96-44 ゴウのエンジン、試作完成
さて、第1015回世界会議当日、出番のなかったゴウとルビーナが何をしていたかというと。
「……あれ……?」
「こんなはずじゃ……」
ゴウのアイデアを用いた『回転式エンジン』を試作していたのである。
回転軸に取り付けた重りの数は4つ。それを回す『極』……土属性魔法『石つぶて』を発する……も4つ。
ローター直径は20センチ。
製作には、ゴウとルビーナ2人掛かりで20分だった。
ここまでは順調。
だが、いくつか問題が出てきたのである。
「まず、回り出さなかったわね」
「うん。……原因はわかっているよ。作った時は気が付かなかったけど」
「極の位置と重りの位置にズレがあると駄目なのよね」
「そういうことだよな」
手でちょっと回してやると回り出すのである。
「3段式にして、重りの位置を段ごとにずらしていけば行けると思う」
「えっと、90度・45度・22.5度……ね。それで駄目ならもう1段増やして11.25度なら大丈夫だと思う」
「うん」
……と、回り出しの問題はこれで解決できそうだったのだが……。
「回転数が上がらないわね」
「うん……」
500回転(毎分)くらいまではいけるのだが、そこから回転数が上がらないのである。
「毎分3000回転くらいまではいけると思ったんだけどな……」
「考えられるのは……タイミングね」
「それしかなさそうだね」
重りが所定の位置に回ってきた時に『石つぶて』の魔法を放つのだが、この時にほんの僅かだがタイムラグが存在し、そのために重りの位置が微妙にズレてから魔法が放たれるため、回転数が上がらないと思われた。
「どうする、ゴウ?」
「うーん……回転数を検知して、それに合わせて放つタイミングを変える、という手が考えられる」
「そうね。ちょっと面倒だけど」
4サイクルレシプロエンジンの『可変バルブ機構』に通じるものがある。
「……あたしも、1つ思い付いたことがあるんだけど」
「え? ルビーナ、それは?」
「……うーん……ゴウのエンジンなのに、言っていいのかな……」
「そんなこと気にしないで、言ってみてよ」
「そう? それじゃあ……ええと、『石つぶて』の魔法って、反動がないでしょ?」
「うん。大体の魔法はそうだね」
「だったらさ、重りの数を……そうね、20個くらいにして、それぞれの重りから隣の重りに向かって『石つぶて』を放つのよ」
「え……? あ、そうか!」
反動がないのだから、この『石つぶて』を受けた重りは動き出す。
「ちょっとタービンみたいだね」
「でも行けそうでしょ?」
「うん。さすがルビーナだ。それじゃあ、試作を作ってみようか」
「いいの?」
「何が?」
「ゴウが作りたがっていたエンジンを、あたしが横取りしたみたいだから……」
ちょっと済まなそうな顔でルビーナが言った。
「そんなこと、気にしなくていいんだよ」
ゴウは笑って受け流した。
そして2人は、ルビーナのアイデアを元にした試作を作っていく。
所要時間はこれも20分。
「うーん……作っていて問題点が見えてきたわ」
「だね。まあとにかく回してみよう」
「ええ」
ルビーナ式回転式エンジンのテストが始まった。
「おお、ちゃんと始動する」
「それは当然……だけど、いきなり高速回転しだしたわね」
「うん。すごい回転数だ……毎分1万回転を超えてるよ」
「あ、ちょっと熱を持ってきたみたい。止めなきゃ」
ということで試運転は終了。
問題点を話し合うことに。
「軸受が平軸受だった、ってこともあると思うけど、やっぱり摺動部があるからよね」
「そうだろうね」
ローターの重りに『魔力素』を供給するための『ブラシ』が存在しており、その部分にも摩擦熱が発生したと思われる。
「これを解決するには……どうすればいいのかしら。あと回転数の特性がリニアじゃなかったし」
「待てよ……」
「ゴウ、何か思い付いたの?」
「うん。……まず、回転数がリニアじゃないのは、『石つぶて』を放つ重りが20個もあるからだよ」
「それはそうね」
最弱の出力で放っても、20個の重りがあるのでいきなり回転数が上がってしまうのである。
「この構造だと、どの重りに『石つぶて』を放つようにするか、という選択が非常に難しいよね」
軸に重りの数だけ『ブラシ』を設ければいいのかもしれないが、それはかなりのデメリットを伴う。
「逆に考えるんだよ」
「え……?」
「重りをたくさんつけたローターにして、『石つぶて』は外から放てばいいんだ」
「……あ、そっか」
ここが『逆』に考えた部分である。
「で、いっそのこと重りを全部繋げてしまったら、と思い付いたんだよ」
「どういうこと?」
「重りの数をどんどん増やしていったら、『リング状』になるだろう?」
「そうね」
「重りが途切れていないなら、タイミングなんて関係ないじゃないか」
「ああ、そうね。ゴウ、冴えてるじゃない!」
「いや、ルビーナのアイデアがあったから気が付いたのさ」
「その場合、『1個』じゃなく連続した物体でも『石つぶて』が効くのか調べてみないと」
「それはそうだね」
ということで2人は簡単な実験を行った。
『厚みのある円盤』の外周部に『石つぶて』を当てたら回転するかどうか、である。
結果をいうと、『回転した』。
『石つぶて』の魔法が働く範囲はややアバウトなようだと2人は結論づける。
「円盤だと重いから、中心部分は肉抜きしていいだろうね」
「そうね」
その結果、ローターは『ホイールにはめ込んだタイヤ』のような形状になる。
「これで、『石つぶて』を放つ『極』はとりあえず2極で実験しようか」
「いいと思うわ」
時刻は午前11時少し前。
2人は15分で試作を作り、試運転を行う。
「ああ、こんどはいいな」
回り出しに不安定さはない。
回転数も、毎分6000回転くらいに達した。
「これ以上は極数を増やせばよさそうだね」
「そうね。……なんとか見通しが立ったわね。おめでとう、ゴウ」
「ありがとう。ルビーナの協力のおかげだよ」
2人はがっちりと握手を交わしたのであった。
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