91-24 モーターの改良について
3つ目の競技、急降下チキンレースの結果が出た。
ゼッケン1 『スカイハート』 3.5/3.2/1.9 =5.1 ③
ゼッケン2 『ブラックサンダー』 4.0/3.5/2.2 =5.7 ⑤
ゼッケン3 『レッドアロー』 3.8/3.6/2.4 =6.0 ⑦
ゼッケン4 『シルヴィー』 3.8/3.7/2.1 =5.8 ⑥
ゼッケン5 『イプシロン』 3.6/3.3/2.3 =5.6 ④
ゼッケン6 『バロン』 3.6/(失格)/2.9=6.5 ⑨
ゼッケン7 『ナイトバード』 3.7/3.2/1.8 =5.0 ②
ゼッケン8 『ブルーローズ』 3.9/3.6/(失格)=7.5 ⑩
ゼッケン9 『ウラカン』 3.4/3.6/2.5 =6.1 ⑧
ゼッケン10『ティーガー』 3.7/3.2/0.4 =3.6 ①
となっている。
ここまでの3種目の結果は、
ゼッケン1 『スカイハート』 ② ① ③ =6
ゼッケン2 『ブラックサンダー』 ⑧ ⑨ ⑤ =22
ゼッケン3 『レッドアロー』 ⑥ ⑧ ⑦ =21
ゼッケン4 『シルヴィー』 ③ ⑤ ⑥ =14
ゼッケン5 『イプシロン』 ④ ⑥ ④ =14
ゼッケン6 『バロン』 ⑨ ⑦ ⑨ =25
ゼッケン7 『ナイトバード』 ① ② ② =5
ゼッケン8 『ブルーローズ』 ⑦ ③ ⑩ =20
ゼッケン9 『ウラカン』 ⑩ ④ ⑧ =22
ゼッケン10『ティーガー』 ⑤ ⑩ ① =16
である。
ゼッケン7、エルヴィス・アルコットがトップ、次点でシュウが続いている。
『今回はシュウとエルヴィスの一騎打ちといった感があるな』
『ジン様の仰るとおり、シュウとエルヴィスの成績は飛び抜けていますね。理由は何でしょうか?』
『そうだな、俺の見た限りでは、まず2機とも翼面荷重が小さい。そして魔導モーターの出力が大きい』
『なるほど、何かモーターに手を加えているのでしょうか?』
『そうじゃないかと思う。考えられるのはローターの軽量化かな? それにバランス取り。もしかするとモーター内の空気を抜いているかもしれない』
『ははあ、なるほど。特にモーター内を真空にするというのは面白い発想ですね』
『その2機は回転音が独特だったからな』
3極のローターが回転する際に、多少なりともプロペラの風切り音以外にも音がするわけだが、その2機に限ってはそれが聞こえなかった、と仁は言った。
『はあ……私には聞き分けられませんでした』
『無理もないな。そういう改造法があると知っているといないとでは気付き方が違うだろうし』
『確かにそうですね。……その改造は、ジン様の『ジーク1』もやっているのですか?』
『いや、俺はそこまではやっていない』
『何か理由が?』
『いや、特にない。強いて上げるとすれば、モーターの冷却を考えたからかな。あと軸受け』
『冷却……ですか?』
魔導モーターは発熱は小さいのでは? とラックハルトは尋ねた。
『ああ、確かに小さいよ。だが全く発熱しないわけじゃない』
『そうなんですか?』
『高速回転すれば、軸受けとシャフトの摩擦も相当なものになる。平軸受だったしな。今回は熱に強いということでどちらにもアダマンタイトが使われていたから融けることはないけどな』
『テスタ』は恣意的に玉軸受ではなく平軸受を使ったんだろうと仁は言った。
『で、空気抵抗を押さえるため、ノーズ形状を流線型にしているが、これは液冷エンジン向けの形状で、空冷には向かない』
『それで、発生した熱を逃がす必要があるわけですね』
『ああ。モーター内部が真空だと、熱の伝わり方が鈍くなるわけだ』
『でも、そんなに変わりますか?』
『実はそれほどでもない。高回転での連続運転で十数度違うくらいかな』
発熱そのものが機体に影響を与えるほどではない、と仁は言った。
『でも俺は、『引く』ことを利用して、実は軸受部に『流体軸受』を使ったんだよ』
ここで新事実が明らかになる。
『空気を利用しての流体軸受け、『動圧軸受』というやつだな。だからモーター内を真空にはしたくなかったんだよ』
この場合、軸受けとシャフトは直接接触せず、薄い空気の層を介しているので摩擦熱が生じにくい。
『なるほど、よくわかりました』
* * *
ラックハルトと仁がそんな話をしている間に、最後の競技である『空戦』の準備が整った。
準備というのは、各機体に特殊な透明塗料をコーティングすること。
これは、各機体に搭載された機銃代わりの光線銃の光が当たると赤く色がつくというもの。
つまり被弾を検知するのである。この塗料は水で簡単に落とせる。
そして今回の光線銃はトリガーを引いてから発射まで2秒のタイムラグがある。
また、連続使用はできない。弾切れを再現するため、合計30秒間しか発射できなくなっている。連続発射すればすぐに弾切れを起こす、というわけだ。
制限時間は20分。
これで決着がつかない場合はもう一度最初からやり直す、ということになる。
また、一旦高度200メートルを越えるまでは攻撃禁止となっている。
仁としては、それがどう対戦に影響するかな、と少し興味を持っていた。
『空戦はトーナメント形式です。チキンレースの結果を受け、1位と2位はシードとなり、3位と10位、4位と9位、5位と8位、6位と7位が対戦を行い、その勝者である4機が互いに戦って残った2機に1位と2位がそれぞれ対戦する。そしてその勝者同士で決勝戦、となります!』
1〜3種目の総合結果ではないところがちょっと面白いかな、と仁は思ったようだ。
* * *
まずは3位のゼッケン1『スカイハート』とゼッケン8『ブルーローズ』との対戦となった。
『停止状態から滑走、離陸しての空戦です! 滑走中の攻撃は禁止です。また、一旦高度200メートルを越えるまでは攻撃禁止と決められています!』
『まあ、ここまで見てきたが、そこまで離陸時間に差があるとは思えないな』
『それでは……レディ……ゴー!!』
『スカイハート』と『ブルーローズ』は魔導モーターを起動させ、反対向きに滑走路を走り出した。
そして離陸、高度を取る2機。
より高い位置から降下して攻撃する方が有利だからだ。
『2機とも、高度は300メートルほどで水平飛行に移っております!』
仁が寄贈した『魔導監視眼』と『大型魔導投影窓』を使い、まるで目の前を飛んでいるかのように、2機を見ることができる。
2機はいよいよドッグファイトを繰り広げようとしていた……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。
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