92-05 9月21日、誕生会と会議の準備
9月21日は『仁ファミリー』の語り部、ヴィヴィアンの誕生日である。
もちろん蓬莱島で誕生パーティーが開かれていた。
「ヴィヴィアン、誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
「誕生日おめでとう!」
「ありがとう、皆さん」
『仁ファミリー』の皆からお祝いの花束を受け取り、満面の笑みを浮かべるヴィヴィアン。
「やっぱり幾つになっても誕生日を祝ってもらえるというのは嬉しいものね、ステア」
「そうよね、ヴィー」
ステアリーナはヴィヴィアンの最も古くからの友人だ。
それぞれヴィー、ステアと呼び合う仲である。
「ジン君も大仕事を終えたみたいだしね」
「ええ。……ああ、あそこにいるミロウィーナが詳しいはずよ」
そのミロウィーナは仁と話をしていた。
「今回は『ジャック』に随分と世話になったよ」
「『ジャック』は喜々として作業をしていましたよ」
「負担になっていなければよかったよ」
「それは大丈夫ですよ、ジン君」
そんな様子を見てヴィヴィアンは、
「ジン君の偉業がまた1つ、ね。これも物語にしないと」
と言う。
ステアリーナは笑って友人に、
「それ、ジン君には内緒ね。彼、照れて『やめてくれ』、って言いそうだから」
と告げた。
「ほんとね。私は後世に記録を残そうと思っているだけだけど」
その仁のところにラインハルトが寄っていった。
「ジン、この前ちょっと見せてもらったけど、『アヴァロン2』って、内部が随分とがらんどうなんだな」
「ああ、そうなんだ。『アヴァロン』に追加したわけだけど、何に使うかは住民に任せようと思ってさ」
「でも、データベースの管理には使うんだろう?」
「まあそうだけど、端末は『アヴァロン2』じゃなく『アヴァロン』に置いてもいいしな」
「それもそうか」
「むしろ1つは『アカデミー』に置きたいよな。それから『世界警備隊』と『世界会議』にも」
そうした工事はまだこれからである。
そんな仁のところへ、今度はマリッカがやって来た。
「ジンしゃま、ゴウとルビーナは元気でやっていますか?」
「ああ、随分と成長したぞ」
それを聞き、マリッカは嬉しそうに微笑んだ。
「そうですか、それは嬉しいです」
「『アカデミー』所属になったから、気軽に外出はできなくなったけどな。だからこの前の『オノゴロ島第5回飛行機競技会』の録画を見せたら出たがっていたよ」
「そうでしょうね」
「だが2人には、俺と違って、表舞台で力を奮ってほしいと思っているよ」
そう言った仁は少し寂しそうであった。
「まあ、最終的には2人自身が決めてくれればいいんだがな」
「あの子たちでしたら、きっと大丈夫。表の世界でやっていけましゅよ」
* * *
同日、『アヴァロン』。
『世界会議』を翌日に控え、『アヴァロン』内は活気に満ちていた。
大半は『アヴァロン2』のもたらす恩恵について想像を巡らせており。また仁の途方もない建造能力についても話題に上っていた。
「さすがジン殿だ」
「『世界会議』の最終日は『アヴァロン2』の内部公開ですな」
「楽しみですよ」
「いや、まったく」
「それに『データベース』ですか」
「概念はわかるのですが」
「それも楽しみですね」
『アヴァロン2』と『データベース』については、事前に簡単な資料が配られており、参加者たちは、いわば『予習』していたわけである。
* * *
『世界会議』の開催準備で大童なのは職員たちである。
その中にはメルツェの姿もあった。
「大会議室の掃除、椅子の準備、資料の印刷、食事の下ごしらえと素材の確保、宿泊用施設の確認、部屋の割り当て……」
やることはいくらでもあった。
半分以上は汎用ゴーレムが手伝ってくれるので、肉体的な負担は少ないが、管理するための精神的負担が大きい。
(作業は半ばマニュアル化されていますけど、まだ足りないですよね……)
メルツェは管理職見習いとしてあちこちの手伝いをしながら、作業の全体像を頭の中に構成していった。
そしてそこから、作業の流れを導き出し、最適化していく。
その最適化された作業と現実の作業との比較をし、改善点を洗い出し、改善案を考えていく……。
とはいえ今のメルツェはただの見習い、意見が通るはずもない。
なので将来への課題として、作業の合間合間にメモを残しておくことにする。
だが、忙しく働いていたせいか、そんなメモの1枚がポケットから落ちたことにも気が付かないメルツェであった……。
* * *
「おや……?」
『世界会議』の会議場の様子を見て回っていた最高管理官トマックス・バートマンは、1枚の紙切れを見つけ、拾い上げた。
「ふむ、これは……!」
書かれている内容は、作業の要諦と、問題点と、改善案……その一部であった。
一部なので改善の全体像は掴めないが、内容が適切であることだけはわかった。
「これを書いた者を見つけ出し、話を聞きたいものだな……」
トマックス・バートマンはそうひとりごちて、メモをポケットにしまったのであった。
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