96-33 結果が出る
軽銀のテストピースを、『酸化』と『表面処理』を使い、つや消しの青にしたゴウとルビーナ。
この表面に抗菌効果があるのかどうか、テストを行うことにした。
といっても、エルザかリシアに『分析』で表面の状態を見てもらうだけのことであるが。
と、ここでデウス・エクス・マキナ3世が提案を行った。
「なら、何度も依頼するのは申し訳ないから、他の色に発色させたテストピースも調べてもらったほうがいいぞ」
「あ、そうですね」
ということで、2人は多少苦労して、軽銀を赤、黄、緑、青、紫、そして白(銀)に『酸化』処理をして着色し、『表面処理』を使い、つや消しにした。
「これを調べてもらおう」
「行きましょう」
* * *
「うん、どれも抗菌効果を発揮しているわ。でも一番は白、わずかに劣って紫、青、それから緑、黄、赤の順ね」
エルザは手が離せなかったので、リシアが解析してくれた。
「紫外線による抗菌効果だから、波長の短い光を反射する方が効果が高いのかな?」
「そうかもしれないわね」
ここで、リシアもこの軽銀の抗菌効果に興味を持った。
そこで、
「もしよかったら、このテストピースを切り分けてくれないかしら?」
と聞いてみる。
「いいですよ。4分の1くらいでいいですか?」
「それで十分よ」
ということなので、ゴウとルビーナは『分離』を使い、テストピースを4分の1ほどカットしてリシアに渡したのであった。
* * *
「とりあえず、『軽銀の抗菌処理』はできたわね」
「うん。これを利用すれば、抗菌塗料もできると思うよ」
「あ、そうね。今は……3時半か……もう少し時間があるから、そこまでやってみましょう」
「ああ、いいよ」
ゴウとルビーナは、就業時間終了までの1時間半を、抗菌塗料の開発に割当てることにした。
「一番効果のあるのは白だったわね」
「単純な酸化軽銀だよね」
ということで酸化軽銀(二酸化軽銀)の粉末を作製し、これをバインダー……要するにクリヤー塗料に混ぜれば、銀白色の塗料ができる。
「問題は、これに抗菌効果がどのくらいあるか、よね」
「さっそく試してみよう」
抗菌作用がほとんどないと思われる、厚紙の表面に塗布。
「『乾燥』を使って乾かそう」
水性塗料に混ぜたので『乾燥』を使って水分を飛ばせばテストピースの出来上がり。
「リシア先生が使ってくれたので、多分僕らにもできるよね……『分析』……うん、できた」
「……『分析』……私も。……で、いまいち効果が低いわね」
「何か混ぜるといいのかな? それともベースになるクリヤー塗料を変えてみたほうがいいのかな?」
ゴウとルビーナは考える。
そしてルビーナは何かに思い当たったようだ。
「あ、もしかしたら……」
「え?」
「このクリヤー塗料って、『紫外線吸収』か『紫外線反射』の効果があるんじゃないかしら?」
「そうか……どれどれ……うん、紫外線を反射するみたいだね」
「やっぱり」
ベースにした塗料が紫外線反射系の塗料だったため、主に紫外線によって抗菌効果を発揮する『酸化軽銀』がその力を発揮できなかった、ということがわかった。
「紫外線に対して何も効果のないクリヤー塗料を使いましょう」
「そうしよう」
そういうわけで2人は、一番安い、水性のクリヤー塗料を探し出してきたのである。
「紫外線に対する効果は何も書いてないから、これならいいだろうと思う」
「ええ、やってみましょう」
さっそくクリヤー塗料に混ぜ、厚紙に塗布、『乾燥』でそれを乾かす。
そして……。
「『分析』……あ、これは抗菌効果があった」
「『分析』……ほんとね。一応成功でいいのかしら?」
「いいと思う。時間は……あと45分くらいあるね。……酸化軽銀に何かを混ぜて、効果が上がるかどうか、はどうかな?」
「あ、いいわね。それをやってみましょう」
候補は……。
酸化アダマンタイト(=酸化タングステン)
銀
銅
の3つである。
この世界における原子番号74の元素は、タングステンではなくアダマンタイトと呼ばれている。
それは、どういう作用によるものなのか、原子核の中性子が魔力子に置き換わったものである。
物理特性としては、比重はタングステンとほぼ同じだが、強度や融点などはずっと高い。
化学特性も、タングステンよりも安定している。
が、工学魔法『酸化』を使えば酸化物を得ることができた。
そして、酸化タングステンと同様、酸化アダマンタイトは抗菌作用を有するのである。
銀と銅の抗菌作用は、地球でも認められている。
結果は……。
どれも効果が上がった。
一番は酸化アダマンタイト。次に銀、銅であった。
「これは……コストとの兼ね合いだね」
「そうね……」
時刻は午後4時50分。
就業時間内に結果を出せて、ほっとしたゴウとルビーナ。
「あとは結果をまとめておけばいいね」
「とりあえずデータベースに入力しておきましょ」
こうして、2人にとって実りある1日は終わったのである。
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