93-23 小型ゴーレム
『ピスティ』と『フレール』が取り押さえたのは、身長40センチほどのゴーレム。
「これは……」
「見たことがない型だな」
危機感のない2人を見てマキナは、
「ちょっと待て、2人とも。……『魔法障壁』『物理障壁』」
と、2重の結界を展開したのである。
この『魔法障壁』は、マキナを操縦する周波帯以外はシャットアウトするものだ。
エネルギーについても、今のマキナは自由魔力素だけでなく亜自由魔力素でも動いているので動力源は問題ない。
「この2体の目的や所属がわからない以上、厳重な警戒が必要だろう」
「は、はい」
「……そして、こいつらの解析を行うから、引き渡してくれるか?」
『アヴァロン』への無断侵入は間違いなく、ここに潜んでいたということは、情報を集めていたと推測される。
つまり『スパイ』である。
なのでマキナが調査することに何の問題もない。
「あ、はい」
「むしろ、お願いします」
「よし」
マキナは2体に『魔力素除去器』の波動を浴びせ、完全停止したことを確認してから結界を解除した。
「それじゃあ、持っていくから」
「よろしくお願いします」
「ああ」
* * *
2体をその手に抱えたマキナは、従騎士レイに扮した『第5列』の『スピカ9』=『リラ』と共に最高管理官トマックス・バートマンの執務室を訪れていた。
そして念入りに室内を確認してから『魔法障壁』と『物理障壁』を展開。
「これでまず盗聴はできないだろう」
「一体何ごとですか?」
「盗聴の危険があったから、結界を張った。これで、尋常な手段ではここでの話は盗聴できない」
と前置きをしたマキナは、ゴウとルビーナの第5工房で小型のゴーレム2体を捕らえたことを説明した。
「なるほど、そこに抱えてらっしゃるのがそれですね」
「そうなんだ」
マキナは執務室の予備テーブルに2体の小型ゴーレムを横たえた。
「ふむ」
「かなり精巧な作りですな、マキナ殿」
「まあ、そうだな」
トマックス・バートマンは精巧な作りと言ったが、マキナの目にはいろいろとアラが見て取れた。
4分の1サイズのゴーレム。人間が作れる最小サイズに近いだろう。
精巧とは言っても、仁が作った『リトル職人』には比ぶべくもない。
「とりあえず、ざっとばらしてみるぞ」
と告げたマキナは、トマックス・バートマンの返事を待たずに小型ゴーレムの1体を分解し始めた。
4分の1サイズなら十分に対処できるのだ。
「お、おお!」
トマックス・バートマンの口からそんな声が漏れるほど、マキナの手際はよかった。
みるみるうちに胴体部の外装が外され、内部が顕になった。
「アドリアナ式でも球体関節式でもないな。……だが、まあ理に適った構造だ」
マキナはそう評した。
「小型化するために簡略化したのだろうな」
人の手で可能な加工精度には限界がある。
無理に縮小しようとせずに、省略できるところは省略することで、作りやすさと性能を両立させることもできるのだ。
「とはいえかなり無理をしている部分もあるな」
「私には見分けが付きませんが、マキナ殿には見えているのでしょうなあ」
「うむ。……このゴーレムを作った技術者は『アヴァロン』のトップレベルと同等くらいだな」
「そんなに!」
「こういう奴がまだ市井にいるとはな」
賊に加担している、あるいは賊の中枢にいるとしたら惜しい、とマキナは呟いた。
「さて、『制御核』を調べれば、少しは情報を得られるだろう」
マキナは腹部に収められていた『制御核』を取り出した。
こちらは4分の1サイズとはいかず、2分の1くらいの大きさである。
「『分析』……『読み取り』……む?」
「どうしました、マキナ殿?」
「……『製作主』の名前が入っていない。それに『主人』も決められていない」
「どういうことです?」
技術者ではないトマックス・バートマンには、マキナの言葉の背景までは読み取れなかった。
「『製作主』の名前はまあいい。そういう情報を消去すればいいからな」
調査・追跡から逃れるために、そうした処理をするのは理解できる。
だが『主人』がいない、ということは通常ではありえないのだ。
「おまけに、基本的な動作シーケンスしか持っていない。これで動けるというのが不思議なくらいだ」
「なんと?」
「誰かに命令されて動いているわけではない。自分の意志で動いているわけではない。これをどう思う?」
「私にはわかりかねます……」
「つまりこいつは『ダミー』あるいは『スレーブ』なんだ」
「えっ?」
マキナの言葉に、トマックス・バートマンは驚愕した。
「ダミーはわかりますが、『スレーブ』とは?」
「『マスター』によって動かされる魔導機のことだが、この場合は『操縦される側』くらいの意味だ」
「つまり『マスター』……操縦する側がいる、と?」
「おそらくは近距離にな」
「なんと、なんと……!」
「こいつらを操っていた真の敵がどこかにいる。おそらくは『アヴァロン』内に」
マキナは小型ゴーレムをじっと見つめ、呟いた。
「狡猾そうな相手だな……」
いつもお読みいただきありがとうございます。
20230616 修正
(旧)のんきな2人を見てマキナは、
(新)危機感のない2人を見てマキナは、
(誤)こちらは4分の1サイズとはいかず、2分の1くらいの大きさである・
(正)こちらは4分の1サイズとはいかず、2分の1くらいの大きさである。




