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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
90 未来への一歩篇
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90-18 ニドー家の選択

 7月22日、仁、ゴウ、ルビーナらは一旦ロイザートに戻った。

 あまり長く屋敷を空けているのもまずいからだ。

 そしてそれはちょうどいいタイミングであった。


「夜会への招待状?」

「はい、ちょうど昨日届きました」

「日時は?」

「1ヵ月先の、8月21日です」

「準備もあるからそんなところか。……趣旨というか、テーマは?」


 夜会、晩餐会など、パーティーを開くにはそれなりの名目があるはずなのだ。

 例えば春の園遊会は『親睦を深める』であった。


「明記されてはいませんが、毎年行われていますからね、『夏の終わり』にもよおされる夜会は」


 ココナが説明してくれる。


「ああ、そうなのか」

「はい。例年通りでしたら今回の夜会は定例のもので、貴族間の親睦が主ですね」

「なるほど」

「今回、僕は出なくてもいいですよね?」

「駄目です」

「え?」


 ココナによれば、加えて春の園遊会でゴーレムを直してゴウが名を上げたため、是非にと出席を求められているというのである。


「それに、メルちゃんが心細いでしょう?」

「あっ……はい」


 今回、招待状の関係でルビーナは行けないため、ゴウが行かないと同年代の友人がいないということになる。


「大丈夫。私たちも出る、から」

「はい、エルザ様」


 仁とエルザ宛にも招待状が届いていた。

 メルツェの件があるから、出席しないわけにはいかない。


「……それに関して、少し早いが今後のことをちょっと話し合っておこうか」


 ここで仁は、ゴウ、ルビーナ、メルツェの将来について話し合おう、と持ちかけたのである。


*   *   *


 まず仁たちは、ゴウ、ルビーナ、メルツェ抜きで話し合うことにした。


「……つまり、ゴウとルビーナさんは『アヴァロン』の『アカデミー』で働きたい、と」

「そういうことになるな。ゴウが言うにはあくまでも客員研究者として、ということらしいが」

「なるほど、そういうことですか」


 正式に『アヴァロン』の職員になってしまうと、母国との繋がりが希薄になってしまう。

 ゴウは今、『ニドー家の嫡子』という立場のため、それはまずい。


「俺が見るに、ゴウの才能は抜きん出ている。一国に留まっているには惜しい」

「そうですか……」

「加えて、メルツェも『アヴァロン』の管理職になりたいらしいし」

「それは皇位継承権を完全に放棄する、ということですよね?」

「そうだ。元々、皇族の一員と言われてもぴんとこなかっただろうしな」

「……」


 今現在、後継者問題が一番の問題であろう。


「それについては、ゴウの子供を1人こっちで跡継ぎにする、という手もある」

「そうですね」


 ダイキとココナは59歳と53歳。

 今のアルスの平均寿命は90歳から100歳前後。まだまだ現役で伯爵をやっていける。


「私も。お二人の健康についてはサポートさせてもらいます」

「おお、エルザ様も。ありがとうございます」


 それからも話し合いがなされたが、結局のところ、ゴウの子供の1人に伯爵位を継がせるということで話はまとまったのである。

 それまでゴウは客員研究者として『アヴァロン』に勤めることとなる。


「ゴウに家を継がせるという話だったのに、済まない」


 仁はダイキとココナに頭を下げた。


「いえ、頭をお上げください、ジン様」

「私どもはちっとも構いませんですのよ」

「妻の言うとおりです。我々は、ゴウが世のため人のために働いてくれれば嬉しいのです」

「ええ、ええ! なんといってもニドー家の子なのですから!」


 『魔法工学師マギクラフト・マイスター』が興したショウロ皇国・ニドー家。そこから工学魔法のエキスパートが世に出ることは名誉である、と2人は断言した。


「……ありがとう」


 仁は心から礼を述べた。


*   *   *


 その後、本人たちも交えての話し合いとなったのだが……。


「お父さん、お母さん、ごめんなさい。僕は、貴族としての義務を果たすよりも、技術者として世の中に貢献したいんです」


 まずゴウがダイキとココナに謝るところから始まった。


「いやいいんだ。我々は我が子としてゴウを迎えたのであって、伯爵位を無理に継いでもらおうとは思わない」

「そうよ、ゴウ。あなたはやりたいことをやって頂戴」

「ありがとう、お父さん、お母さん」


「そうよ、ゴウ、こうなったら2人で『アカデミー』のトップに立ちましょう! 世界の頂点でもいいわ!」

「お前はもうちょっと空気を読もうね、ルビーナ」


 遠慮のない物言いをしたルビーナは祖母のアマンダにたしなめられていた。


「……ゴウさんとルビちゃんが『アヴァロン』で研究員になるなら、私は管理職になります。……今度陛下にお会いしたらそう申し上げるつもりです」


 メルツェはメルツェで、決意は固いようだ。


 子供だ子供だと思っていたら、いつの間にか将来を見据えた考え方をするようになったなあと、仁は感慨深いものがあった。

 特にメルツェの成長が著しい。


(環境が変わったからかな)


 平民の子だと思っていたら皇帝家の血筋だと知らされ、大きく生活環境が変わってしまった。


(でも、そんな彼女を、ゴウとルビーナが支えてやっていたんだよな)


 どんな形になるかはわからないが、この3人はこれからもずっと仲よくやっていってほしいなと願う仁であった。


 そしてエルザはエルザで、ダイキとココナのゴウたちへの想いを、尊いものだと感じ、自分も精一杯フォローしていこうと思っていたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「私も。お二人の健康についてはサポートさせてもらいます」 >「おお、エルザ様も。ありがとうございます」 >それからも話し合いがなされたが、結局のところ、ゴウの子供の1人に伯爵位を継がせる…
[一言] >>貴族間の親睦 ハ「と言いつつ、子供の婚約者探しとか」 エ「噂の真偽を見定めて?」 ルビ・豪・メ「・・・・・・」 礼・老「いざとなれば神の一声で・・・」 仁「おい・・・」 >>出席を求め…
[一言] メルツェ嬢、流石にハンナちゃんの後継路線は無理でしたか。 正直言って魔法は兎も角、科学的な見地なら老君すら頭を垂れる程の異才ですからね。 ただ管理職を目指すなら、先ずは『コミュ強』化から…
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