90-16 『アステール』完成
『アスピーダ』の設置が終われば、プロジェクトは最終段階に入る。
すなわち『アイオーン』『アスティノ』と接続し、3つの魔導頭脳でシステム『アステール』を作り上げるのである。
「これにはジンとゴウくん、ルビーナさんにも立ち会ってもらわないとな」
そうアーノルトが呟くと、
「もう来てるよ」
との声が掛けられた。
「お、よく来てくれたね。早速だが、これから『アスピーダ』を接続するから、『アイオーン』と『アスティノ』に伝えておいてくれ」
「わかった」
「わかりました」
システムとして成立すればオンラインで会話や情報のやり取りもできるのだが、まだそこまでは出来上がっていない。というかこれからそうしたシステムにしていくのだ。
* * *
ゴウとルビーナは『アスティノ』の所へ行った。
「……というわけなんだ。これからは3基で1つのシステムを構成してもらいたいんだよ」
『承りました、ゴウ様』
「システム構築にあたって、何か必要なものはあるかしら?」
『いえ、ルビーナ様。特にございません。今のまま接続・連結していただければ、それで』
「それならいいか」
「任せておいて」
『その時をお待ちしております』
* * *
仁は『アイオーン』と話をしている。
「そういうわけで、新たなシステム構成とする予定だ」
『よろしいかと、『対立構造』よりも安定度が高いと思われます』
「了承してくれるか?」
『はい、ジン様』
「よし。それじゃあ、何か必要な付加装置やサブルーチンなどの要望はあるか?」
『いえ、特には。今のままで大丈夫です』
「そうか。まもなく接続するぞ」
『いつでも大丈夫です』
* * *
「よし、準備完了」
「こっちもOKです」
「問題ないわ」
「それじゃあ接続開始だ」
現地時間午後2時、魔導頭脳システム『アステール』の構築が開始された。
「配線完了」
「『接続核』よし」
「『魔素接続』開始」
「魔力による繋がり、構築されました」
プロジェクトチーム12名は4名ずつに別れ、それぞれが『アイオーン』、『アスティノ』、そして『アスピーダ』の担当となって作業を行った。
そしてまもなく最終段階に入る。
「接続ゲート、開放まであと10秒」
「各部異常なし」
「……8、7、6……」
「魔力流量既定値内」
「……4、3、2……」
「同期問題なし」
「……0!」
「ゲート開放」
午後2時24分、3つの魔導頭脳は魔力的・物理的に接続された。
「……どうだ?」
「異常動作なし。接続進行中」
「拒絶反応なし。接続順調」
「同期回路、順調」
接続して3分。
それぞれの魔導頭脳は他の2つとの友好・批判・対立・同期などの段階を構成していく。
「まもなく連結が終了するな」
「うまくいっているといいが」
「大丈夫だよ。『追跡』してみているが、まったく問題はない」
仁の言葉が終わるや否や、魔導頭脳システム『アステール』から最初の反応があった。
『連結完了。魔導頭脳システム『アステール』、成立』
「おお、やった!」
「成功だ!!」
「やり遂げたぞ!」
『アイオーン』『アスティノ』『アスピーダ』の3箇所に分かれたプロジェクトメンバーたちはそれぞれ歓声を上げた。
努力が報われた瞬間である。
「『アステール』と呼んでいいか?」
『はい、管理者アーノルト様。そう呼んでください』
「『アステール』、システムの具合はどうだ?」
『はい、管理者ジン様。魔力の流れは順調です。システムに問題はありません』
「『アステール』、元の3つの魔導頭脳はどうなっているの?」
『はい、管理者ルビーナ様。それぞれ個別の自我を持ちつつ協力しあっています』
「管理者同士の順位はどうなっているのかな?」
『はい、管理者ゴウ様。今のところ優先順位を付けるべき命令はありませんが、将来的な問題をなくすためにも、管理者様の側で序列を決定していただきたく存じます』
矛盾する命令が入力された際に、その命令の優先順位が決まっていないと処理に弊害が出ることになる。
すなわち命令を出した者の序列がイコール命令の優先順位となるわけだ。
つまりアーノルト、仁、ゴウ、ルビーナの4者が自分たちで協議し、管理者としての序列を決めてもらいたいということだった。
「そういうことなら『アヴァロン』所属のアーノルトが1位でいいんじゃないか?」
「うーん……僕としてはジンになってほしいんだが……」
「『アヴァロン』所属ですが、僕たちがジン様より上は嫌です!」
「ゴウの言うとおりだわ」
「アーノルトが1位なのは譲れないが……」
……などのやり取りがあって、結局、アーノルト、仁、ゴウ、ルビーナの順に管理者としての序列が決まったのである。
「よし『アステール』、これからは『アヴァロン』のため、ひいては世界のために働いてもらうよ」
『はい、管理者アーノルト様』
こうして現地時間午後4時、魔導頭脳システム『アステール』は完成したのだった。
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