91-31 終幕
ついに『オノゴロ島第5回飛行機競技会』に決着が付いた。
各選手の得点は次のとおり。
各競技の順位=得点で、少ない方が上位である。
タイムトライアルゼロヨンチキン 空戦 合計 順位
ゼッケン1 『スカイハート』 ③ ① ③ ① 8 ①
ゼッケン2 『ブラックサンダー』 ⑤ ⑨ ⑤ ③ 22 ⑤
ゼッケン3 『レッドアロー』 ⑦ ⑧ ⑦ ⑤ 27 ⑧
ゼッケン4 『シルヴィー』 ⑥ ⑤ ⑥ ⑤ 22 ⑤
ゼッケン5 『イプシロン』 ④ ⑥ ④ ⑤ 19 ④
ゼッケン6 『バロン』 ⑨ ⑦ ⑨ ⑤ 30 ⑩
ゼッケン7 『ナイトバード』 ② ② ② ③ 9 ②
ゼッケン8 『ブルーローズ』 ⑩ ③ ⑩ ⑤ 28 ⑨
ゼッケン9 『ウラカン』 ⑧ ④ ⑧ ⑤ 25 ⑦
ゼッケン10『ティーガー』 ① ⑩ ① ② 14 ③
栄冠に輝いたのはシュウ・ニドー。ゼッケン1『スカイハート』であった。
彼には、仁からの優勝トロフィーが授与された。
「おめでとう、シュウ」
「ありがとうございます!」
万雷の拍手が起こり、なかなか鳴り止まなかった……。
* * *
『いやあ、見応えがありましたねえ、ジン様』
『まったくだ。みんな成長しているなあ』
『ジン様のお言葉、皆嬉しく聞いておりますよ』
『ますます精進し、より高みに至ってもらいたいものだ』
『ありがとうございます。皆でがんばります』
ここでラックハルトは、仁に提案というかお願いを1つ。
『ジン様、まだ時間が少しありますので、デモ飛行を見せていただけませんか?』
『え? まあ、構わないが……操縦を礼子に任せてもいいか? そうしないと解説ができないから』
『ああ、そうしていただけますか。では、ぜひ!』
というやり取りがあって、仁はそのまま解説席に留まり、代わって礼子が操縦席に座った。
『では……『チキンレース』でよろしいのですか?』
『ああ。操縦者と機体とがマッチングするとどのくらいのことができるのか、見てもらおう』
『わかりました、お願いします!』
* * *
ということで、デモ飛行が行われることになった。
「では、行きます」
礼子の操縦で『ジーク1』は滑走後急上昇。
『チキンレース』に使われた疑似海面の結界が張られる。
そして高度300メートルから『ジーク1』は急降下。
『す、凄い勢いです!』
『垂直降下だからな。そもそもチキンレースはゆっくりやったら意味がないしな。ああ、今思い出したが、『チキンレース』にはもう1つあったんだ』
……と言っているうちに『ジーク1』は疑似海面をすれすれにかすめて上昇。
『……凄い! 0.3メートルです! ……あ、もう一度行うようです!』
『そうだな。レースは3回のトライアルだから、礼子も3回やるだろう』
『なるほど! ……おお、す、凄い! まさにギリギリです!!』
2度めの記録は0.2メートルだった。
『礼子の反応速度をもってすればこのくらいは、な』
この速度域では『ジーク1』に搭載した高度センサーの反応も追いつかないので、純粋に礼子の操縦技術によるといえる。
そして3度目。
『……出ました! 0.07メートル! すぅごぉい記録ですっ!!』
『うん、礼子ならできるよな』
仁の『ジーク1』が出した記録は0.07+0.2で0.27となる。
まさにぶっちぎりの記録であった。
『プロペラ機もここまでできるんですね……』
『俺が操縦したらこの倍以上で止まるだろうけどな』
礼子に任せたもう1つの理由がこれである。
同じ圧倒的な記録を出すにしても、仁ではなく礼子が操縦することで、多少なりとも見る者の心の平穏を保てるのではないかと考えたのだ。
『それからジン様、先程何か言いかけてましたよね?』
『え? ああ、そうだ。『チキンレース』について思い出したことがあったんだ』
『それは?』
『ええとな……』
元々の『チキンレース』もしくは『チキンラン』は、2台の自動車が互いに全速力で向かい合い、激突を避けるため先にハンドルを切ったほうが負け、というものらしい、と仁は言った。
『それは危険ですね……』
『無理をすれば衝突だからな。まあ、命を粗末にするものがやるレースだよ。そういう意味で、今回の設定はよかったと思う』
