91-26 空戦 2
ゼッケン5『イプシロン』対ゼッケン6『バロン』第2ラウンド。
今度は逃げるゼッケン6、追うゼッケン5という構図になっている。
直線とまではいかないが、旋回とは言えないほどの滑らかな曲線を描いて飛行する2機。
2機の最高速度に差はほとんどなく、距離が開くことも縮まることもなかった。
『膠着状態ですね、ジン様』
『そうだな。……こういう時は奇策を用いるのがセオリーだが……』
その言葉どおり、前を行くゼッケン6は突如宙返りを行い、方向転換。背面状態から迫りくるゼッケン5に銃撃を浴びせた。
だがゼッケン5も油断はしておらず、右にダイブしてそれをかわす。
斜め右下方に降下していくゼッケン5『イプシロン』。それを追うゼッケン6『バロン』。攻守交代である。
『接戦ですね、ジン様』
『ほんとにな。見事だな、2機とも』
実力伯仲、と言えばいいのか、ゼッケン5とゼッケン6はほぼ互角の性能、互角の操縦技術で、なかなか決着が付かない。
『小さなミスが命取りになるかもな』
仁がボソリと言う。
そしてさらにドッグファイトは続く……が。
『ああっ! 2機、空中で接触!』
『やってしまったな』
シザース(2機が蛇行しながら交互に位置を入れ替わるような機動)の途中、どちらがということもなく、接触してしまったのだ。
ゼッケン5『イプシロン』は右主翼、ゼッケン6『バロン』は垂直尾翼を大破。
コントロールを失って錐揉み状態で墜落する。
が、そういうときのために受け止める結界が用意してあるのだ。
〈結界、作動します〉
管理統括魔導頭脳『テスタ』が風属性の結界を張り、墜落する2機をふわりと受け止めた。
場所はオノゴロ島南東の海上。
そのまま風属性魔法で2機を運んできたのであった。
そしてこの時点で残念ながら2機とも失格となる。
『残念でしたね、ジン様』
『まったくだな。手に汗握る展開だったが、こんな結果に終わってしまって残念だ』
* * *
そして第3戦目はゼッケン2『ブラックサンダー』とゼッケン9『ウラカン』の対戦である。
ゼッケン2『ブラックサンダー』はメッサーシュミットに、ゼッケン9『ウラカン』はホーカーハリケーンにちょっと似ている。
『さあ、第3戦目、ゼッケン2『ブラックサンダー』とゼッケン9『ウラカン』! 今、滑走を開始しました!』
この2機は、ゼッケン9の方がやや上昇速度が上だった。
そこで、ゼッケン9は高度をとった後、宙返りをしてゼッケン2を迎え撃つ。
だがゼッケン2もそれは予測していたようで、わずかに進路をずらして射撃をかわし、宙返りを行って反撃をする。
が、ゼッケン9もその射撃をかわした。
今回のバトルも長丁場になりかけている。
どちらかというと格闘戦なので見ごたえがある。
ジェット機ではなくプロペラ機なのでより接近戦向きということもいえ、見ている分には面白いのだが……。
『うーん、射撃のタイムラグが2秒あるというのは大きいな』
仁が唸った。
『やられる、と思ってから2秒あるというのはかなり楽だろうと思う』
『確かにそうですね』
『次回以降、考えたほうがいいかもな』
2秒を1秒にするくらいは必要だろうと仁は言った。
『仰るとおりですね』
『タイムラグがないと一瞬でケリが付きそうだから、最適値の割り出しは必要だな。でも2秒は長すぎたようだ』
決着が付きにくい、というのもよし悪しである。
選手たちには悪いが、少々退屈しかねない、と仁は考えていた。
もっとも、そう思っているのは仁だけで、娯楽の少ないこの世界の者たちはそれなりに楽しんでいるようだが。
互いに宙返りを繰り返しての射撃、だが命中しない。
これはこれで見応えはあるのだが、同じようなパターンが続くとどうしても飽きが来る。
……だが、それをチャンスに変えた者がいる。
ゼッケン2、ユージン・フォウルは、十何度目かの回避を、宙返りではなく逆宙で行った。
つまり『下へ』避けたのである。
『上へ』避けると思い込んでいたゼッケン9、シドニー・マレクは、対応が一瞬遅れた。
その隙を突いてゼッケン2は下方からの射撃をゼッケン9に浴びせたのである。
『撃墜判定、出ました! ゼッケン2の勝利です!!』
『うーん、うまく心の隙を突いたな』
これで第1回戦の残る対戦はゼッケン3『レッドアロー』とゼッケン4『シルヴィー』を残すのみとなった。
* * *
『さあ、第1回戦最終戦開始です!』
2機が滑走路から離陸していく。
真っ赤な『レッドアロー』と銀色の『シルヴィー』。対照的な色彩の2機である。
2機はほぼ同速度で反対方向へ上昇していく。
つまり、上昇するにつれ2機の距離はどんどん離れていくわけだ。
これまでの対戦もそうした傾向にあったわけだが、今回は特に距離が離れている。
要するに上昇角度が『浅い』のだ。
示し合わせたわけではないだろうが、2機とも30度程度の角度で上昇している。
これまでの対戦では45度以上、70度以下くらいであったから、かなり浅い角度での上昇だ。
そしてほぼ2機同時に、対戦OKの高度200メートルを越えた。
その時、2機の距離は800メートルほど。
実機であれば8000メートルにも匹敵する距離である。
それだけの距離で水平飛行に移った2機は、今度は互いを目指して接近し合う。
時速200キロ以上で接近し合えば、相対速度は時速400キロを超える。
『2機とも、真正面から撃ち合うつもりか!?』
『いや、それをやったら相討ちになるだけだ。よく見ると、2機ともわずかに蛇行しているぞ』
『ああ、なるほど。ジン様の仰るとおり、2機はわずかに蛇行して相手からの照準を外しつつ、高速で接近中!』
800メートルの距離など、時速400キロなら7秒ちょっとで翔破してしまう。
そして彼我の距離が200メートルを切った時、双方射撃を開始した。
その結果は……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20230213 修正
(旧)手に汗握る展開だったが、最後はあっけなかったな』
(新)手に汗握る展開だったが、こんな結果に終わってしまって残念だ』
(誤)『2機とも、真正面から打ち合うつもりか!?』
(正)『2機とも、真正面から撃ち合うつもりか!?』




