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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
91 新たな技術篇
3554/4413

91-02 夜会、当日 午後

 貴賓室でのショウロ皇国皇帝エルンスト・ルプス・フォン・リヒト・ショウロと仁たちとの懇談はまだ続いていた。


「ここだけの話……というか……まあ、今日の『夜会』で発表することになるが……」


 エルンスト2世はそこで言葉を濁した。代わって幼馴染でショウロ皇国皇帝秘書官筆頭のヒルマン・ディール・フォン・アセスが口を開く。


「陛下ご自身では話しにくいようですので私が代わってお話しましょう。実は、陛下はご婚約なさったのです」

「え……それは、おめでとうございます!」

「おめでとうございます」

「うむ、ありがとう」

「で、お相手は?」


 この質問に答えたのはヒルマン・ディール・フォン・アセス。


「コンスタンツェ・テオデリック・フォン・マジェンタ様とおっしゃいまして、テオバルト・テオデリック・フォン・グレイン侯爵の長女にあたります」

「ほう」


 テオバルト・テオデリック・フォン・グレイン侯爵は、サキの遠い子孫になる。

 彼は、昨年の6月に『世界会議』の正式な『友好使節』が4公国を訪問した際に正使を務めた人物で、現世界会議議長でもある。

 その長女ということは、皇妃としてふさわしい家系と言えよう。


「重ねておめでとうございます」

「うむ、ありがとう」


「『夜会』で発表する際にご同伴なさいます」


 秘書官筆頭のヒルマンが補足した。


 そして懇談の時間は終了、仁たちは貴賓室を後にしたのである。


*   *   *


「まだ少し時間があるな」

「ん」


 時刻は午後1時少し前。

 控室には午後3時頃までに行っていればいいので、2時間ほど余裕があるわけだ。


「誰か、会っておいたほうがいい人はいるかな?」

「特には。今は知り合いもいないし」

「それもそうだな。じゃ、一旦控室に行ってみるか」

「ん」


 そう話が付き、仁、エルザ、礼子らは控室へ向かう。


 控室は宮城(きゅうじょう)の1階西側。

 『夜会』が開かれる大広間の隣の隣、くらいの位置である。

 広さは20畳くらいの部屋が5間続いており、50人くらいは楽に収容できる。

 ちなみに、宮城(きゅうじょう)の東側にも控室が設けられており、合わせて100人は収容できるようになっていた。


「まだ誰も来ていないだろうな」

「ん」


 しかし、仁とエルザ、礼子が控室に着くと、そこには先客がいた。


「これはこれはジン殿、エルザ殿」

「ああ、これは、ヨヒア殿。ご無沙汰しております」


 ヨヒア・ガイニス・フォン・イーゴ子爵であった。


 ヨヒア・ガイニス・フォン・イーゴ子爵は親代々の忠臣であり、皇帝家の血を引くメルツェの発見、救出にも一役買った。

 今メルツェの身の回りの世話をしている侍女イェニーの本当の主人である。


*   *   *


「今日は、メルツェ様は?」

「ああ、後から来ることになっていまして。自分は少々用事があったので先に来たんですよ」

「そうでしたか。……メルツェ様はご壮健ですか?」

「ええ、元気で過ごしています」

「それはよかった」


 そこへ1人の婦人が侍女に連れられてやって来た。


「あなた、ご挨拶してまいりましたわ」

「おお、ご苦労だったな」


 ヨヒア子爵の奥方、リヒャルダ・ガイニス・フォン・ヒーリアであった。


「ジン様、エルザ様、レーコ卿、ご無沙汰致しております。……ええと、ここでご紹介させてくださいませ。娘のフリーデです」


 リヒャルダは、付いてきていた侍女を娘だと紹介した。

 母親譲りのブロンド、緑の目をしており、なかなかの美少女だ。

 そういえば以前ヨヒア子爵家を訪問した際、そんな話を聞いたなと仁は思い出した。


「フリーデ・ガイニス・フォン・クラウダと申します、以後お見知り置きを」

「これはご丁寧に。ジン・ニドーです」

「妻のエルザ・ニドーです」

「礼子です」


 仁たちも立ち上がって互いに挨拶を行い、そして着席した。

 夫人の斜め後ろには侍女姿のフリーデが立っている。娘とはいえ、宮城(きゅうじょう)内では侍女なので座るわけにはいかないのだ。

 夫人の説明によると、フリーデは今年16歳。

 行儀見習いのため皇太后陛下の侍女として勤めている。

 先程夫人が遅れてきたのは、侍女長に挨拶をしてきたからだという。


「私はもう近衛騎士団長への挨拶は済ませたからな」

「ご苦労さまでした」


 彼らの長男も宮城(きゅうじょう)に勤めており、今は下っ端ではあるが近衛騎士をしているのだ。

 それで子爵はそちらへ挨拶に行ってきた、というわけである。


「長男と長女が皇帝家にお仕えしている。まったくもって忠臣の家柄にふさわしいですね」


 仁がヨヒア子爵家の有り様を褒めると、当の子爵は照れ臭そうに謙遜した。


「いえいえ、お恥ずかしい限りです」


 そんな人柄も好ましいなと思った仁であった。


「ところで『ジルコ』はお役に立っていますか?」

「ええ、それはもう!」


 『ジルコ』は仁が作った侍女ゴーレムで、五色ゴーレムメイドの姉妹機である。

 メルツェの世話のためにイェニーを派遣してもらうので、その間の家事を任せるために貸与しているのだ。


「よろしければ、貸与ではなく、是非お譲りいただきたいのですが」

「ええ、構いませんよ。対価としては……」


 仁は快く承諾した。

 対価は標準のゴーレム並、ということで決着。


「あれほどの性能のゴーレムを、その価格でよろしいのですか?」

「ええ、もちろん。お近付きの印に、と思って下さい」

「かたじけない」


 と、そこへダイキ、ココナ、ゴウ、メルツェらが到着した。


「これは伯爵閣下ご夫妻、メルツェ様、ご機嫌麗しゅう」

「ヨヒア殿、ご無沙汰だったな。夫人もご健勝のようで何よりだ」

「ありがとうございます」


「閣下、ご無沙汰しております」

「メルツェ様、お元気そうでいらっしゃいますね」

「はい、毎日とても充実しております」

「それは何よりです」


 時刻は午後2時30分。

 控室には和やかな時間が流れていた。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20230120 修正

(誤)今メルツェの身の回りの世話をしている侍女イェニーに本当の主人である。

(正)今メルツェの身の回りの世話をしている侍女イェニーの本当の主人である。

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― 新着の感想 ―
[一言] へえ、サキの遠い子孫 特に何かあるわけでもないですがサキにも伝えておいてあげませんとね
[良い点] ヨヒア、 初登場時の面影が一切なくなっちゃって……。 [気になる点] >テオバルト・テオデリック・フォン・グレイン侯爵は、サキの遠い子孫になる。 まあ、サキさんもトアさんも侯爵家を抜けてい…
[一言] >>懇談はまだ続いていた 仁「(早く終わりに・・・・)」 >>マジェンタ ハ「・・・・色?」 エ「ベストタイム?」 >>サキの遠い子孫 楠「・・・・・・」 ハ「まさか外見は・・・・」 エ…
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