93-30 役割分担
『賊ゴーレム』の本当の『制御核』が明らかになり、デウス・エクス・マキナ3世はその内容を読み取っていく。
仁とアーノルトはその様子をじっと見守っていた。
「だいたいわかったぞ」
20秒ほどの後にマキナが口を開いた。
「このゴーレムは『試作型』で『Xー1104型』。製作者は『ミハイル・ショードー』だ」
「エゲレア王国の『アンダーギ鉱山』に拠点を構える採掘者と同じ名前だな」
実際、同一人物なのだろうと仁は思っている。
「主人は『レボリューショナー』となっているな」
「『レボリューショナー』?」
「ああ。個人ではなく団体だな。その意味するところは『革命者』だ」
「それなら『レボリューショニスト』じゃないか?」
エゲレア王国式の言い方である。
「別に文法に乗っ取る必要はないと考えたんだろう。なにせ『革命者』だからな」
「『革命家』じゃないんだな……」
「『革命者』だ。それは『制御核』に刻まれている」
「……」
「まあ名称はいい。それから? 続けてくれ」
「あとは大した情報はないな。完全自律型ではないから仕方がない」
「そうか……」
「苦労した割に、思ったより情報は得られなかったな……残念だ」
「まあそういうこともあるさ」
「一応、このゴーレムの……ダミーも含めた『制御核』の情報は全部老君に回しておくよ。もう少し何かわかるかもしれないからな」
「それがいいな」
「ジンさん、よろしくお願いします」
時刻は午前4時半。
「……俺は部屋へ戻って仮眠を取るよ」
「ああ、それがいい」
「ジンさん、ご苦労様でした」
今の仁は身体を構成する原子が全て『魔原子』で構成された『複体』である。
身体の働きは元の仁と同じなので、疲れもすれば眠くもなる。
ただ細胞の劣化がなく、不死ではないが不老である……はず(理論上は。実際には数百年〜数万年を経てみないと証明できない)。
そんな仁は、すっかり定宿となった『アヴァロン』の寝室で短い仮眠を取るのであった。
* * *
一眠りした仁が目を覚ましたのは午前7時。
いつもより少し遅いが、まあまあ早起きといえる時間だ。
「おはよう、ジン兄」
一足先に起きていたエルザが顔を見せた。
「おはよう、昨夜遅く戻ってきたんだ」
「ん、知ってる。……顔を洗ったら食事に行こう?」
「ああ、そうしよう」
というわけで、仁とエルザは食堂へ。もちろん礼子も一緒である。
「……で、どうだった?」
「うん、私たちは…………」
「そんなことがあったのか」
「で、ジン兄は?」
「こっちはな…………」
というように、情報交換を行う2人。
「かなりごちゃごちゃしてきたな……」
「それは、同感」
多方面で開発、教育、調査などを行っているため、それを取りまとめようとすると混沌としてくるのだ。
「ここは完全に役割を切り分けないとどっちつかずになるな」
「それも同感」
「それじゃあ……」
まずは仁とエルザで話し合い、分担を決める。
これは比較的簡単だ。
まずはエルザとリシア。
仁としては、エルザには医療系教育を主導してもらいたいと思っていたし、エルザもそれが必要と感じていたからである。
リシアには講師として実際に教育を行ってもらう。
次に、ゴウとルビーナ。
「2人には、このままゴーレムの開発を続けてもらえばいいと思う」
「ん、賛成。『アヴァロン』はゴーレム不足。できるだけそれを解消してもらいたい」
そしてマキナ。
「『アヴァロン1』と『アヴァロン2』の整備と同時並行で内部情報がどうして漏れたのか、追いかけてもらいたいな」
「ん、いいと思う」
「問題は俺だ」
「そう。ジン兄はいくつも抱えこんでしまった」
「だよなあ」
ゴウとルビーナの指導。
『賊ゴーレム』の解析。
『アンダーギ鉱山』と『ミハイル・ショードー』の調査。
そして多分『小型ゴーレム』の解析も……。
「ゴウとルビーナの方はまあまあ落ち着いているからいいとして、『賊ゴーレム』はアーノルトに任せるか……」
「むしろ、そうするべき」
「じゃあ『小型ゴーレム』は……?」
「そっちもアーノルトさんで」
「鉱山とミハイルは?」
「『第5列』が派遣されたんでしょ? 任せたら?」
「で、俺は?」
「ジン兄にしかできないことをやるべき」
俺にしかできないことか……と仁は考えた。
「今『アヴァロン』で問題になっているのは人手不足だ」
「ん」
「同時にゴーレムも不足している」
「そのとおり」
「よし、ゴーレムを増やそう。『設計基』はゴウたちのがあるし」
「それ、いい。ジン兄が本気の半分くらい出せば、半日でゴーレム不足は解消すると思う」
「だな」
まずはそこから始めるのがベターだろうということで仁とエルザの意見は一致した。
「一歩一歩だな」
「うん」
「ローマは一日にして成らず、だもんな」
「……なんだっけ、それ」
「ああ、悪い」
「『アヴァロンは一日にして成らず』の方がいいかもな」
本当なら『蓬莱島は』と言いたい仁である。
「ん、なんとなくわかった」
まあそんなわけで、仁はまず『アヴァロン』の人手不足を解決すべく動き出したのである。
* * *
仁はまず最高管理官トマックス・バートマンに断りを入れる。
「おお、ジン殿がゴーレム製作のサポートをしてくださるのですな」
「ええ。それで、資材の使用許可を」
「もちろんですとも」
トマックス・バートマンは笑って、第6工房の使用許可と、資材の『無制限の』使用許可とを出してくれたのである。
そこで仁は礼子に手伝ってもらい、まずは2体分の資材を倉庫から工房へ運び込む。
そして『技術系ゴーレム』を作り始めた。
「性能的には旧『職人』の4分の1くらいだ」
素材の品質的にいってもそのあたりが上限である。
礼子を助手に、仁は2体のゴーレムを20分で組み上げたのであった。
「よし、名前は……『テクノ』にしよう。……『起動』」
「はい、ジン様」
ここに、仁のゴーレム大量生産が開始された……。
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