発したいと思っていることを知っている仁は、あらためてゴウに尋ねてみることにした。


「ゴウ、回転式エンジンを使った自動車を作りたいのはわかっている」

「はい」

「タイヤで走ることにこだわる理由は何だ? はっきりと将来的なビジョンがあるのか?」

「え、ええと、どういうことです?」

「それはな……」


 仁は『未来の乗り物』という観点を示すことにした。


「ゴウとルビーナは『板状浮揚機レビテーションプレート』を開発しただろう?」

「はい」

「それを使って、地面からわずかに浮いた、いわば『フロートカー』を作ることだってできるはずだ」

「……はい」

「そういうことは考えなかったのか、ということだな」


 『フロートカー』であれば、タイヤは必要がない。

 速度も上げられるだろうし、高度を少し上げれば悪路でも問題がなく走れるわけだ。


「そうですね、ちょっとだけ考えました」

「ほう」

「でも、デメリットもありますよね」

「……例えば?」

「浮いているわけですから、急停止は不得意でしょう」

「まあそうだろうな」


 おそらく、そうした乗り物の推進機は『密閉型推進機関』系になると考えられる。

 速度が出せる分、急停止は難しい。

 『力場発生器フォースジェネレーター』を使うのでもなければ、どうしても制動距離は伸びてしまうだろう。


「それから、重い荷物を積むのが難しそうです」

「なるほど」


 『浮いて』いるわけだから、重量が変わると高度が下がることは容易に想像できる。

 重量によらず高度を一定に保つような制御も可能ではあるが、複雑になるだろう。

 同様に、重量バランスが変わると、車体(機体?)が傾くだろうから、それも制御しなくてはならない。


「要するに、制御が複雑になるので、一般用にするには難しいんじゃないかと思うんですよ」

「なるほどな」

「それに、低空で飛んでいる『スクイド』や『エグレッタ』と差別化が難しいかな、って」


 違いは翼の有無と機体(車体)の大きさくらいですし、とゴウは言った。


「わかった。そこまで考えているならいい。……なら、『タイヤ』も『一般向け』にふさわしいものを考えないとな」

「う……そ、そうですよね」


 あまり凝った構造のものや、製造が難しいものは避けるべきだというわけである。


「そうなると……」

「悩むわね……」


 ますます条件が厳しくなり、考え込むゴウとルビーナであった……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20240223 修正

(誤)説明をしたのはベリドリーダー。

(正)説明をしたのはペリドリーダー。


 20240322 修正

(誤)定性的な結果だけでなく、定量的に効果の程を知っておくというのも大事だ、と仁Dは言った

(正)定性的な結果だけでなく、定量的に効果の程を知っておくというのも大事だ、と仁Dは言った。

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>「ゴウとルビーナは『板状浮揚機レビテーションプレート』を開発しただろう?」 >「それを使って、地面からわずかに浮いた、いわば『フロートカー』を作ることだってできるはずだ」 >「要するに、制御が複雑…
[気になる点] >定性的な結果だけでなく、定量的に効果の程を知っておくというのも大事だ、と仁Dは言った 細かい事ですが、文末に『。』を追加した方が良いと思いますよ [一言] >「おおおおお!」 >「…
[一言] 藩「もうちょっと熟成させたほうがよさそうだから、本格的に使えるようになるのはもうちょっと待っててね」 仁「プリンに入れたり、アイスクリームに入れたり、クリームやクッキーに入れたりすれば、一層…
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