92-07 臨時世界会議、開催
3902年9月22日。
『臨時世界会議』開催日である。
参加者は2日以上前から『アヴァロン』に滞在していたため、午前8時からの開催となった。
「それでは『臨時世界会議』の開催を、ここに宣言します」
議長のシオンが宣言を行い、参加者たちの拍手によって『臨時世界会議』は開始された。
仁やアーノルト、ゴウ、ルビーナらも出席している。
「今回の議題は『アヴァロン2』について、そして開発に成功した『重力魔法機関』について、です」
シオンはまず『アヴァロン2』についての討論を行う、と宣言し、異議は出なかった。
「お集まりの方々、は、本日までに多少なりとも『アヴァロン2』についてお調べになったことでしょう。そうした必要最低限の知識がおありという前提で討論していきたいと思います」
これに関しても異論は出ない。皆、『アヴァロン2』に関しては並々ならぬ関心を持っているため、例外なく事前に配布された資料を熟読していたのだ。
「ではまず、建造された今代魔法工学師、ジン殿からお話を伺いましょう」
シオンは仁を指名し、仁はそれを受け、立ち上がって演壇に上がった。
「ご指名を受けましたジン・ニドーです。では、『アヴァロン2』についてご説明致します。中心となっているのは直径200メートルの『球形基地』、管理魔導頭脳は『ファースト』。『魔導大戦』時の遺跡だったものを接収し、手を加えて仕上げたものです。ここまではご存知でしょう」
説明と同時に、演壇の後ろにある巨大な魔導投影窓に『アヴァロン2』の外観が映し出される。
こちらは礼子が担当し、仁の説明に合わせて画像を差し替えていくことになっている。
一息置いて、質問などないか確認するが、どこからも声は上がらなかったので仁は説明を続ける。
「その『球形基地』の外側に直径1キロメートル、高さ1キロメートルの構造物を作りました。まあ作ってから転移で運び込んだのですが」
『アヴァロン2』の断面図が映し出される。
ここで会議場がどよめいた。
「ご覧になった方もいらっしゃるかと。技術的には難しいことはありませんでした。ただ超巨大な転移魔法陣を使っただけです」
会場からは唸り声が聞こえる。超巨大な転移魔法陣、それを正確に描くのは並大抵のことではないことを知っている者だろう。
「その『球形基地』を中心に据え、その『管理魔導頭脳ファースト』を調整して『アヴァロン2』全体を統括する管理魔導頭脳としています」
会場は静まり返った。
「『球形基地』と『アヴァロン2』は、必要な設備以外は未実装としています。それは、今後の開発方針に任せようと考えたからです」
「ジン殿、その開発方針は、ここ『世界会議』で決めていいのですね?」
「はい、シオン議長。自分としましては『食糧生産』を主に、いろいろな生産拠点としていただくと嬉しいですが」
「それにつきましてはこの後討論させていただきます。他に何かありますか?」
「はい。……ここの『管理魔導頭脳』……『ファースト』という名前です……に、『データベース』の管理を任せることにしました」
「データベースですか。それについて詳しくお願いします」
「はい。では、お手元の資料をご覧ください」
ここで仁は、事前に配っておいた小冊子を見てほしいと告げた。
参加者たちには『アヴァロン』への来訪時に配ってもらってあったので、皆一度は目を通していたはずだ。
そして事前準備を怠るような怠け者は『世界会議』にはいない。
「データベースとは、魔導頭脳に管理させた巨大な辞書のようなものです」
わかりやすく、を心掛けつつ仁は説明していく。
「閲覧レベルによって制限を加えつつ、この世界の知識を閲覧できるようにしたい、これが『データベース』の目的です」
「なるほど、その閲覧レベルというのはどうやって決まるのですか?」
これについてもシオンが代表して質問し、問答のような形で説明が進んでいく。
「データベースの中には、危険な情報もあるわけです。例えば『毒薬』ですね」
「それは理解できます」
「ええ。『作用』『色などの見た目』などは誰でも閲覧できた方がいいですが、『成分』や『作り方』は制限を掛ける必要があるでしょう」
「確かにそうですね。今の例えはわかりやすいと思います」
「おそれいります。……で、ですね、その制限をどう掛けていくか、も『世界会議』で検討していただきたいと思います」
「わかりました」
この他にも仁は『アヴァロン2』の機能についてや、内部の設備についての説明を行った。
「ジン殿、ありがとうございました。……皆さんからの質問はありますか?」
「はい」
「では、セルロア王国マルセル殿」
「はい。……ええ、『球形基地』を『転移魔法陣』で今の位置に転移させたわけですが、今後誤動作してどこかへ転移してしまう、という危険はないのですか?」
「お答えします。……結論から言いますとその危険はありません。といいますのも、転移に使った魔法陣はきれいさっぱり消去してしまったからです。また、今の『球形基地』の下方には、転移魔法陣を描けるようなスペースはありません」
「なるほど、よくわかりました」
「他にご質問のある方は?」
「では」
「はい、ショウロ皇国レグレイ殿」
「お尋ねします。その『データベース』の情報は随時更新されていくのですか?」
「お答えします。……『はい、そうです』。権限上位の者が追加、修正できるようにしたいと思います。その場合、内容の真偽を確認する審査委員会のような組織が必要になる可能性がありますが」
「なるほど、理解しました」
……と、このような質疑応答が30分ほど繰り返され、仁も1つ1つに懇切丁寧に答えていったのであった。
* * *
そんなこんなで10時の中休み。
15分ほど休憩を挟んで、正午まで会議の時間だ。
この休み時間、まあトイレ休憩である。
「……やっぱりジン様って場馴れしているわよね」
「そりゃあ、ジン様だし」
「説明する内容を100パーセント理解しているからこそよね」
「それはあると思う」
「午後は私たちでしょ? ゴウ、大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない」
ゴウとルビーナはこそこそ話している。
そこへメルツェがやって来た。
「ゴウさん、ルビちゃん」
「あ、メルツェ」
「メルちゃん」
「午後は2人の番なんですってね。私も聞いてみたいけど、お仕事で無理だから、陰ながら応援してるわ。頑張ってね!」
「うん、頑張るよ……」
そう答えるしかないゴウであった……。
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本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
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