『ありがとうございます』
急降下という高速が出てしまう条件、仮想海面という危険そうで危険のないボーダーライン、遠隔操縦の機体。
破滅的にならずに競技として成立させたのはよかった、と仁は実行員を褒めたのだった。
* * *
『さて、空戦はどうする? 『ジーク1』には銃も積んでいないし、特殊塗料も塗っていないが』
『では、曲技飛行をお見せいただければ!』
『そうか、わかった。……礼子!』
『仲間の腕輪』の魔素通信機機能を使い、仁は礼子に指示を出した。
『礼子、『ジーク1』で曲技飛行を行ってくれ』
『はい、お父さま』
まだ空中にいた礼子は、再度上昇を始めた。疑似海面のある高度30メートル付近では高度不足なのだ。
『ジーク1』は、60度くらいの角度で急上昇。
みるみるうちに高度は上がり、500メートルに達したところで礼子は宙返りを行った。それも、連続宙返りだ。
『おお! 見事な宙返りですね! しかも小さい!』
旋回半径は、今回見たどの機体よりも小さい。それを連続5回。
そこから今度は逆宙返りを連続5回。
その後は8の字飛行を連続5回。
『おお、素晴らしい! 宙返り、逆宙返り、それを組みわせた8の字。ほとんどズレが見られません!』
『結界で風を防いでくれているからな。室内で飛ばしているようなものだ』
続いて『ジーク1』は水平旋回に入った。
と思いきや……。
『四つ葉のクローバーだな』
『⌘』のような飛び方をしたわけである。
続いて三角宙返りと逆三角宙返りを組み合わせた8の字、俗に言う『アワー・グラス(砂時計)』。
『素晴らしい飛行ですね。語彙が乏しくて面目次第もないのですが、それしか表現のしようがありません!』
『礼子も自由に飛ばしているな……』
それからも数々の演技を見せた『ジーク1』は、傾きかけた太陽セランの光を受け、ゆっくりと降下、そして着陸した。
着陸と同時に、割れんばかりの拍手が起きる。
「ジン様ー! レーコ様ー!」
「『魔法工学師』万歳!」
「ごせんぞさまー」
そんな歓声に、仁も応える。
『ありがとう。今日は楽しかった。また近いうちに遊びに来るよ。それまで、技術を磨いていてほしい。そして今回以上の成果を見せてくれ。短いが、以上だ』
『ジン様、今日はありがとうございました』
こうして、オノゴロ島第5回飛行機競技会は終わったのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
https://ncode.syosetu.com/n5250en/
お楽しみいただけましたら幸いです。
20230219 修正
(誤)『ああ、そうしていだけますか。では、ぜひ!』
(正)『ああ、そうしていただけますか。では、ぜひ!』
20230227 修正
(旧)
栄冠に輝いたのはシュウ・ニドー。ゼッケン1『スカイハート』であった。
彼には、仁からの優勝トロフィーが授与された。
(新)
各選手の得点は次のとおり。
各競技の順位=得点で、少ない方が上位である。
タイムトライアルゼロヨンチキン 空戦 合計 順位
ゼッケン1 『スカイハート』 ③ ① ③ ① 8 ①
ゼッケン2 『ブラックサンダー』 ⑤ ⑨ ⑤ ③ 22 ⑤
ゼッケン3 『レッドアロー』 ⑦ ⑧ ⑦ ⑤ 27 ⑧
ゼッケン4 『シルヴィー』 ⑥ ⑤ ⑥ ⑤ 22 ⑤
ゼッケン5 『イプシロン』 ④ ⑥ ④ ⑤ 19 ④
ゼッケン6 『バロン』 ⑨ ⑦ ⑨ ⑤ 30 ⑩
ゼッケン7 『ナイトバード』 ② ② ② ③ 9 ②
ゼッケン8 『ブルーローズ』 ⑩ ③ ⑩ ⑤ 28 ⑨
ゼッケン9 『ウラカン』 ⑧ ④ ⑧ ⑤ 25 ⑦
ゼッケン10『ティーガー』 ① ⑩ ① ② 14 ③
栄冠に輝いたのはシュウ・ニドー。ゼッケン1『スカイハート』であった。
彼には、仁からの優勝トロフィーが授与された。
20260228 修正
(誤)仁ではなく礼子が操縦することで、多少なりとも見る者の心の平穏を保てるではないかと考えたのだ。
(正)仁ではなく礼子が操縦することで、多少なりとも見る者の心の平穏を保てるのではないかと考えたのだ。




